【初心者必見!】不動産投資における減価償却とは何か?減価償却の基本的な考え方からメリットまでを詳しく解説

最終更新日:2024年4月9日

不動産投資では、「減価償却を上手に活用して節税しましょう」と耳にすることがあります。しかし、不動産投資を初めて行う方、特に副業で不動産投資を行っているサラリーマンの方にとっては、「減価償却」は耳慣れない言葉であり、理解が難しいと考えているのではないでしょうか。

そこで、本記事では不動産投資における減価償却の基本的な知識や減価償却の計算方法に加え、メリットなどを解説します。

不動産投資における減価償却について知りたいと考えている方は、ぜひ、ご覧ください。

不動産投資における減価償却の基本

「減価償却は聞いたことがあるけれど、意味はよく分からない」という方は多いのではないでしょうか。

減価償却は、不動産経営にも必要となる重要な会計知識です。ここでは、不動産投資における減価償却について解説しますので、理解を深めておきしょう。

不動産投資における減価償却とは

減価償却とは、価格が大きく、長期間にわたって利用する資産の購入費用について、耐用年数で分割し、一定期間にわたって経費として計上する会計上の処理のことをいいます。

減価償却ができる資産(減価償却資産)については、「年数が経過することにより、資産価値が低下する」資産であることが前提です。そのため、自動車や機械なども減価償却適用の対象となります。

例えば、事業用に自動車を購入した場合を考えてみましょう。自動車の購入額が300万円だった場合、その耐用年数は6年とされていますので、毎年50万円を6年にわたり減価償却費として計上します。

不動産投資における減価償却資産は、建物部分だけでなく付属する設備も含まれます。

不動産投資の減価償却費は何で決まるのか

不動産投資で減価償却の対象となるのは、上述のとおり投資用物件の建物部分と付属の設備です。そして、投資用物件の減価償却費を決めるキーワードとなるのが「法定耐用年数」です。

法定耐用年数とは、法律によって定められた「資産を使用できる期間」のことを指します。住宅については、構造によってその耐用年数が決められています。建物の法定耐用年数は以下のとおりです。

・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) …47年
・鉄筋コンクリート造(RC) …47年
・鉄骨造 …34年
・軽量鉄骨造 …19年
・木造 …22年

新築であれば、法定耐用年数で建物価格を割って算出します。また、耐用年数を一部経過している場合(中古物件)は、(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20で耐用年数を算出する必要があります。

例えば、築年数25年のRC造の建物を購入した場合の減価償却期間は以下のとおりです。

(47年(法定耐用年数)−25年(経過年数))+25年×20%=27年(減価償却期間)

ここで注意しておきたいのは、法定耐用年数はあくまでも税法上の考えであるという点です。法定耐用年数と聞くと、その期間が過ぎてしまうと建物が使えなくなるように感じてしまうでしょう。しかし、法定耐用年数が経過したからといって、実際の建物が壊れてしまうようなことはありません。そのため、法定耐用年数が過ぎた建物も投資用物件として購入することも可能です。法定耐用年数が過ぎてしまった場合にも、簡易計算法を用いて法定耐用年数×20%で、減価償却期間を算出する事が多いです。

不動産投資における減価償却費の計算方法を解説

実際に減価償却費を計上する際に用いられる計算方法は主に2種類あり、それが「定額法」「定率法」です。ここでは、2種類の計算方法について、具体例を挙げながら解説します。

計算方法1:定額法

定額法とは、1年間の減価償却費を原則、一定のものと考え、法定耐用年数に基づいて算出し計上する方法です。定額法は、不動産投資における減価償却費の計算方法として多く用いられています。計算式は以下のとおりです。

定額法による償却限度額=取得価額×定額法償却率

償却限度額とは、当期の経費として計上できる減価償却費の上限額のことをいいます。取得価額は、建物にかかる費用と考えてください。定額法償却率とは、耐用年数によって区分された定額法の償却率です。

定額法償却率は、減価償却費の計算において重要な数字となるため、国税庁のホームページで確認することをおすすめします。

それでは具体的な数字で計算してみましょう。条件は以下のとおりです。

  • 取得価額 3000万円
  • 法定耐用年数 47年
  • 定額法償却率 022

この条件を計算式に当てはめると、3000万円×0.022=66万円となります。定額法は計算方法が単純であるため、比較的簡単にシミュレーションが可能です。

参照:国税庁 減価償却資産の償却率等表

計算方法2:定率法

定率法は、償却した金額を考慮しながら算出し、計上する方法です。定率法の計算式は以下のようになります。

定率法の償却限度額=(取得価額−これまでに償却した金額)×定率法償却率

こちらも具体的な数字で計算してみましょう。

  • 取得価額 3000万円
  • 法定耐用年数 34年
  • 定率法償却率 059

不動産投資1年目 3000万円×0.059=177万円

不動産投資2年目 (3000万円−177万円)×0.059=166万5570円

このように、償却率を乗じる金額が年数の経過ごとに減少していくのが定率法による計算の特徴です。そのため、経過年数が長くなればなるほど少額になります。

また、定率法では、保証率という数字が定められており、こちらも反映しなくてはいけません。さらに、定率法では一定期間経過後に償却率が改定されるため、計算は複雑になります。

正確に算出したい場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参照:国税庁 減価償却資産の償却率等表

不動産投資で減価償却を利用するメリット

なぜ、不動産投資において減価償却を利用するのでしょうか。それは、減価償却を利用することによって2つのメリットを受けることができるからです。その2つのメリットとは、「損益通算によって節税できる」、「実際には支出がないのに経費計上できる」です。

以下では、2つのメリットそれぞれについて解説します。

損益通算によって節税できる

不動産投資を始める際には、さまざまな費用がかかります。特に、不動産投資の初期においては、印紙税や仲介手数料、登記費用など、手続きに関する出費が多く、投資用物件の購入代金を含めると損失が大きくなり赤字になるかもしれません。

不動産投資において赤字が発生した場合に役立つのが「損益通算」です。損益通算を利用すれば、不動産投資から得られる家賃収入などの不動産所得と、給与所得など、その他の所得の利益と損失を相殺することができます。

副業として不動産投資を行っている方は、投資用不動産の運用によって赤字となった場合、確定申告を行う際に損益通算を行うことで、課税対象額を減額することが可能です。課税対象額が減額されることで納税額も減り、節税することができます。

実際には支出がないのに経費計上できる

減価償却費は、実際の支払いは行わずに経費として計上できる、非常に便利な経費といえます。

不動産投資では、運用で得られた所得に経費を計上することで利益を減らし、税金を抑えることが可能です。しかし、ほとんどの経費は実際に支出をともなうため、手元に現金が残りにくいといえます。

その一方、減価償却費は会計上、経費として計上することで利益を減らし、納税額の減額ができるのに実際の支出はともないません。つまり、減価償却費には、節税効果を得やすくなる上に、手元に現金が残りやすいというメリットがあります。

不動産投資における減価償却3つの注意点

不動産投資において減価償却は、上手に活用することで節税につながるため重要な要素です。

しかし、減価償却行う場合には、注意しておくべき点がいくつかありますので、以下で解説していきましょう。

売却時にかかる税金が高くなる可能性がある

不動産投資で減価償却を行うと、物件を売却する際に課せられる税金が高くなる可能性があるので注意が必要です。

減価償却を行うと、物件の会計上の価値(帳簿価額)が減少します。減価償却は数年にかけて行われるため、そのたびに帳簿価額は減少していきます。

物件を売却する際には、その売却額と帳簿価額との差が売却益となり、譲渡所得税が課せられるため、その差額が大きければ大きいほど課税額が高くなるのです。しかし、物件を売却するまでに譲渡所得税よりも大きな節税効果を得られなかった場合、大きな損失となるでしょう。

不動産投資を行う際には、運用時の節税効果だけを考えるのではなく、出口戦略までしっかりと考えておくことがおすすめです。

デッドクロスが発生しやすくなる

ローンを組んで投資用物件を購入した場合、デッドクロスにも注意しましょう。デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回っている状態のことです。つまり、会計上は利益が出ているものの、資金繰りが悪化している状態のことを言います。

デッドクロスは、特に築年数の古い物件で発生しやすいとされています。築古物件は、減価償却費が初期段階で大きく発生し、期間も短いことが理由です。

デッドクロスを回避するには、減価償却期間が終了した時点で物件を売却するか、新築物件や築浅物件を購入し、減価償却期間を長く取ると良いでしょう。

土地代は減価償却ができない

減価償却の大前提として、年数が経過することにより、資産価値が低下する資産であることは、先述の通りです。

投資用物件の建物部分や付属の設備などは、この条件に該当しますが、年数が経過しても資産価値が低下することがない土地は条件に該当しません。つまり、購入した土地については減価償却ができないことを押さえておきましょう。

単純なことかもしれませんが、意外と見落としてしまうこともありますので注意が必要です。

不動産投資における減価償却の効果を高めるポイント

最後に減価償却の効果を高めて、より大きな節税効果を得るための方法を解説します。減価償却の効果を高めるポイントは以下の3つです。

  • 構造は木造を選ぶ
  • 築年数が古いものを選ぶ
  • 長期間(5年以上)所有する

木造の物件は、他の構造と比較して法定耐用年数が22年と短くなっています。そのため、購入を検討している物件の価格と築年数が同じ場合、減価償却費を大きくすることが可能です。

築年数が古い物件の場合、減価償却期間が短くなるため、減価償却費が大きくなります。特に、法定耐用年数が超過してしまっている物件は、一般的には、法定耐用年数×20%の期間とする事が多いため、早く減価償却を終わらせることが可能です。

ただし、築年数が古い物件は、修繕に大きな費用がかかる場合や、入居者が付きにくいなどの問題もありますので、慎重に検討する必要があります。

購入した物件を売却する際、5年以上の長期にわたって所有していると譲渡所得税が低く抑えられます。長期譲渡所得の場合、税率は約20%ですが、5年以内に売却した場合は短期譲渡所得となり、約40%の税率が課せられます。その差は2倍近くになるため、物件売却を考える際には、所有期間も考慮するようにしましょう。

※築年数が古い物件への減価償却期間の対策については、他にも方法が存在します。弊社ではそういった方法も鑑みて、築古物件への投資も推奨しています。

まとめ

不動産投資を行うにあたって、減価償却を利用することで高い節税効果が得られます。特に、副業として不動産投資を行っている方の場合、損益通算を利用することで節税効果を実感することができるでしょう。

ただし、節税目的だけで減価償却の利用を考え、減価償却期間を短く設定していると、、出口戦略で失敗することや、デッドクロスが発生してしまい、不動産投資自体が失敗に終わってしまうことも考えられます。

 

不動産投資は、購入から運用、売却を通じて最終的に利益を出すことが目的です。節税効果だけでなく、減価償却を上手に利用して、不動産投資を成功に近づけるための計画をしっかりと立てることをおすすめします。

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