不動産投資にかかる初期費用の目安と内訳は?初期費用を抑える方法も解説

最終更新日:2025年1月31日

不動産投資を始めてみたい方にとって、初期費用がどのくらいかかるのかは、大きな悩みや不安の1つではないでしょうか。無理なく安心して不動産投資をおこなうためにも、具体的にどの程度の初期費用が必要になるのか、しっかり確認しておきましょう。

本記事では、不動産投資を始めるために必要な初期費用の目安や、その内訳を解説します。初期費用を抑える方法もご紹介しますので、初期費用に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

不動産投資にかかる初期費用の目安は物件価格の15%程度

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不動産投資を始める際に必要な初期費用は、購入する物件などによって変化しますが、基本的には物件価格の15%程度を目安として、資金を用意しておけば安心できるでしょう。

たとえば、3,000万円の物件を購入する場合は450万円、5,000万円の場合は750万円が、おおよその目安となります。

ただしこの金額は、あくまでも目安に過ぎない点に注意してください。

実際に物件を購入する際は、後ほど解説する初期費用の内訳ごとに実際の金額を確認したうえで、不足なく資金を準備するよう心がけましょう。

不動産投資にかかる初期費用の内訳

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不動産投資にかかる初期費用といっても、かかる費用は以下の通りさまざまで、支払いタイミングもそれぞれ異なります。

  • 頭金
  • ローン事務手数料・保証料
  • 仲介手数料
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 司法書士への報酬
  • 火災保険料・地震保険料
  • 固定資産税・都市計画税の精算金

ここからは、各費用の金額の目安、支払いタイミングなどを解説します。

頭金

不動産投資ローンを利用する場合、物件価格の10〜20%の頭金を用意するのが一般的です。

頭金の分だけ融資総額を減らし、月々の返済負担を軽減する効果や、融資審査に通りやすくなる効果などが期待できます。

融資上限を超えた金額の物件を購入する場合にも、頭金が有効になる場合があります。たとえば融資上限が2,000万円だった場合、頭金として500万円を用意すれば、2,500万円の物件が購入可能です。

物件価格の10〜20%はあくまで目安に過ぎないので、状況に応じた頭金を用意しましょう。

ローン事務手数料・保証料

不動産投資ローンを利用する際、事務手数料が発生します。手数料には、借入金額にかかわらず一定額を支払う「定額制」と、借入金額に応じて支払い額が変動する「定率制」の2種類があります。

また金融機関がローン保証を利用する場合は、ローン保証料の支払いも求められます。

ローン保証とは、契約者が返済できなくなった場合に、保証会社が返済を肩代わりするシステムです。

余談ですが、実際に保証会社が肩代わりする事態になったとしても、契約者の返済義務は消えないので注意してください。

ローン保証料は、融資を受ける際に一括で支払う場合と、月々の返済に保証料を上乗せして分割で支払う場合があります。
一括支払いの場合は融資額の1〜2%程度、分割払いの場合はローン金利に年0.2~0.3%程度が上乗せされるケースが多いです。
基本的に、一括で支払ったほうが支払総額が少なくなります。

仲介手数料

不動産会社の仲介で物件を購入する場合は、不動産会社に仲介手数料を支払います。

仲介業務の成功報酬として支払う料金なので、売買契約が成立した場合のみ発生します。不動産会社が仲介していない場合や、直接売主から購入する場合には発生しません。また、不動産会社が売主になる場合も同様です。

仲介手数料は以下の通り、法律で上限が定められており、基本的には上限額が請求されます。仲介手数料の上限は、以下の計算で求められます。

①物件価格の200万円までの仲介手数料上限 = 対象の価格 × 5% + 消費税
②物件価格の200~400万円までの仲介手数料上限 = 対象の価格 × 4% + 2万円 + 消費税
③物件価格の400万円を超えた部分の仲介手数料上限 = 対象の価格 × 3% + 6万円 + 消費税

たとえば3,000万円の物件を購入する場合であれば以下の通り、①②③の合計が仲介手数料上限となります。

①200万円 × 5% =10万円

②200万円 × 4% + 2万円 = 10万円

③2,600万円 × 3% + 6万円 = 84万円

① + ② + ③ = 104万円 + 消費税

支払いタイミングは売買契約成立後で、契約締結時に一括払いする場合や、物件引き渡し時に一括払いする場合のほか、契約締結時と引き渡し完了時の2回に分けて半額ずつ支払う場合があります。契約成立前に用意しておけば問題ないでしょう。

不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を購入した際に課せられる税金です。課税額は以下の通り、購入した物件の課税標準額に税率(4%)をかけて求められます。

なお令和9年(2027年)3月31日まで、住宅および土地については税率が3%に、宅地や宅地と同じ扱いを受ける土地については課税標準額が2分の1に軽減される特例措置が適用されているため、税負担が一時的に軽くなっています。

参照:国土交通省 令和6年度 国土交通省税制改正概要

支払いタイミングは、納税通知書が送られてきてから1週間程度です。通知書は基本的に、物件購入から半年から1年程度、早ければ1〜3ヶ月程度で送付されるので、同封の納付書を使って納めてください。具体的な納付期限は納付書に記載されていますので、支払いを忘れないようにしましょう。

印紙税

印紙税とは、法律で定められた課税対象の文書に、収入印紙を貼り付ける形で納める税金です。不動産投資においては、不動産投資ローンの契約書(金銭消費貸借契約書)と売買契約書が課税対象となっています。

収入印紙は、役所や法務局、郵便局などで購入が可能です。コンビニでも購入できますが、200円の収入印紙のみ取り扱っているケースが多いため注意してください。

納税額は、書類に記載されている金額(融資額や売買金額)によって変化し、以下の表の通り、金額が高くなるほど納税額も高くなります。

記載金額(融資額/売買金額)

印紙税額

10万円以下

200円

10万円超、50万円以下

400円

50万円超、100万円以下

1,000円

100万円超、500万円以下

2,000円

500万円超、1,000万円以下

1万円

1,000万円超、5,000万円以下

2万円

5,000万円超、1億円以下

6万円

1億円超、5億円以下

10万円

登録免許税

登録免許税とは、物件を購入した際の所有権移転登記や、不動産投資ローンを利用する際の抵当権設定登記といった、登記手続きの際に納める必要がある税金です。登記の種類によって、税率や納税額の基準となる金額(課税標準)が変化します。

たとえば、投資用の中古住宅を購入した際におこなう所有権移転登記の場合、税率は2%、課税標準は固定資産税評価額です。固定資産税評価額とは、自治体が算出している土地や建物の評価額で、固定資産税の納税通知書(課税資産明細)などで確認ができます。売買金額とは別物なので、注意してください。

なお抵当権の設定は、金融機関が物件を担保にするためにおこなう手続きですが、登録免許税はローンの契約者の支払いとなります。

登記の種類

税率、税額

課税標準

所有権移転登記(土地)

1.5%
(2026年3月31日まで。本則税率2.0%)

固定資産税評価額

所有権移転登記(建物)

2.0%

固定資産税評価額

所有権保存登記

0.4%

固定資産税評価額

抵当権設定登記

0.4%

借入金額

抵当権抹消登記

1件あたり1,000円

司法書士への報酬

登記手続きは自分でもおこなえますが、複雑で専門知識が必要となるため、司法書士に依頼するのが一般的です。

報酬は依頼する司法書士事務所や地域、登記手続きの種類などによって異なりますが、以下の通り1〜11万円程度が相場となっています。

  • 所有権移転登記:2~11万円
  • 所有権保存登記:1~6万円
  • 抵当権設定登記:2~8万円
  • 抵当権抹消登記:1~3万円

参照:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)

火災保険料・地震保険料

投資物件を購入した際、火災保険や地震保険に加入するケースが多いです。不動産投資ローンによっては、融資条件に火災保険への加入を含んでいる場合もあります。

火災保険は火災による損害を補償するだけでなく、落雷や水災などの自然災害による損害や、盗難や自動車事故による損害なども補償対象にできるなど、カバーできる範囲がとても広いのが特徴です。

また特約の中には、事故や災害による損害の修繕工事中の家賃を補償してくれる家賃補償特約や、物件で死亡事故が発生した際のリスクに備えられる家主費用特約など、不動産投資に役立つオプションも充実しています。

保険料は、補償内容や補償期間、建物の種類や構造などによって変化します。たとえば一棟アパートの場合では5~15万円程度が相場ですが、ワンルームマンションの場合は5万円程度になります。

なお地震による被害の補償については、火災保険ではなく地震保険がカバーしています。地震によって発生した火災で被害を受けた場合、地震保険に加入していないと補償が受けられないので注意してください。

地震保険は、火災保険とセットでのみ加入が可能です。地震保険単独の加入はできないので、火災保険の契約時に加入を検討してみましょう。

固定資産税・都市計画税の精算金

物件を購入したタイミングによっては、固定資産税や都市計画税の日割り精算を求められる場合があります。

固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日時点での不動産所有者に課せられる税金です。たとえば物件を売却して4月末日に引き渡した場合、売主は1月1日時点で1年間の固定資産税を支払っていますので、引き渡し後の5月から12月までの税金まで負担している形になります。そのため物件引き渡し後から12月31日までの分に関しては、日割り計算で求めた金額を、清算金として買主が負担するのが一般的です。

固定資産税は、物件の固定資産税評価額に税率を掛けて求められます。物件の購入を検討する際は清算金を負担すると仮定して、具体的にどのくらいの金額になりそうか、事前に計算しておきましょう。

不動産投資の初期費用を抑える方法

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不動産投資を始める際、できる限り初期費用を抑えたいと考えるのは、ごく自然な発想ではないでしょうか。

不動産投資では突発的な修繕などで、ある程度まとまった自己資金が必要になるケースが少なくありません。できる限り多くの自己資金をキープできるよう、問題ない範囲で節約に取り組むのがお勧めです。

そこでここからは、不動産投資にかかる初期費用を抑える方法を解説します。

頭金を減らす

初期費用の中でも、比較的大きな割合を占めるのが頭金です。一般的には物件価格の10〜20%が目安とされていますが、必ずしもその通りでなければならないとは限りません。

たとえば年収が1,000万円を超えている、医者や公務員といった社会的信用度の高い職業に就いているなどの場合、それだけである程度以上の信用が得られます。このような場合は多少頭金を減らしても、審査に不利になりにくいでしょう。

ただし頭金を減らすと、その分だけ借入金額が増えてしまいます。月々の返済負担を増やすか、返済期間を長くする必要が出てくるので注意してください。

不動産会社から物件を購入する

不動産会社から物件を購入するのも、初期費用を抑える効果が期待できる方法です。

不動産会社が売主になるのであれば、仲介は必要ありません。したがって仲介手数料を支払う必要もなくなり、その分だけ初期費用を抑えられます。

費用の節約とは直接関係がありませんが、不動産会社から購入する場合、ポータルサイトには掲載していないような非公開物件を紹介してもらえる可能性もあります。非公開物件は優良物件が含まれているケースがあるため、掘り出し物の物件に出会えるかもしれません。

とはいえ不動産会社が売主の物件は、不動産会社が自由に値付けできるため、より良い物件ほど高い価格が設定されている可能性が高いです。初期費用を抑えるという趣旨からは外れてしまいますが、投資対効果が高い物件を購入できれば、不動産投資そのものの成功率が高まります。成功に至るまでの過程が短縮されるのであれば、広い意味で節約になる可能性は高いのではないでしょうか。

初期費用は抑えられるものの注意が必要な方法

ここからは、注意が必要な節約方法をご紹介します。利用を検討する場合は、その方法が持つリスクについても、十分に理解を深めておきましょう。

フルローンの利用

フルローンとは、頭金ゼロで希望金額を全額借り入れる融資方法です。

金融機関にとっては通常の融資よりもリスクが大きいため、融資条件は厳しくなります。場合によっては融資額を減らされてしまう可能性があるので、ある程度以上の信用がないと、利用するのは難しいでしょう。その代わり頭金をゼロにできるので、初期費用を大きく節約できます。

ただし、融資総額が増加するため月々の返済負担が大きくなるため、キャッシュフローが悪化しやすくなるリスクや、金利上昇のリスクが高まる点に注意してください。借り換えや追加融資が難しくなってしまうおそれもあります。

区分マンション(ワンルームマンション)への投資

区分マンション(ワンルームマンション)投資とは、ワンルームなどの単身者向けの物件を、1部屋だけ購入して運用する投資方法です。購入費用が少なく済むため、初期費用の大幅に節約できる可能性があります。

ただし単身者向けの1部屋のみを運用する形になるため、収益を出しづらい点に注意してください。空室が発生すると一切収入が得られなくなる点も、区分マンション投資の大きなリスクの1つです。

不動産投資は始めた後にも費用がかかる

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不動産投資では、つい初期費用の負担の大きさに注目してしまいがちかもしれません。ですが物件を購入して運用を開始した後も、修繕費用や原状回復費用など、さまざまなランニングコストが発生する点に注意してください。

初期費用の支払いだけで自己資金が尽きてしまうと、運用に必要な費用が支払えなくなってしまいます。物件を安定して運用するために自己資金は多めに用意し、万が一の際にもしっかり対応できるよう、余裕を持たせるよう心がけましょう。

まとめ

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不動産投資の初期費用の目安は、物件価格の15%程度です。初期費用の内訳には、頭金、ローンの事務手数料や保証料、仲介手数料のほか、不動産取得税や印紙税などの各種税金、火災保険料などがあります。

初期費用を抑える方法としては、頭金を減らす、不動産会社から物件を購入する、などがあります。フルローンの利用や区分マンション投資なども効果的ですが、リスクも大きいので注意が必要です。

これから不動産投資を始める方は、基礎知識を身に付けてから投資をおこなうことをお勧めします。

また、経験やノウハウを積まれている経験者の話を聞ける環境は非常に有効でしょう。

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