不動産投資の理想的な利回りは?利回りの基礎知識から最適化のための活用方法などをやさしく解説!

最終更新日:2024年9月25日

利回りは、不動産投資において投資物件を選ぶ際の重要な指標として知られています。

不動産投資の利回りにはいくつかの種類がありますが、不動産投資の初心者の方には違いがわかりにくいため、どんなときに使うべきなのかわからず困っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、不動産投資における利回りの利回りの意味や種類、計算方法などの基礎知識のみならず、利回りの相場や理想、利回りを考える際の注意点なども解説します。

また、利回りが低くても注目すべき投資物件についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。

不動産投資における利回りとは

利回りとは、その物件から得られる1年間の収益が、その物件にかけた金額(購入費用やランニングコスト)の何%になるのかを示す数値です。

 

たとえば1,000万円で購入した物件から、1年間で100万円の収益を得ている場合、その物件の利回りは10%となりますし、4,000万円で購入して年間収益が100万円であれば、利回りは2.5%となります。

 

つまり現状の運用益を維持できた場合、利回り10%の物件は10年で購入費用を回収できる一方で、利回り2.5%の物件は10年運用しても、購入費用の半分すら回収できないと予想できるわけです。

 

このように利回りを確認すれば、その物件に投資した金額に対して、どの程度の効率で利益が得られるのかを判断しやすくなります。そのため不動産投資では、物件の良し悪しを図る指標の1つとして役立てられています。

不動産投資における利回りの種類

利回りには以下の通り4種類あり、それぞれ計算方法や読み取れる意味に違いがあります。

  • 表面利回り
  • 実質利回り
  • 想定利回り
  • 現行利回り

ここからは、それぞれの意味と計算方法を解説します。利回りを適切に活用するためにも、それぞれの利回りが何を意味しているのか把握しておきましょう。

表面利回り

表面利回りとは、物件の購入価格に対する、その物件から1年間で得られる収益の割合です。グロス利回り、と呼ばれる場合もあります。

計算式は以下のとおりです。

 

年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100 = 表面利回り(%)

 

たとえば1,000万円で購入した物件から、1年間で100万円の収益が得られる場合は、以下の計算で表面利回りが求められます。

 

年間家賃収入:100万円
物件購入価格:1,000万円

100万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 10%

このように表面利回りは、物件の購入価格と年間の家賃収入だけで求められる、簡易的な数値です。おおざっぱにでもいいので、物件の収益性を手軽に確認したい、という場合に適しています。

なお不動産投資において単に「利回り」と表現されている場合、表面利回りを指しているケースが多いです。広告や販売図面に記載されている利回りも、基本的には表面利回りであるため注意してください。

実質利回り

実質利回りとは、物件の購入価格だけでなく、購入する際にかかった諸経費や、ランニングコストも含めたうえで求める利回りです。ネット利回り、と呼ばれる場合もあります。

 

計算式は以下のとおりです。

 

(年間家賃収入 – 年間経費)÷(物件購入価格+ 購入時諸経費)× 100 = 実質利回り(%)

 

計算式の年間経費には管理費、修繕費、火災保険料、各種税金(固定資産税、都市計画税)などが、購入時諸経費にはローンの頭金や仲介手数料、各種税金(登録免許税、不動産取得税)などが含まれます。

 

以下は、実質利回りの計算例です。

 

年間家賃収入:300万円

年間経費:100万円

物件購入価格:3,000万円

購入時諸経費:300万円

 

(300万円 - 100万円)÷(3000万円 + 300万円)× 100 = 約6.1%

 

実質利回りでは経費も含めて計算するため、より実態を反映した収益性を確認できるのが特徴です。表面利回りは高いのに実質利回りが振るわない、というケースもありますので、物件の良し悪しを判断する際には実質利回りもチェックしたほうが良いでしょう。

想定利回り

想定利回りは、運用しているマンションやアパートの全室が埋まっている前提の利回りです。

 

計算式は以下の通りです。

 

満室時の年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100 = 想定利回り(%)

 

以下は、想定利回りの計算例です。

 

家賃:75,000円(年間90万円)
部屋数:10部屋
満室時の年間家賃収入:900万円(90万円 × 10部屋)
物件購入価格:1億円

9% = 900万円 ÷ 1億円 × 100

このように想定利回りは、その物件から1年間に得られる最大の収入をベースとしている点を除き、表面利回りと同様の計算式となっています。

当然ながら不動産投資では、常に満室で運用できるとは限りません。あくまでもその物件が持つ、潜在的な収益性の目安と考えてください。

現行利回り

現行利回りは、現在の入居状況を反映して算出する利回りです。

 

計算式は以下の通りです。

 

現状の入居者状況から求められる年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100 = 現行利回り(%)

 

以下は、現行利回りの計算例です。

 

家賃:75,000円(年間90万円)
部屋数:10部屋
現在の入居状況:8部屋(空室2部屋)
現在の入居者数から求められる年間家賃収入:720万円(90万円 × 8部屋)
物件購入価格:1億円

7.2% = 720万円 ÷ 1億円 × 100

このように、現行利回りは実際の入居状況を基準として計算するため、表面利回りに比べ、より現状が反映された利回りが確認できます。ただし、想定利回りと同様の簡易的な計算なので、あくまでも目安程度に考えたほうが良いでしょう。

不動産投資における利回りを考える際の基準

物件の利回りを計算で求めても、その利回りの良し悪しを判断する基準がなければ、物件選びに活用するのは難しいでしょう。

 

ここからは、不動産投資における利回りを判断する基準となる、平均利回りと理想の利回り、最低限の利回りについて解説します。

不動産投資における平均利回り

物件の種類や地域ごとの平均的な利回りを把握できれば、物件の良し悪しを判断する目安となるでしょう。

以下に健美家株式会社が公開している、地域ごとの平均利回りをまとめた表です。

 

地域

区分マンション

一棟アパート

一棟マンション

全国

6.97%

8.04%

7.75%

北海道

12.25%

12.04%

8.76%

東北

13.19%

12.31%

10.70%

首都圏

6.40%

7.53%

6.91%

信州・北陸

15.61%

12.50%

12.57%

東海

9.28%

8.89%

9.15%

関西

7.23%

8.74%

8.41%

中国・四国

13.82%

11.44%

11.52%

九州・沖縄

10.45%

8.80%

8.71%

 

引用元:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや) 収益物件 市場動向 四半期レポート 2023年7月~9月期
※いずれの数値も表面利回り

 

ご覧の通り同じ種類の物件でも、地域によってはかなり差があるのが見て取れます。たとえば、区分マンションの平均利回りが最も大きいのは信州・北陸の15.61%ですが、地価が高めな首都圏や関西、東海では、かなり低い数字となっています。

 

このように利回りの良し悪しを判断する際は、地域による平均利回りの差にも注意してください。

不動産投資における理想の利回り

平均利回りが物件の種類や地域、経済状況などによっても大きく変化するように、理想の利回りも物件の条件や状況によって大きく変化します。そのため残念ながら、一概に理想の利回りを断言するのは難しいです。

 

ひとつの考え方として、地域・物件の種類ごとの平均利回りより1〜2%高い数字が、理想的な利回りの目安とされています。

不動産投資における利回りの最低ライン

利回りの最低ラインも同様に、地域や条件によって変化します。ネット上では利回り10%を最低ラインとする情報も見受けられますが、一概には断言できないため注意してください。

 

たとえば、新築物件か中古物件かで期待できる利回りは大きく変わりますし、建物の構造や地価の影響も無視できません。

 

詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひ併せてご確認ください。

 

関連記事:不動産投資の利回りの最低ラインはどれくらい?利回りを安定させるためのポイントや計算方法までを徹底解説!

不動産投資における利回りを左右する要素

繰り返しになりますが、物件の利回りは立地や築年数など、以下の要素によって変化します。

  • 立地
  • 築年数
  • 建物の構造
  • 間取り

物件の良し悪しを判断する際は利回りだけでなく、これら利回りに影響する要素についても、確認しておくのが重要です。

それぞれ詳しく解説します。

立地

利回りに非常に大きな影響を与える要素が、物件の立地です。

 

地域ごとの平均利回りからも読み取れる通り、地域ごとの地価の違い(都心か郊外か、など)を始め、駅近などの交通アクセスや商業施設の有無といった利便性、治安、日当たりなど、物件そのものの立地条件も大きく影響します。

 

立地条件の良い物件は基本的に賃貸需要が高く、資産価値も低下しにくい傾向が見られるため、利回り自体は低くても安定した収益を得られる可能性があります。

築年数

築年数も、利回りに大きな影響を与える要素の1つです。

一般的に不動産は、築年数が浅いほど価値が高くなり、築年数の増加にともなって徐々に低下していきます。一般的に資産価値が高いほど利回りは低くなり、資産価値が低下するほど利回りは高くなりやすいです。高利回りを目指すのであれば、敢えて中古物件を狙うのも戦略の1つと言えるでしょう。

一方で、築年数が増すほど建物の老朽化が進むため、空室リスクや修繕コストなどが増してしまうリスクもあります。

建物の構造

木造やRC造(鉄筋コンクリート造)など、建物の構造によっても利回りに違いが出てきます。

基本的には木造、鉄骨造、RC造、SRC(鉄筋鉄骨コンクリート)造の順に耐震性や耐久性、建築費用、資産価値が高くなり、それにともなって利回りが低くなります。

ただし、一般的にアパートは木造であるケースが多い一方で、マンションはRC造やSRC造が多く見られるなど、構造と利回りだけでは適切な物件の比較が難しい点に注意してください。

間取り

投資物件の間取りは、入居者のターゲットを決める重要な要素です。

たとえば、大学近くの物件で学生を主なターゲットとするのであれば、学生に人気のある間取りのワンルームに揃えれば、より需要が高まり空室リスクが下がるでしょう。空室リスクが下がれば収益率が上がり、利回りも高まります。

逆に、物件の需要と間取りが一致していない場合、利回りも低くなってしまいやすいです。

利回りが低くても注目すべき物件

不動産投資では利回りにばかり注目してしまうと、かえって利回りの維持が難しくなってしまう可能性が高まります。繰り返しお伝えしている通り、利回り以外の他の要素にも十分に注意を払い、物件選びや運用方針の判断基準として役立てるのが好ましいです。

そこでここからは、利回り以外に注目すべき物件選びのポイントについて解説します。

築5年以内の物件

利回りの維持を考えた場合、築浅物件がおすすめです。

 

築5年以内の物件は、資産価値が高く利回りが低くなりがちですが、空室リスクが低く修繕費用もほとんどかからないため、利回りを維持しやすいです。

 

築10年を超えてくると利回りは高くなりやすいですが、修繕費がかさみ、実質利回りが大きく低下する可能性が出てくるので注意してください。

入居率が100%に近い物件

家賃を高く設定して利回りを高めても、入居率が低ければ家賃収入が減り、収益の悪化を招いてしまいます。

 

一方で、利回りは低くても入居率が100%に近く、安定して入居者を得られている物件であれば、安定した収益が期待できるでしょう。

立地が良い物件

多少利回りが低くても立地条件が良ければ、安定した利益を出せる可能性が高まります。

 

不動産投資における成功失敗の判断基準は、最終的に利益を出せるかどうかです。たとえ思うように運用益を出せなかったとしても、売却益でカバーできるなら問題ありません。十分な売却益を見込め、しっかりとした出口戦略を立てられる見込みがあれば、利回りが低い物件であっても購入を検討する価値は十分にあると考えてよいでしょう。

 

資産価値が下がりにくい好立地にある物件は、特におすすめです。具体的には、人気があり将来的な需要も見込めるエリアの物件や、接道状況の良い物件、RC造(鉄筋コンクリート造)の物件などが挙げられます。

不動産投資で利回りを考える際に注意すべきポイント

不動産投資において利回りは重要な指標の1つではありますが、決して絶対的なものではなく、立地や築年数などの要素と合わせて、総合的に判断するのが大切です。

にもかかわらず、利回りばかりに注目してしまうと、かえって物件選びの判断が鈍ってしまうケースもあるので、ぜひ注意してください。

ここからは、利回りを考える際に注意すべきポイントをいくつか解説します。

高利回りでも良い物件とは限らない

利回りが高くても良い物件とは限りませんし、高利回りだからこそ注意深い判断が必要になるケースも見受けられます。

 

たとえば、普通では買い手がつかないような問題のある物件を売却するため、意図的に売却金額を低くして利回りを高く見せようとするケースがあるので、注意してください。

 

利回りに目がくらんでこのような物件を購入しても、多くの場合期待した運用益は得られないでしょう。冒頭でお伝えした通り、利回りは投資物件を選ぶ際の重要な指標ではありますが、唯一絶対の指標ではありません。購入してから後悔しないためにも、物件を選ぶ際は利回りだけでなく、築年数や立地条件などもしっかり確認し、さまざまな角度から慎重に判断するのがおすすめです。

大切なのは利回りではなく最終的な収支

不動産投資成否を決めるのは利回りの高さではなく、最終的な収支です。いくら高利回りの物件を購入しても、最終的に収支がマイナスになってしまっては意味がありません。その投資は失敗と判断せざるを得ないでしょう。

 

利回りが高いほど利益効率の良い物件と判断できるのは確かですが、今まで繰り返しお伝えしてきた通り、利回りはあくまでも判断基準の1つに過ぎません。事実利回り自体、物件のさまざまな要素の影響を受けて上下するからこそ、それらの要素を無視するのは非合理的と言えるでしょう。

 

大切なのは、いかにして最終的に収支プラスにするかです。利回りばかりに目を奪われないよう、ぜひ広い視野を持って投資に臨んでください。

まとめ

不動産投資における利回りは、物件選びの重要な指標の1つです。利回りが高いほど、早い段階で投資額を回収しきれる計算となります。

 

とはいえ、その瞬間は高い利回りだったとしても、そのまま維持し続けられる保証はどこにもありません。ですが、不動産を知りノウハウを深めることで、そんなリスクを対策することも可能です。利回り以外の要素にも十分に注意を払い、より良い不動産投資を心がけましょう。

 

本記事が、皆さんの不動産投資の成功につながれば幸いです。

 

 

関連記事