不動産投資は節税にならないって本当?節税の仕組みから節税にならないと言われる理由や節税につなげるためのポイントを解説!

最終更新日:2024年1月17日

不動産投資を始める理由は、安定した収入を得るため、老後の年金の代わりなど、さまざまです。中には、不動産投資は節税になるから始めたという方もおられるでしょう。

しかし、せっかく節税のために投資用物件を購入したのに「不動産投資は節税にならない」という意見もあるため、不安に感じている方も多いかもしれません。

本記事では、不動産投資における節税の仕組みや節税にならないと言われる理由、節税につなげるためのポイントを解説します。

不動産投資をしているのに、うまく節税できていないと感じている方は、ぜひ、ご覧ください。

不動産投資における節税の仕組み

結論から言うと、不動産投資を行うことで節税は可能です。不動産投資によって節税できるのは、大きく分けて「所得税・住民税」「相続税・贈与税」「法人税適用による節税」があります。

ここでは、それぞれの税金について、なぜ不動産投資を行うことで節税ができるのかを解説します。

所得税・住民税が節税できる仕組み

不動産投資で得た収益は、不動産所得として所得税の対象です。しかし、不動産投資を始めてすぐの頃は、管理費やローンの返済、減価償却費(購入価格を物件の耐用年数で割り、期ごとに経費として計上する費用)などが発生するため、赤字となることがあります。

不動産投資で発生した赤字については、その他の収入と相殺することができます。これを「損益通算」といい、所得税や住民税が節税できる仕組みです。

例えば、本業として給与所得を800万円得ている方が、不動産投資で300万円の赤字が発生したとしましょう。この場合、損益通算を行うと、「800万円−300万円=500万円」となり、課税所得額が本来800万円であるところ500万円となるため、所得税が減額されます。

住民税は、所得税の確定申告書を使用して各市区町村で算出されるため、所得税の計算ルールと連動し、節税効果が得られます。

相続税・贈与税を節税できる仕組み

現金や預貯金を相続する場合、相続税の算出に使われる評価額は、相続するそのままの金額です。

しかし、不動産は評価額の算出方法が異なるため、節税効果を得られます。不動産を相続または贈与する場合、その評価額について、土地は路線価、建物は固定資産税評価額から算出されます。そのため、評価額は土地であれば8割程度、建物は7割程度の評価になるでしょう。

さらに、不動産投資として物件を賃貸用に貸し出していた場合、借地権や借家権の割合が適用され、さらに評価額は減額されるため相続税や贈与税は減額されます。

法人税適用によって節税できる仕組み

会社員をしながら、副業として不動産投資を「個人」で行なっている方は多いのではないでしょうか。そのような方が、個人ではなく「法人」として不動産投資を行った場合、節税効果を得られることがあります。

小規模で不動産投資を行う場合、法人税による節税のメリットはほとんどありません。しかし、給与所得が高く、大規模な不動産投資を行う場合は、法人として行うと節税のメリットを受けられるでしょう。

個人の場合、所得税・住民税は累進課税制度により、最大55%となります。一方、法人に適用される税率は23.2%(所得800万円を超える部分)とかなり低く設定されているため、節税効果が得られます。

ただし、法人化する場合には、設立費用や社会保険への加入、法人住民税などの費用がかかるため、専門家に相談してから法人設立の判断をするようにしましょう。

不動産投資は節税にならないと言われる理由

上述の通り、不動産投資を行なっていると節税効果を得られます。それでは、なぜ、「不動産投資は節税にならない」と言われるのでしょうか。

ここでは、不動産投資は節税にならないと言われる理由について解説します。

不動産所得が赤字にならないと損益通算ができない

不動産投資における節税で、最も効果を得やすいのが「損益通算」です。不動産投資を始めた方であれば、誰もが利用できる減税方法でしょう。

ただし、損益通算が適用されるには、不動産投資によって得られる所得が「赤字」になる必要があります。つまり、不動産投資によって得られる収益がプラスになると、損益通算は適用されず、減税の効果が期待できなくなります。

このため、不動産投資は節税にならないと考えられるのでしょう。しかし、不動産投資を始めてしばらくの間は、諸費用や減価償却費がかかるため、赤字になる場合が多く、節税にならないとは言い切れません。

減価償却は耐用年数期間内に限られる

不動産投資の収益に減価償却費を計上すると、損益通算が適用されて節税効果が期待されることは上述の通りです。

減価償却費とは、投資用物件の購入額を建物の耐用年数で割り、その期ごとに費用として計上するための勘定科目です。減価償却費を計上できるのは、耐用年数内に限られてしまうため、節税にならないと言われる理由と考えられます。

確かに、減価償却費は耐用年数期間内に限られるため、それ以降の節税効果は薄まる可能性は高いと言えます。しかし、耐用年数期間内であれば、減価償却費の計上は可能であるため、一概に「節税できない」とは言い切れないでしょう。

不動産投資ローンの利息が減ることで「デッドクロス」になる

不動産投資ローンの元金返済額が減価償却費を上回ることをデッドクロスと言い、ローンの利息が減ることで発生します。

現金の返済方法を元利均等払いに設定している場合、1回目の返済額が最も高く、次第に返済額は減っていきます。減価償却費は経費として計上することができますが、元金の返済額は経費として計上することができないため、節税効果が望めなくなるのです。

デッドクロスの状態になると、確かに節税効果が望めなくなり、キャッシュフローが悪化します。そのため、デッドクロス状態にならないように対策を実施し、節税効果を得られるようにしなくてはいけません。

例えば、自己資金を増やして借入額を少なくする、耐用年数が長い物件を購入するなどが対策となります。

不動産投資における節税には落とし穴がある

不動産投資は、資産の構築だけでなく節税効果も得られる投資方法として人気がありますが、節税については注意しておくべき点があります。

ここでは、不動産投資を節税目的で行う場合の注意点について解説します。

節税だけを目的にすると赤字が大きくなる

節税だけを目的に不動産投資を行なった場合、節税よりも赤字額の方が大きくなってしまう可能性もあるため注意が必要です。

本来、不動産投資は家賃収入や売却益を得ることを目的とした投資方法です。家賃収入が増えることが見込まれれば、当然のことながら課税額も増えることになります。しかし、それが本来の不動産投資のあり方です。

損益通算を使って節税効果を得ようと考えている場合、その前提として不動産所得が赤字である必要があります。不動産投資で収益が黒字になってしまうと損益通算は使えません。

損益通算が使えるから赤字でも問題ないと考えて、利回りの低い物件ばかりを買っていると、ローンの返済を自己資金から持ち出さなくてはならなくなり、手元現金がなくなる可能性があります。

節税目的で始めた不動産投資によって、赤字が膨らんでしまい、生活が苦しくなっては意味がありません。不動産投資は本来、家賃収入や売却益を得て利益を出すことが目的であることを忘れないでください。

収入が低い場合には効果が限られる

不動産投資において節税可能な金額は、あくまでも所得税額の範囲に限られていることを考慮する必要があります。例えば、課税所得金額が2,000万円の方の場合、所得税・住民税として約524万円を税金として収めなくてはいけません。

年収2,000万の方が不動産投資を始めたことで、不動産所得で600万円の赤字を出した場合、損益通算を使うと納税額は約280万円と節税できる金額は大きくなります。

同様に、年収600万円の方の場合、納税額は約50万円です。不動産投資により200万円の赤字となった場合には納税額は約26万円となります。

このように、高額所得者の場合には税率が高いため、節税効果が高くなりますが、平均的な収入を得ている方にとっては、その効果は限定的だと考えられます。

平均的な収入を得ている方の場合は、節税効果を求めて不動産投資を行うよりも、収益や規模の拡大を目的として不動産投資を行うと良いでしょう。

融資の審査に影響を与えることがある

将来的に不動産投資の規模を拡大するために、物件を取得していこうと考えている方が、節税に取り組んでいる場合は注意が必要です。節税に取り組んでいることが、金融機関の融資審査に影響を与えることがあります。

損益通算を使うために、不動産所得が赤字続きになっていると、金融機関は事業で利益を出せていないと判断する可能性があります。このように判断された場合、融資審査に落ちてしまうかもしれません。

赤字の原因が減価償却であれば、現金支出をともなわないため、キャッシュフローが黒字となっていれば融資審査に影響はないと考えられます。しかし、キャッシュフローも赤字となっている場合、融資審査で不利になる可能性が高いでしょう。

不動産投資の目的は、長期にわたり家賃収入を得て、利益を出すことです。将来的に不動産投資の規模拡大を考えている方は、長期的な視点で節税にメリットがあるかどうかを判断する必要があります。

売却時の利益の税負担が増えることもある

節税のために投資用物件を購入したにもかかわらず、あまり節税効果を得ることができないために物件を売却するということもあるでしょう。しかし、売却のタイミングを間違えてしまうと、税負担が増えてしまうことがあるので注意が必要です。

不動産を売却して譲り渡した場合、譲渡所得税がかかります。譲渡所得とは、土地や建物、株式などの資産を譲渡することによって発生する所得です。

不動産投資において譲渡取得税がかかるのは売却時ですが、売却の時期によってかかる税率が異なるため注意が必要になります。

不動産投資を行うために購入した投資用物件を、5年以上の長期にわたって所有して売却する場合、長期譲渡所得となり、所得税15%・住民税5%が課せられます(令和19年までは復興特別取得税2.1%が課せられます)。

一方、投資用物件を5年以下という短期で売却してしまった場合、短期譲渡所得となるため、所得税30%・住民税9%が課せられるのです(令和19年までは長期譲渡取得同様、復興特別取得税2.1%が課せられます)。

このように、5年という期間を境に譲渡取得税率が変わり、短期譲渡取得の場合が長期譲渡取得より2倍近い税負担になります。

不動産投資の場合、出口戦略として物件の売却は必要となりますが、売却のタイミングによっては、税負担が増える可能性があることを念頭においておきましょう。

まとめ

「不動産投資は節税にならない」という意見は、さまざまなところで聞いたり、見かけたりするので不安になる方もおられるでしょう。実際のところは、不動産投資を行うことで節税効果を得られます。

しかし、不動産投資は、不動産経営によって利益を得るという本来の目的を見失ってはいけません。節税だけを目的に不動産投資を始めた場合、思わぬ不利益を被ることがあります。

不動産投資を行う際に節税について考えている場合は、税理士など、専門家に相談することもおすすめです。不動産投資の本来の目的を考慮しつつ、節税を行うことで不動産経営の面白さを実感できるのではないでしょうか。

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