不動産投資における金利上昇リスクとは?発生後の対処法と事前対策も解説
- 金利が上昇するとローン返済が苦しくなるのでは?
- 金利が急激に高くなったら、所有している物件が売れなくなるリスクがある?
- 金利上昇リスクに備えるためにできる対策はある?
ここでは金利上昇リスクに対する不安を抱く不動産投資家の方へ、収益への影響を最小化するために知っておくべき金利の基本概要と、上昇リスクの対策方法まで解説します。
この記事でわかること
- 金利上昇リスクの基本概要
- 不動産投資における金利上昇リスクの影響
- 不動産投資で金利上昇リスクを回避するための対策
目次
金利上昇リスクの基本概要
不動産投資を成功させるためには、様々なリスクを想定しなければなりません。
そのうちの一つが金利上昇リスクであり、収益性が下がるだけではなく、毎月の収支がマイナスになるなど直接的な負担につながる恐れがあります。
ここでは、金利上昇リスクの基本概要について解説します。
金利上昇とは
金利上昇とは「利上げ」とも呼ばれており、金融政策の一つです。
金融機関で借入を行なう際、借入金額に応じて利息が発生し、それが貸主の報酬となり、借主の手数料(負担)となります。
金利が高くなるほど、金融機関などの貸主は利益が増える一方で、借主にとっては返済負担が大きくなります。
貸主としてはメリットが多いように思えますが、金利が高いほど借入を希望する人が減るので、必ずしも総利益が増えるとは限りません。
金利は様々な要因によって変動しますが、勝手に上がり下がりするのではなく、中央銀行が経済を安定させるために調整する場合があります。
金利変動は、良くも悪くも不動産投資への影響があるので、定期的に動向を確認する点が投資の成否を左右する鍵となります。
金利が変動する要因
金利が上昇する要因は、主に以下のとおりです。
- 景気
- 物価
- 為替相場
金利市場は、需要と供給のバランスを保つために、日々変動しています。
景気が良くなると、消費者の購買意欲は上昇するので、不動産をはじめとする商品やサービスの需要が高くなります。
需要が供給を上回ると物価上昇を引き起こしますが、ある程度まで物価が上昇すると、徐々に消費者の買いだめ行動が目立つようになるケースが多いです。
「この先、高くなるなら今のうちに買っておこう」と考える消費者が、ローンを組まずに現金で一括購入すると、金融機関の需要が低くなります。
そこで日本銀行は、物価の上昇を抑えるために金利を高くする金融政策を打ち出します。
さらに、輸出入の多い日本では、円安が進むと輸入品を筆頭に物価が上昇して景気にも影響が出るので、金利変動を引き起こす可能性が高いです。
不動産投資における金利上昇リスクの影響
不動産投資で金利上昇リスクが高まると、投資家の利益だけではなく不動産市場全体が打撃を受ける可能性があります。
ここでは、具体的にどういった影響が懸念されるのかについて解説します。
キャッシュフローの悪化
不動産投資におけるキャッシュフロー(CF)とは、「収入(家賃)− 支出(投資ローンの返済額、経費、税金)」で算出する手元に残るお金を指します。
金利が上昇すると、投資ローンの返済額が大きくなるので支出額の増幅によるキャッシュフローの悪化につながるので要注意です。
たとえば、不動産投資ローンを変動金利で2,000万円(返済期間35年)で借りたとします。
契約時の金利が2.5%に対して、金利上昇によって3.0%まで上昇すると、毎月の返済額は約5,500円ほど増えてしまいます。
1年間で5万円以上の差がでる点を踏まえると、大きな影響といえるでしょう。
資産価値の低下
不動産投資では、多くの投資家が金融機関から融資を受けながら収益化を目指します。
金利上昇はキャッシュフローの悪化につながるので、優良物件がでていたとしても自己資金で購入できる投資家以外からの需要が激減します。
需要が減ると不動産市場には売れ残っている物件が増えるので、次第に価格競争に巻き込まれて、市場全体で不動産の資産価値の低下を招く要因になるでしょう。
このタイミングで所有している物件を売却しようと考えている投資家にとって、十分な売却益が見込めないので、キャピタルゲイン獲得の弊害になり得ます。
家賃の値上げ交渉
金利上昇によってキャッシュフローが悪化したら、家賃を値上げして収益性を維持しなければなりません。
ただし、借地借家法では「正当な理由がないまま家賃の値上げはできない」と定められているため、簡単に家賃の変更はできません。
借地借家法で定められている正当な理由は、以下のとおりです。
- 周辺物件の家賃相場を大幅に下回っている
- 物件の管理費や固定資産税が大幅に高くなった
- 再開発などの理由で不動産の資産価値が大幅に高騰した
金利上昇でキャッシュフローが悪化した場合、その事情を理解してもらえるように入居者への交渉が必要です。
正当な理由があるにも関わらず家賃の値上げに応じない入居者に対しては、訴訟を起こして解決しなければならないケースもあります。
このように入居者がいる状態では、値上げをするための工程が多くあるので、ある程度の時間が拘束される可能性が高いです。
不動産投資の金利上昇リスクに備える対策法
金利上昇は投資家がコントロールできる範囲ではないからこそ、万が一のリスクを想定していくつかのポイントを押さえると損失を最小限に抑えられます。
ここでは、不動産投資における金利上昇リスクに対する効果的な対策方法について解説します。
固定金利を選ぶ
金融機関の返済では、金融市場の流れに応じて利率が変動する変動金利と、契約時に決めた利率が完済まで変わらない固定金利があります。
近年は、低金利の状態が続いているので、このまま金利上昇がなければ変動金利にしたほうが総返済額を抑えられます。
ただし、長期返済のなかで金利上昇による返済負担を懸念するのであれば、契約時の利率は高くなりますが固定金利にしたほうが安定した返済計画を立てれて安心です。
金融機関によっては、最初の5〜10年は固定金利で、それ以降に変動金利と固定金利を選べるプランを用意しています。
金利タイプを選ぶ際には、固定金利のほうが返済計画にブレはないものの、金利上昇がなければ変動金利よりも総返済額が高くなるデメリットは理解しておきましょう。
頭金を増やす
金融機関の投資用ローンを利用する場合、頭金の支払額を増やして借入額を最小限にすると、金利上昇の影響が少なくなります。
4,000万円の投資用不動産を取得する場合(金利2%、返済期間35年)のシミュレーションは、以下のとおりです。
頭金 |
毎月の返済額 |
総返済額 |
0円 |
132,505円 |
55,651,862円 |
400万円 |
119,254円 |
50,086,754円 |
800万円 |
106,004円 |
44,521,416円 |
同じ投資用不動産を取得しても、毎月のランニングコストに2万円ほどの差があり、総返済額の差額は1,100万円に上ります。
この差額に対して、金利上昇の影響を受けるとなれば、さらに負担は重くなるでしょう。
なお、頭金を多く用意できる債務者は、預貯金が十分にある人として評価されるのでローン審査でも有利に働くなどのメリットがあります。
不動産投資で金利上昇リスクに直面した際の解決策
すでに不動産投資を始めている投資家が、金融上昇リスクに直面した場合、何もせずに放置すると収支計画が大きく狂う恐れがあります。
金利が上昇したら、影響を最小限に抑えるためにいち早く動かなければなりません。
ここでは、不動産投資で金利上昇リスクに直面した際の解決策について解説します。
金利タイプを変更する
現在、変動金利の状態で金利上昇が進み続けているのであれば、早めに固定金利に変更すると安定した返済計画を立てられます。
ただし、金利変動については、事前に予測は不可能です。
景気や為替相場の流れによってある程度の予想ができても、確実ではないからこそ、慎重な判断が求められます。
契約時の段階では、変動金利よりも固定金利のほうが利率が高くなるので、将来的な金利上昇に対する不安が大きいのであれば、金利タイプを見直してもよいでしょう。
低金利のローンへ借り換える
金利上昇によって毎月の返済額が大幅に増えてしまった場合、今の金融機関よりも低金利の金融機関に借り換えると、返済負担を軽減できる可能性があります。
滞納歴がなく、計画的に返済を続けられていると証明できれば、ローン残債が多くても借り換え審査に通りやすいです。
返済期間が長く残っているのであれば、今のままよりも総返済額を減らせるかもしません。
ただし、金融機関の借り換えを申し出た場合、手数料や解約金などの諸費用が発生する可能性があるので、契約時の特約などを確認しておきましょう。
どの金融機関も、自社で返済してもらったほうが利息が得られるので、事情を説明すれば利率を下げてもらえる場合もあるようです。
繰上げ返済する
金利上昇により、総返済額が大幅に増えると予想される場合、利率が上がりきる前の段階で繰上げ返済を検討してもよいでしょう。
繰上げ返済とは、契約時の返済予定よりも早く完済できるように、いつもの返済額よりも多く支払う方法です。
ローン残債に応じて利息が少なくなるプランもあるので、繰上げ返済がキャッシュフローの悪化を防ぐ解決策になる場合があります。
ただし、ここで注意するべき点として、不動産投資では「空室率の増加による収入の減少」「経年劣化による修繕費用の発生」「災害による被害」などのリスクが潜んでいます。
突然の不測の事態に備えて、ある程度の手元資金は残しておかなければなりません。
また、将来的に投資用物件を増やそうと考えているのであれば、頭金の貯蓄も必要になるので、無理のない範囲で繰上げ返済の充当金を捻出しましょう。
売却でローンを一括返済する
金利上昇によって、毎月の返済負担が限界を迎えそうになっているのであれば、物件を売却して得られた売却益でローン残債を一括返済する方法があります。
金利変動に応じて、即時に不動産価格に影響がでるわけではありません。
とはいえ、金利が高くなるほど、徐々に不動産価格は下落する傾向にあるからこそ、できるだけ早く販売活動に移ると高い売却益が期待できます。
通常の売買取引では、3ヶ月〜半年ほどの期間を要するため、投資用物件を手放すと決めたらすぐに動き出すべきです。
また、売却益でローン残債を一括返済できない場合は、自己資金での補填が必要になるので、必ず金融機関に相談しましょう。
金利上昇リスクをうまく活用すると不動産投資の成功になる?
投資用ローンを組んでいる場合、金利が上昇するとキャッシュフローの悪化による懸念をする投資家が多いです。
しかし、金利上昇に加えて物価上昇が発生してれば、インカムゲイン(家賃収入による利益)とキャピタルゲイン(売却による利益)を同時に享受できる可能性があります。
二つの利益を同時に出すためには、投資用不動産の選び方が重要です。
都心や人口の多いエリアで不動産を取得すれば、金利上昇や物価上昇が起きても、需要が下がるケースはないので、収益には影響がありません。
それどころか、市場の流れにあわせて家賃や売却価格を高くしても、入居希望者や購入希望者が見つかりやすいので、十分な利益を確保できます。
まとめ
不動産投資を成功させるためには、金利上昇リスクを把握して、投資を始める前から対策をする必要があります。
安定した返済計画を立てたいのであれば固定金利を選ぶべきですが、もしも金利変動がなければ損失になるので、慎重な判断が必要です。
また、不動産投資をしている際に金利上昇が発生した場合、金利タイプやローンプランを見直したり、売却による一括返済を検討したりして対処しましょう。
不動産投資には多岐にわたる情報収集や費用対効果を見越した対策の継続が成否を大きく左右します。既に経験された大家さんが集う、不動産賃貸経営を学べる塾やセミナーに参加し、継続的に良質な情報やノウハウを学ぶことをお勧めします。