不動産投資における空室リスクとは?目安となる数値やリスク対策について解説
不動産投資において、常に念頭に置かなければならないのが空室率です。
空室からは家賃収入が得られないため、できる限り空室率が低い状態を維持する必要があります。
とはいえ、賃貸物件に空室はつきものです。
完全に空室をなくすのは不可能だからこそ、いかに適切な空室率を保てるかが重要になります。
この記事では、不動産投資における空室率について、意味合いや重要性、適切な空室率、空室率の計算方法などを解説します。
最後には具体的な空室リスク対策もご紹介するので、すでに不動産投資に取り組まれている方や、これから不動産投資を始める方は、ぜひ参考にしてください。
不動産投資における空室率の重要性
不動産投資で決して避けて通れないのが、空室問題です。
空室問題に適切にアプローチするためにも、空室率とはどのような意味を持つ数字なのか、不動産投資における空室率の重要性、適切な空室率の目安を確認していきましょう。
空室率とは?
空室率とは、その物件全体の部屋数に対して、空室が占める割合を示す値です。
たとえば、10部屋あるアパートのうち3部屋が空室だった場合の空室率は30%、5部屋が空室であれば50%となります。
このように、空室が多くなるほど空室率は高くなり、その結果、空室率が高いほど家賃収入が低下していると考えて良いでしょう。
なお空室率と対となる値に、入居率があります。
入居率は、物件全体の部屋数に対する入居済みの部屋が占める割合であるため、入居率と空室率を合計すると、必ず100%となります。
たとえば入居率が80%の物件の空室率は、20%です。
このように空室率は、入居率が分かれば簡単に逆算できます。
不動産投資において空室率が重要となる理由
不動産投資における主な収入源は、家賃収入です。
空室率が高くなるほど得られる家賃収入が少なくなり、その物件の収益性が低下してしまいます。
ローンを活用するケースが多い不動産投資では、利益が出ない期間が長引くほど、毎月の返済に支障をきたす可能性が高くなります。
そのため、不動産投資においては、いかに空室率を低く保てるかが安定した収入に直結していると言っても過言ではないでしょう。
また、物件の収益性を示す利回り(実質利回り)は、空室率が低いほど高くなります。
ローンを組む際の融資審査でも利回りは重要な判断材料の1つである点からも、重要性が伝わるのではないでしょうか。
とはいえ、実際には空室率を常にゼロに保ち続けることはほぼ不可能です。
たとえば、入居者が退去した後は原状回復の清掃や工事が必要で、その期間は空室が発生します。
また、新たな入居者がすぐに見つかるとは限らないため、一時的な空室の発生は避けられません。
では、具体的にどの程度の空室率を維持できれば経営が安定するのでしょうか?
不動産投資における適切な空室率の目安
不動産投資における適切な空室率は、5〜10%程度とされています。
基本的には空室率が20%を越えてしまうと、経営が苦しい状態だと考えてください。
これから物件を選ぶ場合は、物件の良し悪しや立地条件を確認するだけでなく、一定の空室が発生する前提で収支シミュレーションも行ってみましょう。
すでに物件を運用している場合は、普段から空室リスクを減らすための対策を心がけ、できる限り適切な空室率の維持を目指してください。
具体的な空室リスク対策については、本記事の最後で詳しく解説します。
不動産投資で役立つ空室率の計算方法
空室率が重要だからといって、現在の空室率を確認しているだけでは、不動産投資にはなかなか役立てられません。
大切なのは、1年を通しての空室率や、空室によってどの程度の損失が発生しているのか、という点です。
それらは計算方法を変えることで、簡単に確認ができます。
そこで、ここからは不動産投資で役立つ空室率の計算方法を3つ、ご紹介します。
時点空室率(現時点での空室率)
時点空室率とは、ある時点での空室率を表す値です。
計算式は以下の通りです。
時点空室率(%)= ある時点での空室数 ÷ 物件全体の室数
たとえば20室あるマンションのうち5室が空室だった場合、時点空室率は25%となります。
このように時点空室率は、ある時点での空室率を表しているに過ぎません。
そのため空室リスク対策の効果測定など、一部の用途以外での活用は難しいかと思います。
あくまでも、基本的な空室率の計算方法、と捉えておくのが良いでしょう。
稼働空室率(一定期間の空室率)
稼働空室率とは、一定期間の空室率を表す値です。
計算式は以下の通りです。
稼働空室率(%)=(空室数 × 空室期間)÷(物件全体の室数 × 計算する期間)
「空室期間」と「計算する期間」は月数でも日数でも構いません。
ただし、必ずどちらかに統一してください。
たとえば1年間のうち、20室あるマンションのうち5部屋が6ヶ月間(180日)空室だった場合、計算式は以下の通りとなります。
月数で計算する場合:(5 × 6)÷(20 × 12)= 12.5%
日数で計算する場合:(5 × 180)÷(20 × 365)= 12.3%
期間を加味した空室率が求められるため、1年を通しての空室率が確認できます。
物件の将来性を確認するためのシミュレーションや、経営状態の分析などにも活用できるでしょう。
賃料空室率(空室による年間の賃料損失)
賃料空室率とは、年間で得られた賃料を基準として空室率を表す値です。
計算式は以下の通りです。
賃料空室率(%)=(満室時の年間総賃料 - 実際の年間総賃料)÷ 満室時の年間総賃料
たとえば家賃7万5,000円の部屋が20室あるマンションで、そのうち5部屋が6ヶ月間空室だった場合、計算式は以下の通りとなります。
満室時の年間総賃料:1,800万円
実際の年間総賃料 :1,575万円
(1,800 - 1,575)÷ 1,800 = 12.5%
稼働空室率では室数を基準に空室率を求めますが、賃料空室率では賃料を基準として空室率を計算します。
そのため、部屋によって家賃が異なる場合は、賃料空室率を確認したほうが、より正確な空室状況を確認しやすくなるでしょう。
なお、計算する期間については、自由に設定できます。
たとえば2年間の空室率を求めたい場合は、「満室時の年間総賃料」を「満室時の2年間の総賃料」に、「実際の年間総賃料」を「実際の2年間の総賃料」に置き換えてください。
空室率が上がってしまう要因
空室率をできるだけ低く保つには、空室率が上がってしまう要因を把握しておく必要があります。
以下は、空室率が上がってしまう代表的な要因です。
- 賃貸需要の低下
- 競合物件の増加
- 地域の人口減少
それぞれ詳しく解説します。
賃貸需要の低下
周辺地域の賃貸需要が低下すると、自身の物件でも空室率が高くなりやすくなります。
たとえば、付近にあった大学キャンパスが移設したり、大手企業の工場が撤退してしたりすると、賃貸を必要とする人たちが少なくなります。
当然、入居者を募集しても見つかりにくくなるでしょう。
競合物件の増加
周辺に競合となる賃貸物件が多くなるほど、空室率は高くなりやすいです。
一般的に、築古の賃貸物件よりも新築物件や築浅物件の方が人気があります。
そのため、周辺に新築の賃貸物件が増加すると、それだけで空室が発生しやすくなるため、注意が必要です。
地域の人口減少
地域の人口が減少傾向にある場合も、空室率の上昇につながりやすいです。
たとえば、東京都の空室率は17.1%であるのに対し、年々人口が減少している栃木県と山梨県の空室率は31.8%、和歌山県は30.8%となっています。
このように地域の人口が減少傾向にあると、街の賃貸に住みたいと思う人よりも、街を離れたいと思う人のほうが多くなりやすく、結果として空室率が上がりやすくなります。
不動産投資における空室リスク対策
得られる家賃収入に直結してしまう空室リスクは、不動産投資における最大のリスクとも言われています。
空室をゼロにするのは不可能だからこそ、日頃からの空室リスク対策が重要です。
適切に対策できていれば、よりスムーズに空室を埋めやすくなるでしょう。
そこで、ここからは代表的な空室リスク対策をご紹介します。
ターゲットを見直す
どんなタイプの入居者に向けた賃貸物件にするのか、ターゲットを明確にするのは、空室率を低く抑えるためにも重要なポイントとなります。
たとえば、都心部に近い地域にあるワンルームマンションであれば、若者の単身者にアピールしやすいでしょう。
しかし、ファミリー層など、需要が少ない層に向けて入居者を募集してしまうと、入居希望者を集めるのが難しくなります。
現状の入居者や物件の状態、立地などを改めて確認し、ターゲットが適切に設定できているか見直してみてください。
ターゲットが適切であれば必要な施策も見出しやすくなり、空室率も自然と低下しやすくなるでしょう。
管理会社を見直す
物件の管理を不動産管理会社に委託している場合は、入居者募集や空室対策(客付け)に強い管理会社に切り替えるのも、方法の1つです。
管理会社にも人間と同じように、得意な業務、不得意な業務があります。
たとえば家賃の回収が得意な管理会社もあれば、入居者対応や建物の管理を得意としている管理会社も存在します。
もし委託中の会社が客付けをあまり得意としていないのであれば、空室対策に強い管理会社に切り替えるだけでも、空室率の改善が期待できるでしょう。
リフォームやリノベーションをおこなう
物件の築年数が古い場合は、リフォームやリノベーションによって内外装のデザインを大きく変えるのも方法の1つです。
ひと目でわかるほど劣化している物件は、それだけで入居者確保が難しくなってしまいます。
外壁やクロス、間取りなどをガラッとリノベーションして新築物件のような見栄えにできれば、空室率を改善しやすくなるでしょう。
ただし、大掛かりな工事になるほど費用も大きくなります。
まずはどの範囲まで手を加えるかを明確にしたうえで、複数の業者から見積もりを取り、実際の費用感を確認するのがお勧めです。
最新設備や人気の設備を導入する
空室リスクの対策として入居率を上げるのも大切ですが、既存の入居者にいかに長く住み続けてもらえるかも、同様に重要なポイントとなります。
既存の入居者の満足度や利便性を高める方法としては、最新設備や人気設備の導入が効果的です。
たとえば、若い世代や単身者向けの物件であれば、Wi-Fiなどのインターネット用の設備や、宅配ロッカーなどを設置すると喜ばれるでしょう。
単身女性やファミリーでの入居者が多い場合は、オートロックや防犯カメラ、TVモニター付きインターホンなど、セキュリティ面の需要が高くなる傾向があります。
このように、入居者やターゲット層に合った設備を導入すると、より空室リスクの低下に繋げやすくなるでしょう。
魅力的な設備の充実は、新たな入居者に対するアピールとしても効果的です。
募集条件を見直す
うまく入居者を確保できない場合には、家賃や礼金、敷金などの募集条件を見直してみるのも方法の1つです。
敷金や礼金を減らせば入居者の初期費用負担が減り、家賃を減らせば月々の負担が軽くなります。
近隣の相場よりも費用負担が高くなっている場合は、大きな効果が期待できるでしょう。
ほとんどコストを掛けずに実行できる対策ではありますが、物件の収益性に直結してしまう点に注意してください。
特に家賃については、1度減らすと値上げしづらくなる可能性が高いです。
物件や相場に見合った金額に修正するのは大切ですが、下げ過ぎてしまっては意味がありません。
家賃の修正は最後の手段と考え、できる限り他の施策を優先したほうが良いでしょう。
まとめ
賃貸物件の空室率は全国平均で約21%となってはいますが、5〜10%を維持しているケースも多く、いかに効果的な空室リスク対策を実施できているかに左右されます。
空室率の高止まりは、物件の資産価値にも影響を及ぼしかねません。
すでに不動産投資に取り組まれている方だけでなく、これから不動産投資を始める方も、空室率や空室リスクへの対策を常に念頭に置いて、物件を運用するよう心がけましょう。
また空室対策については、既に実践され効果が出ている大家さんが集う、大家塾やセミナー等で学ばれることをお勧めいたします。