不動産投資のランニングコストの目安は?内訳やコストを抑える方法を解説

最終更新日:2025年8月6日
  • 不動産投資で必要なランニングコストの目安はいくら?
  • 不動産投資のランニングコストには何が含まれるの?
  • 不動産投資でかかるランニングコストの削減方法を知りたい

アパート経営などの不動産投資を始めるとき、物件価格などの初期費用に目が行きがちですが、実際に物件を購入した後は物件の維持や運用のためにランニングコストがかかります。

ランニングコストの目安を細かく把握しておくと、突然の支出や空室率の増加にも、焦らず対応できるようになります。

この記事でわかること

  • 不動産投資でかかるランニングコストの目安とその内訳
  • 不動産投資で必要なランニングコストを抑える方法
  • 不動産投資で元を取るのにかかる年数の計算方法

不動産投資ランニングコストとその目安

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不動産投資のランニングコストとは、賃貸物件を維持するために必要な費用全般を指しています。

賃貸経営をするためには、まず物件を購入する必要がありますが、それだけで収益化できるわけではありません。

収益化を維持するために必要になるランニングコスト(維持費)の目安は、家賃収入の20〜30%といわれています。

ただし、購入する不動産によってランニングコストは変わります。

たとえば、購入した不動産が新築なら設備が新しいため費用はあまりかかりません。

しかし中古の不動産を購入したら、設備が老朽化していたり外壁などに不具合が生じやすかったり、修繕費用を新築より多めに見積もっておく必要があります。

家賃収入の30%がランニングコストと考えると、手元に入るのは残りの70%です。

不動産投資のランニングコスト内訳

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不動産投資にかかるランニングコストは家賃収入の20〜30%が目安ですが、その内訳は、以下のとおりです。

  • 管理委託費用
  • 保守点検・清掃費用
  • 建物の修繕費用
  • 修繕積立金
  • 入居者の募集
  • 共用部の水道光熱費
  • 損害保険料
  • 税金

それぞれの項目について、詳しく説明します。

管理委託費用

不動産投資をする場合、自分で建物の管理をするのは大変なため、管理会社に建物の管理を委託するのが一般的です。

管理委託費用は、どの業務内容を委託するかによって変動しますが、家賃収入の5%ほどになる場合が多いです。

つまり、毎月の家賃収入が30万円あれば、管理委託費用は15,000円ほどかかります。
管理会社に委託できるおもな業務は、以下のとおりです。

  • 家賃回収
  • 入居者対応
  • 建物清掃
  • 点検
  • 入居者募集(賃貸借契約の締結まで)
  • 警備や巡回 など

これらの業務のうち、何を依頼するべきかは、投資物件のグレードや広さ、賃料によって異なるでしょう。
委託する業務が多くなるほど、物件管理をする手間を省けるため、不動産投資を副業とするのであれば、うまく管理会社を活用するべきです。

ただし、質の悪い管理会社に任せっきりにすると、入居者からの不満が募り、空室率の増加につながります。

複数の管理会社の運営実績や評判などを比較すると、信頼できそうなところをみつけやすくなるでしょう。

保守点検・清掃費用

賃貸物件の安全性を担保するために、定期的な保守点検の作業は欠かせません。
費用の目安は、年間15万〜20万円ほどです。

分譲マンションのように部屋の一室のみを所有して、不動産投資の運用をおこなっている場合、管理会社にまとめて依頼できる場合もあります。

一方で、アパートなど一棟まるまる所有している場合、保守点検と清掃業務が必要です。
具体的に必要な点検内容は以下のとおりです。

  • 消防設備点検
  • 水道定期水質検査
  • 水道管理状況検査
  • 自家用電気工作物定期点検
  • エレベーター点検
  • 建築設備定期点検
  • 特定建築定期検査

消防法や建築基準の法律で、法定点検が義務付けられている項目も多くあります。
種類によって点検周期が異なるので、忘れずに依頼しましょう。

修繕費用

賃貸経営をするにあたり、修繕は必要不可欠です。
費用の目安は、突発的な修繕が8万〜15万円、経年劣化による修繕が80万〜120万円です。

退去の際にかかる原状回復費用や、設備不具合際の修理費用外壁塗装などにかかる大規模修繕費用といったさまざまな種類の修繕があり、急な修繕が必要になるケースも珍しくありません。

たとえば、冬場に給湯器が故障しお湯が使えなくなった場合、入居者が困るため早急に対応する必要があります。

不動産投資では、こういった突発的な修繕や大規模修繕に備えた、日頃からの修繕費用積み立てが必要です。

修繕積立金

修繕積立金とは、将来的に必要になる大規模修繕やリフォームのために、毎月修繕費用を積み立てるための費用です。

費用の目安は、家賃収入の約5%です。

分譲マンションの一室を所有して運用している場合、管理組合によって修繕費用が決められているので、指定された金額を支払いましょう。

一棟まるまる所有している場合、戸数や築年数、物件の老朽化度合いに応じて、計画的に積み立てておくと、金銭的な負担を軽減できます。

入居者の募集費用

入居者がいなければ家賃収入は得られません。

購入した物件に空室があれば管理会社に入居者の募集を依頼する必要があり、その際に、入居者の募集をする際の広告宣伝費や仲介手数料などがランニングコストとしてかかります。

ワンルームマンションなどの単身者向けの不動産は、入居期間が短めで入退去にともなう募集費用が高くなりがちです。

一方、ファミリー向けの不動産は入居期間が長い場合が多いため、入居者の募集費用は単身者向けの不動産と比べると安くなる傾向があります。

共用部の水道光熱費

マンションやアパートの共用部分(エントランス、廊下、階段、エレベーターなど)では、水道光熱費が発生します。

費用の目安は、区分所有マンションであれば管理費として毎月1万〜2万円ほど、アパートやマンションの一棟持ちであれば年間10万円ほどです。

物件を購入する前に、不動産会社や売主に水道光熱費の管理費や年間費を確認しておくと、ランニングコストの目安を把握できます。

極端に水道光熱費の高い物件は、ランニングコストがかかる点を理解したうえで、購入を見送るべきか検討しましょう。

損害保険料

損害保険への加入は法律で義務付けられてはいませんが、万が一のために火災保険には加入しておくといいでしょう。

火災保険のおもな補償範囲は、以下のとおりです。

  • 火災
  • 落雷
  • 風災、雹災、雪災
  • 水災
  • 水漏れ
  • 不測・突発的な事故

火災保険といっても、火災以外の自然災害が補償範囲に含まれているので、万が一の物件トラブルに備えて加入したほうが安心です。

なお、地震によって発生した損害は火災保険の対象外で、地震を原因とする火災などは地震保険への加入が必要です。

地震保険は、火災保険に加入との併用しかできず、単独での加入は受け付けていません。
費用の目安は、火災保険で年間3万〜5万円、地震保険は火災保険の約30〜50%です。

税金

ランニングコストとしてかかる税金は3つあります。

まずは固定資産税で、標準税率1.4%で市町村によって異なります。

次に都市計画税で、不動産評価額の0.3%が徴収されます。

最後は所得税と住民税で、家賃収入の額によって税額は変わるため、一概にいくらとは言えません。

どれも年に一度納税する義務があり、納税用の資金を忘れずに準備しておく必要があります。 

不動産投資のランニングコストを抑えるポイント

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不動産投資の利回りを高くする方法として、ランニングコストの削減が効果的です。

しかし、ランニングコストの安さに注力しすぎると、将来的に損害が生じるリスクもあるので、適材適所での判断が求められます。

ここでは、不動産投資のランニングコストを抑えるためのポイントについて解説します。

管理会社の費用を見直す

不動産投資をする多くの方が利用する管理会社は、会社やサポート内容によって管理費用が大きく異なります。

毎月発生するランニングコストが高いと感じているのであれば、まずは管理会社にいくら支払っているのかを見直してみてください。

管理会社に依頼できるおもな業務内容は、以下のとおりです。

  • 家賃回収:賃料の入金状況と滞納者への催促
  • 入居者対応:クレームや問い合わせに応答
  • 建物清掃:共有スペースの掃除
  • 点検:消防設備など

自宅と投資物件の距離が近ければ、管理会社に任せずに済む業務も出てくるでしょう。

入居者対応に関しては即時対応が求められる業務であるため、別に仕事をしていたりプライベートで忙しかったりするのであれば、管理会社に任せたほうが安心です。

負担にならない範囲で業務委託の内容を減らすと、毎月のランニングコストを削減できます。

修繕や設備交換を最小限にする

経年劣化による修繕や設備交換をする際には、まとまった費用がかかりますが、無駄な出費を防げる項目がないかを確認しましょう。

ただし、老朽化や汚れが目立つ状態を放置すると、入居率の低下につながるため、優先順位を決めて物件を良好に維持する必要があります。

修繕や設備交換をするにあたって、優先するべき箇所は、以下のとおりです。

  • 屋根
  • 外壁
  • フローリング
  • 壁紙
  • キッチン
  • 浴室
  • トイレ

屋根と外壁の老朽化は、物件の腐食や雨漏りの原因になるため、不具合や劣化を感じたらどこよりも先に工事をするべきです。

続いて、内装や設備に関しては、入居者が変わるタイミングで経年劣化や不具合の可能性がないかを確認します。

目立った美観の欠如や設備不良がなければ、とくにリフォームなどで手を加える必要はありません。
必要以上の修繕や設備交換は、かかった費用を家賃で回収できなければ収支を悪化させる原因になってしまうからです。

修繕や設備交換をする際には、入居者募集に影響するなどの優先順位と家賃収入とのバランスを考えると、ランニングコストを削減できます。

定期点検を徹底する

定期点検を徹底して、物件の状態をリアルタイムで把握すれば、小さな不具合が発生した時点で早期発見・修理が可能です。

たとえば屋根や外壁は、明らかな雨漏り、ひび割れなどが発生する前の色褪せやチョーキングの症状で対処すれば、内部まで腐食が進まずに済みます。

また、エレベーターや電気設備は、完全に故障すると取り替え作業が必要になりますが、不具合の状態を発見できれば修理で対処できます。

このように定期点検で早期発見できれば、修繕費用の削減に効果的です。

入居者を自分で探す

不動産会社に入居者の募集を依頼すると、広告宣伝費と仲介手数料がかかります。

そこで、インターネットサイトやSNS、家族や知人を通じて、物件の入居者を探せれば、不動産会社への仲介手数料を節約できます。

インターネット広告を利用する場合、広告宣伝費はかかりますが、需要を見ながらいくらかけるべきか調整できるため、支出を最小限に抑えられるでしょう。

入居者を自分でみつけたら、自分たちで賃貸借契約を締結する必要があります。
必要書類の収集や作成に不備があったり、物件に関する伝達ミスがあると、あとからトラブルになるリスクがあるため、気を付けましょう。

賃貸借契約書をゼロから作成する自信のない方は、国土交通省のサイトに掲載されている雛形を参考にできます。
やや専門性が高くてリスクはありますが、不動産投資の学びになるので、これからも事業の継続・拡大を検討するのであれば、自分で挑戦してみてもよいでしょう。

経費の計上漏れをなくして確定申告をする

確定申告では、ランニングコストのうち経費として扱える費用の計上漏れをなくすと納税負担を軽減できます。

日々のランニングコストを削減できるわけではありませんが、年単位でみたときに課税額が減額されれば、出費を抑えられます。

多くの方が見落としがちな経費計上できるランニングコストは、以下のとおりです。

  • 減価償却費(建物価格を法定耐用年数で分割した費用)
  • 交通費(内覧案内や清掃、点検のためにかかるものすべて)
  • 交際費(不動産会社や入居者募集時の打ち合わせのための飲食代など)

このように、不動産投資の業務に関わる費用は、まとめて計上できます。

なお、所得税や住民税、ローン元金、ローンの利息は、経費として計上できません。

経費として認められていない項目を計上して確定申告で申請してしまうと、脱税の疑惑がかけられてしまうため、注意が必要です。
費用はかかりますが、最初のうちは税理士に監修してもらい、慣れてきたら自分で確定申告をすると、手続きのミスを防げます。

ランニングコスト以外の注意点

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不動産投資では、初期投資のほかにランニングコストの目安を知る点が重要であるとお伝えしましたが、収益性を高く維持するためには、プラスアルファの考慮も必要です。

ここでは、ランニングコスト以外で投資家が気を付けるべきポイントを解説します。

金利の変動による返済負担

金利には、利率が変動しない固定金利と、経済状況によって利率の変動する変動金利の2種類があります。

不動産投資の融資では、変動金利が適用されるケースが多いですが、金利の変動によって「毎月の返済額」と「総返済額」が変わる可能性があります。

近年はマイナス金利が続いているため、低金利となっていますが、将来的に金利が高騰すると想定外の負債が発生するため、注意が必要です。

融資を受ける際には、将来的に利率が上昇するリスクを想定したうえで、借入額や返済期間、金利タイプを選択しましょう。

自然災害による損失

不動産のような財産は、自然災害の被害に遭うリスクをともないます。

地震や台風、集中豪雨など、地域によって自然災害の発生率は異なるので、万が一に備えた火災保険と地震保険への加入は欠かせません。

また、物件選びをする際には、ハザードマップから自然災害のリスクがないエリアを選ぶと、被災を回避できる可能性が高まります。

不動産投資で元が取れるまで何年かかる?

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一般的に、不動産投資で元を取る目安は5〜10年です。

なぜなら、1〜2年といった短期間では家賃収入が見込めず、20〜30年経つと売却額が予想を下回る可能性が高いためです。

また、不動産の売却時には譲渡税の支払いが必要なケースもあり、税率が変わる5年以降が目安となります。

まとめ

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不動産投資でかかるランニングコストの目安は、家賃収入の20〜30%です。

賃貸経営での収益性を維持するために必要な出費がある一方で、手間をかければ節約できる費用もあります。

はじめての不動産投資では専門家のアドバイスをもらいながら、経営に慣れてきたら管理や確定申告の手続きを自分でおこない、ランニングコストの削減を目指してもよいでしょう。

また、不動産投資は物件を買って貸すだけと思われがちですが、実際には融資や税金、空室対策など、幅広い知識と判断が求められます。
塾や会などに参加する事で、基礎から実践的な内容まで体系的に学べるほか、講師や仲間との交流を通じて、リアルな事例や経験談を吸収することができます。
また、一人では気づけないリスクや改善点も、客観的なアドバイスによって早期に気づけるのも大きなメリットです。
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