不動産投資の出口戦略とは?物件別に最適な売却方法と時期を解説

最終更新日:2024年5月8日
  • 所有していた物件の資産価値が低くてショック…
  • 物件をできるだけ高く売却する方法が知りたい
  • 売却の準備はいつから始めるべき?

不動産投資を成功させるためには、「購入時」「投資期間(貸し出しなど)」に加えて「売却時」にも戦略を立てる必要があります。

売却の戦略を「出口戦略」と呼びますが、具体的にどのようなものか、なぜ必要とされているのか、具体的な戦略方法について解説します。

この記事でわかること

  • 不動産投資の出口戦略とは何か
  • 出口戦略の種類と物件別のおすすめ
  • 投資物件の最適な売却時期
  • 収益物件を売却するときの注意点

これから不動産投資を始めようと考えている方や投資物件を売却しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

不動産投資の出口戦略とは  

不動産投資の出口戦略とは、投資のために購入した物件をいかに高値で売却できるか前もって準備することです。

出口戦略はもともと軍事用語の一種であり、ベトナム戦争時に米軍が戦争で出陣した人や物資の損失を最小限に抑える撤退作戦を立てたことが始まりといわれています。

購入を「入口」、売却を「出口」と表現する不動産投資では、入口から出口までの計画を物件購入前から立てておくのが基本です。

投資のために有利な条件のみを重視するのではなく、投資の目的を終えた後に理想的な価格で売却できそうかどうかを見込んだ上で物件を購入するようにしましょう。

不動産投資における出口戦略の種類

不動産投資における出口戦略の種類は複数あり、物件の種類や状態によって適切な選択を取る必要があります。

ここからは、投資不動産を売却する3つの方法についてお伝えします。

H4.収益物件として売却する 

最も理想的な出口戦略が、投資目的の物件を探している不動産投資家に売却する手段です。

所有している不動産の需要が高く、安定した家賃収入や高い収益性をアピールできるのであれば、希望額もしくはそれ以上の高値で売却が期待できます。

そのため、物件の購入を検討しているのであれば空室率が低くなるような物件選びをしましょう。

空室率が低くなる物件の特徴は、以下の通りです。

  • 立地が良い(駅から徒歩15分以内、主要駅にアクセスしやすい)
  • 人口増加が予測される(大型マンション・アミューズメント施設ができる)
  • 生活環境が良い(スーパー・コンビニ・飲食店などがある)

購入時に収益物件として売却する出口戦略を立てるのであれば、外壁や内装をできるだけ綺麗に保つ工夫をしたり、定期的なメンテナンスを実施するのがポイントです。

清潔感があり欠損がないとわかれば、売却価格が下がるリスクを防げます。

更地にして売却する

購入した物件が理想的な売却価格に届かないとき、なかなか買い手が見つからないときは、収益物件としてではなく更地にした方が高く売却できる可能性があります。

更地にする検討をした方がいい不動産の特徴は、以下の通りです。

  • 築年数が古い
  • シロアリ被害が出ている
  • 深刻な建物の欠陥・問題がある
  • 違法建築や傾きが発覚した

建物を解体して更地にするためには、土地と建物の権利を持っている必要があるため、区分マンションやアパートを所有している場合は自分だけの判断ではできません。

また、更地にするのであれば入居者全員に退去してもらう交渉が必要です。

「収益物件として売却は難しい」と判断した上で不動産を購入するなら、更地にして売却する出口戦略は有効です。

契約期間が満了したら退去しなければならない「定期借家契約」を結んでおくと、解体するタイミングでトラブルになるリスクを回避できます。

居住用物件として売却する

投資用物件は、居住目的で不動産を探している人にも売却できます。

不動産投資のための物件を探している人は周辺エリアの需要の高さや将来性などを重視しますが、居住のために物件を探している人は単純に住みやすさを重視します。

たとえば、これから子育てをする家族が不動産を探している場合、学校・小児科・公園などが揃っていれば、多少他の条件が悪くても購入される可能性が高いです。

そのため、投資用物件として貸し出しをしていた期間に周辺環境が変化して、収益物件としての価値がつきにくいのであれば、購入者のターゲットを変えてみましょう。

居住用として売却するなら、不動産ポータルサイトで所有している物件とよく似た築年数・広さなどの物件を検索し、どれくらいの売却価格になるか確認してください。

相場に合わせて買い手を探していくと、収益物件として売却するよりも高値になるかもしれません。

物件別におすすめな出口戦略

「収益物件として売却」「更地にして売却」「居住用物件として売却」の3つの出口戦略をお伝えしましたが、物件の種類によって有効な手段は異なります。

ここでは、3つの物件の種類に分けて、最適な出口戦略をみていきましょう。

一棟マンション・アパート 

一棟マンション・アパートにおすすめの出口戦略は、以下の2つです。

  • 収益物件として売却する
  • 更地にして売却する

一棟マンション・アパートの土地と建物の所有権を持っていれば、自分だけの判断で建物を解体して更地にできます。

一棟のうち一部屋のみを居住用物件として売却するのは不可能ではないものの、購入者に土地と建物の権利の一部が渡るため、その後の管理が複雑になります。

そのため、中途半端に売却するのは有効な出口戦略とはいえません。

建物の状態が良好であれば収益物件として売却し、建物に不備があったり更地にした方が高額買取を見込めそうなら解体を検討しましょう。

区分マンション・アパート

区分マンション・アパートにおすすめの出口戦略も、一棟マンション・アパート同様2つあります。

  • 収益物件として売却する
  • 居住用物件として売却する

区分マンション・アパートの場合は、該当する土地と建物全ての所有権を持っているわけではないため、自分だけの判断で建物を解体して更地にはできません。

賃貸物件として買い手が見つかりやすい条件が揃っているのであれば収益物件として、長期的に住むマイホームとして需要がありそうであれば居住用物件として売り出しましょう。

効果的な出口戦略を立てるのであれば、収益物件と居住用物件のどちらが高値になりそうか比較するのがポイントです。

一戸建て

一戸建てにおすすめの出口戦略は、以下の通り3つです。

  • 収益物件として売却する
  • 更地にして売却する
  • 居住用物件として売却する

一戸建ての投資用物件の土地と建物の所有権を持っていれば、建物を解体して更地にできるため、基本的には3つの出口戦略から最適な手段を選べます。

建物の状態が良好であれば収益物件もしくは居住用物件として買い手を探し、欠陥や劣化がみられるのであれば解体した方が良いケースもあります。

ただし、更地にするための解体作業にもまとまった費用がかかるため、「更地の売却価格−解体費用」で赤字にならないように気をつけましょう。

不動産投資物件の最適な売却時期

出口戦略を成功させるためには、不動産の種類や状態に合わせた売却方法に加えて、最適な売却時期を見極めるのが重要です。

ここでは、不動産投資物件を売却するのに最適な時期についてお伝えします。

購入から5年経ったとき

不動産を売却する場合、利益の額に応じて「譲渡所得税」が発生しますが、所有した期間によって税率が異なります。

  • 短期譲渡税(5年以内):約39%(所得税30%・住民税9%)
  • 長期譲渡税(5年以降):約20%(所得税15%・住民税5%)

そのため、最低5年は所有する前提で不動産購入を検討しておくと売却時の支出を最小限に抑えられます。

減価償却期間が終了するとき 

購入した不動産が減価償却を終えると経費として計上できる項目がなくなるため、純利益が増えて所得税が高額になります。

安定した家賃収入を得られているのであれば問題ありませんが、収益性の低下が目に見えるのであれば不動産物件の売却を検討しましょう。

減価償却の経費計上をしながら高い収益化を期待するのであれば、投資用物件の買い替えも有効です。

アパートやマンションが満室のとき

アパートやマンションを所有している場合、該当する建物が満室(空室率0%)であれば、収益が見込めるため投資家からの需要が高まります。

通常よりも空室率の高い時期に売却活動を始めると、買い手が見つかりにくかったり、理想の売却額を下回ったりするかもしれません。

建物を解体して更地にする計画がないのであれば、部屋の埋まり具合を確認しておきましょう。

収益物件を売却するときの注意点

収益物件を売却する際にトラブルが起こると、取引に関わる買い手と売り手のみではなく、入居者にも影響が出る可能性があります。

売却後にもトラブルが発生しないように把握しておく注意点について説明します。

契約不適合責任に気をつける 

契約不適合責任とは、契約内容とは異なる状態や記載されていない問題が起きたときに買い手が売り手に修繕費用や損害賠償費用を請求できる制度です。

たとえば、建物の不具合や注意の必要な入居者がいるなど、投資物件として弊害になりうる問題を隠して売却すると責任を問われるリスクがあるため注意が必要です。

契約書に記載をして了承を得ている分には問題ありませんので、何か不具合や不安な点があれば必ず事前に伝えておきましょう。

地位承継通知をする

収益物件を売却した場合は、該当物件のオーナーが変わるため、その旨を入居者たちに伝達する「地位承継通知」をおこないます。

通知書は元のオーナー(売主)と新しいオーナー(買主)の連名で作成する必要があるので、引き渡し後の業務として必ず協力してください。

ローン返済の状態を確認する

収益物件に限った話ではありませんが、不動産を売却する時点でローンが残っているのであれば、アンダーローンかオーバーローンか確認しましょう。

  • アンダーローン:売却価格がローン残債を上回る
  • オーバーローン:ローン残債が売却価格を上回る

アンダーローンであれば、売却して入ってくる資金でローン残債を完済できるので問題ありません。

一方でオーバーローンになる場合、売却して入ってくる資金ではローン残債の完済ができないため、個人資本等で残債額を補う必要があります。

まとめ

良い物件を購入できたり収益化がうまくできたりしても、売却で理想的な利益を生み出せなければ不動産投資の成功とはいえません。

所有する物件の状態と最適な売却時期を見極めて、最も効果的な出口戦略の手段を選択しましょう。

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