不動産投資における家賃保証とは?仕組みを解説

最終更新日:2024年6月9日
  • 家賃保証とはどんなものか知りたい
  • 家賃保証にはどんなリスクがあるのか知りたい
  • 家賃保証をうまく活用するためのポイントがあれば知りたい

この記事では、不動産投資における家賃保証について知りたい方に向けて、家賃保証の仕組み、リスクと対策、効果的な活用方法、活用する際のポイントを解説します。

この記事でわかること

  • 不動産投資における家賃保証の仕組み
  • 家賃保証のリスクと対策
  • 家賃保証の効果的な活用法

不動産投資における家賃保証の仕組み

不動産物件の管理方式には、管理会社に委託する管理委託のほかに、家賃保証と呼ばれる方法があります。

家賃保証とはどんな管理方式で、どのような仕組みで運用されているのかを解説します。

サブリース会社による物件全体の一括借り上げ

家賃保証とは、サブリース会社が物件全体を借り上げたうえで、サブリース会社が入居者を募集し、物件を又貸しする方法です。

物件を借り上げたサブリース会社は入居者を募集し、転貸借契約(サブリース契約)を締結します。

つまり入居者から見ると、サブリース会社が貸主となります。

サブリース会社は入居者から家賃を回収し、一定の手数料を差し引いてオーナーに振り込みます。

契約期間中は、入居者の募集や退去後の対応なども含め、サブリース会社が物件の管理を担当することがほとんどです。

契約によっては物件の修繕費や原状回復費、宣伝・広告料もサブリース会社が負担するケースもあり、物件管理の手間と費用も抑えられる点が、家賃保証の大きな特徴です。

賃料保証型とパススルー型の仕組み

家賃保証には賃料保証型サブリースとパススルー型サブリースの、2種類があります。

賃料保証型サブリースは空室状況に関係なく、一定の家賃収入が保証される仕組みです。

賃料固定型、とも呼ばれます。

満室時に得られる家賃の80〜90%程度が、最低保証賃料として毎月支払われるため、契約期間中は安定した収入を見込めるのが特徴です。

一般的に家賃保証と呼ばれるのは、こちらのタイプになります。

パススルー型(実績賃料連動型)サブリースでは、物件を一括で借り上げるのは同じですが、空室分の家賃は支払われません。

ただし、サブリース会社が入居者と転貸借契約を結ぶのは変わりがないので、オーナーは入居者と個別に契約する手間は省けます。

入居者との契約も任せられる管理委託、と考えるとわかりやすいかもしれません。

家賃保証のリスクと対策方法

安定した家賃収入や、管理の手間と負担を減らせる家賃保証ですが、当然リスクもあります。

具体的にどのようなリスクがあり、どのような対策方法があるのか確認しておきましょう。

収益性が下がる

自主管理や管理委託の場合、オーナーと入居者が賃貸借契約を結ぶため、家賃はそのままオーナーの収入となります。

しかし家賃保証では、オーナーと入居者の間にサブリース会社が入り、家賃から手数料を支払う形になるため、その分だけ収益性が下がります。

たとえば、物件の半数が空室だった場合は家賃保証のメリットが活かされるので問題はありません。

しかし空室がない人気の物件だった場合は、本来の収益の80〜90%程度しか受け取れず、その分だけ損になってしまいます。

この問題は家賃保証を利用するうえでは避けられず、残念ながら対策はありません。

家賃保証のメリットである空室リスクの回避や、入居者と個別に契約する手間と比較して、納得できるかどうかがポイントになります。

家賃を引き下げられる可能性がある

家賃保証の契約は30年など長期間であるケースが多いです。

その間の家賃は一定ではなく、サブリース会社から家賃(最低保証賃料)の引き下げを求められるケースがあります。

家賃保証においては、オーナーとサブリース会社は普通借家契約を結びます。

普通借家契約では貸主よりも借主が強く守られているため、契約に「一定期間は賃料を減額しない」旨の条文が含まれていたとしても、借主の減額要求は認められます。

家賃は一度下げてしまうと戻すのが難しく、物件の価値の低下にもつながるため、オーナーとしては可能な限り避けたいところです。

対策としては、家賃を引き下げる理由を確認し、引き下げる必要がなくなるような対策を提案する方法があります。

たとえば空室の増加や周辺相場の変化を理由としている場合は、オーナー側で具体的な空室対策を提案してみるのも良いでしょう。

建物の劣化が問題であれば、リフォームやリノベーションで対策できるかもしれません。

なお契約によっては、家賃の決定権がサブリース会社側にあると明記されているケースもあります。

この場合は残念ながら、サブリース会社の決定に従うほかありません。

一般的に、周辺の家賃相場は下がるものです。これに対し、30年、家賃を維持できる可能性がそもそも低い事を理解していないと、

「サブリースにすれば家賃は下がらないものだ」

と勘違いして、安心の経営と思ってローンを抱えてしまう方が非常に多い為、注意が必要です。

礼金や敷金を受け取れない可能性がある

家賃保証では、礼金や敷金、更新料をサブリース会社が受け取る契約になっているケースが少なくありません。

不動産投資において礼金や更新料が得られないのは、大きな痛手です。

あらかじめ納得して契約していたのなら問題ないのですが、もし気付かずに契約していたら、非常に大きな損失となるでしょう。

後から後悔しないよう、事前に契約内容を確認しておくのが大切です。

免責期間がある

家賃保証の中には、新築や入居者の退去後の一定期間を免責期間と定め、その間は最低保証賃料を支払わない契約にしているケースがあります。

免責期間は1〜6ヶ月程度と、契約によってさまざまです。

退去者が続いた場合は家賃収入に大きく影響してしまうため、ある程度の資金を用意し、備えておきましょう。

また契約前に、免責期間について確認しておくのも大切です。

場合によっては応じて話し合いをして、少しでも納得できる期間に調整してもらえるよう働きかけましょう。

入居者を選べない

家賃保証において、入居者と契約を結ぶのはサブリース会社です。

選定もサブリース会社がおこなうため、オーナーに確認しないまま契約してしまう可能性があります。

たとえば極端な例ですが、家賃滞納のリスクが高い入居者希望者であっても、サブリース会社が契約してしまうケースが挙げられます。

また、オーナーであっても誰が入居しているのかわからない、把握していないケースや、入居者情報の開示をめぐってトラブルに発展してしまったケースも見受けられます。

入居者を選べない点に納得できない場合は契約をしない、入居者情報についてはあらかじめ情報を開示する旨を契約内容に含めておく、などが対策となるでしょう。

オーナー側から解約するのが難しい

家賃保証は解約するのが難しく、契約期間が満了した場合も正当な事由がない限りは、オーナー側の意思で解約ができません。

普通借家契約を締結するケースが多い家賃保証においては、サブリース会社が借主の立場にあるため、オーナー側の都合だけで解約をするのが難しく、サブリース会社の同意を得る必要があるのです。

しかし、解約は不可能ではありません。

契約には解約条項が含まれているので、この内容に従って適切に解約手続きを進めましょう。

揉め事になってしまうとオーナー側が不利になってしまうので、必要に応じて専門家にも相談しつつ、手続きを進める必要があります。

サブリース会社が倒産した際のリスクが大きい

契約しているサブリース会社が倒産してしまった場合、オーナーにはさまざまな問題が発生します。

まず、毎月必ず得られるはずの家賃収入が途絶えてしまうでしょう。

もちろん支払われなかった分の家賃はサブリース会社に請求できますが、回収までに時間も手間もがかかりますし、必ず回収できるとも限りません。

サブリース会社との契約は賃料の未払いを理由に解除できますが、同時に入居者とサブリース会社との契約もなくなります。

倒産した会社とのやり取りがスムーズに進むとは限らず、入居者との契約を引き継ぐにしても、手続きが思うように進まなくなる可能性もあるでしょう。

その場合、混乱が収まるまで家賃収入が得られなくなります。

サブリース会社の倒産を予想するのは難しいですが、なるべく事前に会社の評判や実績を確認し、信頼性を確認しておきましょう。

家賃保証の効果的な活用方法

家賃保証にはネガティブな面もありますが、特徴を理解し、リスクを納得して活用できれば、小さな負担で安定した不動産投資を実現しやすくなります。

ここからは、家賃保証の効果的な活用方法をいくつか紹介します。

ノウハウ不足のカバー

不動産運用で安定した利益を生み出すには、知識や経験、ノウハウが必要です。

入居者の募集や物件の管理、修繕、入居者とのコミュニケーションなど、さまざまな要因が関係し、空室率に影響してきます。

家賃保証では、サブリース会社に物件の管理・運用を任せられるため、オーナーのノウハウ不足をカバーする手段として活用できます。

はじめての不動産投資で勝手が分からない、新築マンションを購入したものの家賃をいくらに設定すればいいか分からない場合などは、家賃保証の利用も選択肢のひとつになるでしょう。

空室リスクの軽減

家賃保証を利用する大きなメリットのひとつが、空室リスクの軽減です。

最低保証賃料が受け取れる賃料保証型サブリースを活用すれば、空室の増減に一喜一憂する必要がなくなります。

頭の痛い家賃滞納が発生しても家賃が保証されるうえ、サブリース会社に対応を任せられる点も大きな魅力です。

契約中は一定の家賃収入が得られるため、安定した運営を実現したい場合の選択肢として活用できるでしょう。

物件管理の手間や負担の軽減

契約したサブリース会社は物件の管理・維持だけでなく、契約内容によっては入居者の募集や広告宣伝、原状回復など、手間や時間のかかる作業を引き受けてくれます。

複数の物件を保有している方や、副業として不動産投資をしている方、物件の管理にあまり時間をかけたくない方などに適した活用方法です。

家賃保証を活用する際に抑えておきたいポイント

家賃保証を上手に活用するために、以下のポイントに注意してください。

  • 契約内容を必ず確認し、納得したうえで活用する
  • 信頼できるサブリース会社と契約する

契約前にかならず契約内容を確認し、納得できる場合にのみ利用するようにしましょう。

特に免責期間や家賃見直しまでの期間や、礼金や更新料の受け取りなどは、契約後の収益にも大きく影響してきます。

契約してから後悔のないよう、必要に応じて交渉も行いましょう。

20年や30年に渡る契約も珍しくない家賃保証では、信頼できるサブリース会社と契約できるかも、重要なポイントになります。

2020年に施行されたサブリース新法によって、サブリース会社とのトラブルは減少しているものの、悪質な業者がなくなったわけではありません。

経営状態もさることながら、法律を遵守する信頼できる会社かどうかを判断するために、実績や評判もチェックしておきましょう。

まとめ

家賃保証とは、サブリース会社が物件全体を借り上げたうえで、サブリース会社がその物件を入居者に貸し出す方法です。

ノウハウ不足のカバーや空室リスクの軽減に活用できるものの、収益性が下がる、免責期間があるなどのリスクもあります。

特徴やリスクを把握したうえで、納得して活用するのがおすすめです。

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