不動産投資でフルローンは利用できる?メリット・デメリットや安全性について解説!
不動産投資では、不動産投資ローンを利用して始めるのが一般的で、頭金を用意するケースが大半です。
しかし、フルローンを利用すれば頭金を用意する必要がなく、初期費用の負担を大きく軽減できます。
そんなフルローンですが、メリットばかりに注目して利用してしまうと、予想外のリスクや問題を招く可能性があります。
この記事ではフルローンの概要と、不動産投資で利用する際のメリットとデメリットを解説します。
フルローン審査のポイントや、利用する際の注意点にも触れていますので、フルローンを安全に利用するために、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそもフルローンとは?
フルローンとは、投資物件の取得費用を全額ローンで賄う方法です。
不動産投資ローンを利用して物件を取得する場合、自己資金から取得費用の1~3割程度を頭金として支払うのが一般的です。
頭金を支払うことで借入金が少なくなり、月々の返済額が軽減されるほか、融資審査が通りやすくなるというメリットがあります。
一方、フルローンでは取得費用の全額を借り入れるため、頭金を用意する必要がありません。
そのため物件取得時の負担が大幅に軽減され、自己資金を温存しやすくなります。
ただし、金融機関にとっては融資するリスクが大きくなるため、その分だけ融資審査が厳しくなってしまいます。
不動産投資でのフルローンの利用は内容を把握し慎重に
結論からお伝えすると、不動産投資でのフルローンの利用は、メリット・デメリットを理解し計画的に利用することをお勧めします。
確かに頭金を用意する必要がない点は魅力的ではありますが、フルローンを安全に利用できるケースが限られているのが理由です。
利用するメリット・デメリットについてはこれから詳しくお伝えしますので、この記事を読みながらご自身でもフルローンの安全性について、ぜひ考えてみてください。
不動産投資でフルローンを利用するメリット
不動産投資でフルローンを利用する際の主なメリットは、以下の2つです。
- 自己資金を温存できる
- レバレッジ効果が期待できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自己資金を温存できる
フルローンを利用する最大のメリットの1つは、少ない自己資金で不動産投資を始められる点にあります。
繰り返しになりますが、不動産投資ローンを利用する際は一定の頭金を支払うのが一般的です。
そのため不動産投資では初期費用として、ある程度のまとまった自己資金が必要となります。
フルローンを利用する場合、この頭金を用意する必要がありません。
物件の取得費用を全額借り受ける形となるため、自己資金の消費を最小限に抑えられます。
そのため可能な限り自己資金の消費を抑えたい場合や、資金計画上の都合で自己資金を温存したい場合などに、有効な手段となるでしょう。
レバレッジ効果が期待できる
レバレッジ効果とは、少額の投資資金によって大きな利益が得られる投資効果を指す言葉です。
たとえば、毎月100の利益が得られる投資に対して10投資する場合と20投資する場合とでは、10投資したほうが得られる利益の割合が大きくなります。
フルローンを利用する場合、頭金を支払った場合と同じだけの利益を、頭金の負担なく得られる可能性があるため、フルローンを利用したほうが得られる利益の割合が高くなる可能性があるのです。
たとえば、利回り5%の物件を3,000万円で購入する場合を例に、具体的に考えてみましょう。
全額自己資金でこの物件を購入した場合、利回りが5%なので、3,000万円の投資に対して年間で得られる利益は150万円となります。
この物件をフルローンで購入したとすると、0円の投資に対して年間150万円が得られる計算となります。
もちろん月々の返済は必要になりますが、自己資金に対して得られる利益、という意味ではフルローンのほうが圧倒的に高いことが分かります。
これが、フルローンによって得られるレバレッジ効果です。
不動産投資でフルローンを利用するデメリット
一方、不動産投資でフルローンを利用する際の主なデメリットは、以下の5つです。
- 融資審査が厳しい
- 月々の返済負担が増える
- 金利上昇の影響が大きくなる
- デッドクロスになりやすい
- 物件を売却しにくくなる
それぞれ詳しく解説します。
審査が厳しい
フルローンを利用する場合、頭金を支払うケースよりも借入金額が大きくなるため、返済期間が長くなりやすくなります。その結果、金融機関にとってもリスクが大きくなり、審査が厳しくなる傾向があります。
金融機関と付き合いが長く、多額の資産を持ち合わせている方であれば、審査も通りやすくなる可能性があります。
しかし、審査では投資物件の収益性や資産価値も重要なポイントになるため、それらが十分に評価されない場合、審査に通らないことも考えられます。
そのため、フルローンを利用するには、高い信用力と入念な準備が欠かせません。
一部の条件を満たした限られた人のみが利用できるローンと言っても過言ではないでしょう。
月々の返済負担が増える
フルローンを利用すると、頭金を支払った場合に比べて借入金が多くなるため、月々の返済負担が大きくなります。
その結果、返済負担が利益圧迫し、わずかな空室が発生しただけで赤字に転じるリスクも考えられます。
予定していた収入が得られなくても、返済額は変わりません。
だからこそフルローンを利用する際は、通常よりも入念な資金計画が求められます。原状回復や修繕工事などの突発的な支出にも対応できるよう、十分な自己資金を用意しておくなど、具体的な対策が必要です。
金利上昇の影響が大きくなる
借入金が多いほど、金利が上昇した際の総返済額が大きくなり、結果として月々の返済負担も増加します。そのため、変動金利型のローンを利用する場合は、金利上昇によるリスクに注意が必要です。
このような金利変動による返済負担増加のリスクは、金利上昇リスクと呼ばれています。
一方、固定金利型のローンを利用すれば、金利上昇リスクを完全またはある程度回避できます。ただし、固定金利型は変動金利型に比べて金利が高めに設定されている傾向があるため、一長一短です。
また、金利が低下した場合には、固定金利型ではその恩恵を受けられない点にも留意する必要があります。
デッドクロスになりやすい
デッドクロスとは、物件の減価償却費よりも月々に返済するローンの元金が多くなってしまった状態を指す言葉です。
デッドクロスになってしまうと、減価償却による節税効果が元金返済で相殺されてしまうため、収益を圧迫してしまいます。
減価償却とは、物件の取得費用などの大きな支出を、一定期間に分割して経費として計上する仕組みです。
そのため、実際に現金を支払っているわけではないものの、減価償却費によって帳簿上の経費が増加するため、その分だけ課せられる税金が少なくなります。
一方、月々のローンの返済に関しては、利息分は経費として認められるものの、元金返済分は経費として認められません。
したがって、元金返済が多くなってしまうほど、実際に毎月現金を支払っているにもかかわらず、経費として認められない支出が増えてしまうのです。
このように元金返済分が減価償却費を上回ってしまうと、帳簿上の数字を超えて現金が失われてしまいます。
フルローンは借入金が多いため元金返済額も大きく、デッドクロスに陥ってしまう可能性が高くなるため、注意が必要です。
物件を売却しにくくなる
ローン返済中の物件を売却する場合、ローンの残債が売却金額を上回っている必要があります。
売却金額の方が多ければ、売却代金で残ったローンを完済できるためです。
逆に売却金額がローン残債を下回ってしまうと、売却ができなくなります。
この状態をオーバーローンと呼びます。
借入金が通常よりも多くなるフルローンは、このオーバーローン状態に陥りやすいと言えるでしょう。
オーバーローンの状態で物件を売却するためには、不足分を自己資金で賄う必要が出てきます。
出口戦略として物件の売却を検討している場合は、特に注意が必要です。
フルローンの審査でポイントとなる要素
フルローンの審査を通過するためには、具体的にどのような要素がポイントとなるのでしょうか?
年収の高さや安定性
住宅ローンなどと同様に、契約者の年収や収入の安定性、資産状況などが審査のポイントの1つとなります。
基本的に年収が高く、大企業などに勤めていて安定していると判断されるほど、融資は通りやすくなるでしょう。
営業などインセンティブが年収に大きく影響している場合は不安定と見なされ、審査に通りにくくなる可能性があるので注意してください。
物件の評価の高さ
購入したい物件の立地条件や収益性、築年数といった物件の評価も、審査における重要なポイントとなります。
どんなに契約者の信用力が高かったとしても、物件の収益力が見込めず評価できなければ、金融機関にとっては、返済が滞るリスクが高いと見なします。
入居率が高く安定した収益を上げている物件や、築年数が浅く耐用年数が長い物件ほど、審査が通りやすくなる傾向があります。
フルローンを利用したい場合は、できる限り優良物件を探すよう心がけましょう。
不動産投資の実績
複数の投資物件で安定した収益を上げ続けているなど、契約者が不動産投資の実績を持っている場合、審査に良い影響を与える傾向が見受けられます。
給与収入があまり高くなかったとしても、複数の不動産から多額の家賃収入を得ていれば、その分だけ返済能力が高いと判断される可能性が高いです。
投資で成功している実績があれば、今回の投資も成功する可能性が高いと判断されやすくなるでしょう。
共同担保の有無
共同担保とは、複数の不動産を担保に設定する方法です。
購入を予定している物件だけでは担保が足りないと判断される場合は、不足分を補うよう共同担保を設定すると、審査に通りやすくなります。
そのほか、融資金額を現状よりも増やしたい場合にも有効な手段です。
不動産投資によって担保に設定できる物件が複数存在する場合は、共同担保の設定も検討してみましょう。
ただし、共同担保を受け入れない金融機関もあるので注意してください。
不動産投資でフルローンを利用する際の注意点
実際にフルローンを利用する際は、いくつか注意すべきポイントがあります。
諸経費は借りられない
フルローンと聞くと、物件取得に必要なすべての費用が借りられると勘違いしてしまいがちですが、実際は仲介手数料など、諸経費については借り入れができません。
以下は、諸経費に含まれる代表的な費用です。
- 仲介手数料
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
- 司法書士への報酬(登記を依頼した場合)
- 火災保険料(地震保険料)
諸経費の金額は、物件取得費用の5〜10%程度かかるとされています。
これらについてはフルローンであっても、自己資金から支払う必要があるので注意してください。
キャッシュフローが悪化しやすい
すでにお伝えした通り、フルローンでは月々の返済額が大きくなりやすいほか、デッドクロスなども発生するリスクが増加し、キャッシュフローが悪化する可能性が高まります。
キャッシュフローの悪化とは、すなわち赤字です。
キャッシュフローが悪化した状態では収益が得られないだけでなく、自己資金から支出を補わなければならない場合もあります。
実際にフルローンの融資を受ける前に、フルローンでもある程度のキャッシュフローを維持できるかを確認しておくと、安心できるでしょう。
あらかじめ自己資金に余裕を持たせておくことも大切です。
借り換えや追加融資が難しくなる
不動産投資では、より金利の低いローンに借り換えや、買い増しを目的として追加融資を申し込むケースがあります。
しかし、フルローンで融資を受けている状態だと、借り換えや追加融資が難しくなる可能性が高くなります。
フルローンは金融機関にとってリスクが大きい融資であるため、借り換えはどうしても難しくなります。
また、追加融資を申し込む際も、すでにフルローンを抱えていると、返済負担が大きすぎると判断され、融資に通りにくくなることがあります。
フルローンを利用する際は、将来の借り換えや追加融資が難しくなる可能性をあらかじめ把握しておきましょう。
まとめ
フルローンを利用すれば最低限の自己資金で物件の購入が可能です。
しかし毎月の返済額が高額となるうえ、審査に通るのが難しく、気軽に誰でも組めるわけではありません。
不動産投資初心者の方はフルローンの利用の際は、メリット・デメリットを十分に理解し、計画を立てたうえで、挑戦してみましょう。
これから不動産投資を始める方は、ぜひ不動産に関するセミナーや塾に参加し、基礎知識を身に付けてから投資をおこなうことをお勧めします。