不動産投資における金利上昇リスクとは?発生後の対処法と事前対策も解説

最終更新日:2024年5月8日
  • 不動産投資に興味がある
  • 不動産投資と金利の関係がわからない
  • 金利上昇リスクが発生したらどうなるのか
  • 金利上昇リスクを回避できるのか

ここでは、不動産投資における金利との関わりについて知識を深めたい方へ、金利上昇リスクとは何かのほか、リスク発生後の対処法やリスクを軽減するための対策を解説します。

 この記事でわかること

  • 不動産投資における金利との関わり
  • 金利上昇リスクが発生したときの対処法
  • 金利上昇リスクを軽減するための対策

不動産投資における金利上昇リスクとは

老後を不自由なく暮らせるようにする目的や子どもの将来のために、不動産投資を考える方が増えています。

不動産投資を始めるのに物件を購入する際には、現金での一括購入のほか金融機関などのローンが利用可能です。

ここでは、ローンを利用した場合の金利の上昇がもたらす不動産投資におけるリスクを解説します。

不動産投資ローンの主流は変動金利

不動産投資におけるローンの金利は、固定金利と変動金利の2つがあり、多くの方が固定金利よりも金利が低い変動金利を利用しています。

変動金利は、毎年4月と10月に利率が見直され金利が変動します。

変動金利の利率は上下するため、固定金利を上回るケースが考えられますが、変動金利が固定金利を上回ることは長期にわたって発生していません。

これは、日本銀行により実施されてきた低金利政策の影響と考えられます。

これまでは多くの方が変動金利を選択して低金利の恩恵を受けてきましたが、変動金利が有利な状況が引き続き継続すると保障されているわけではありません。

諸外国では金利の上昇傾向がみられるようになっており、日本においても金利が引き上げられる可能性があるので、この先ローン金利を選択する際は注意が必要です。

金利が上昇する原因と影響

金融機関は独自に金利を設定しており、主に景気と物価、為替相場の3つの要素が変動金利の上下に関係しています。

景気が良くなると消費者の購買意欲が高まる傾向があり、これと比例して物価は上昇しやすくなります。

また、物価の急激な上昇が起こると日本銀行が対策をおこなう流れがあり、先ごろ公表されたマイナス金利政策の解除は、この影響もあるのでしょう。

さらに、日本では輸出入が盛んにおこなわれているので、為替相場の変動が国内の景気に影響を与え金利変動につながっていきます。

日本では、1999年に日本銀行がゼロ金利政策を導入してから、これまで20年以上も低金利の水準が維持されてきました。

しかし、国債金利は上昇しており、それに追従するように固定金利も上昇しています。

長年続いたマイナス金利政策の解除が公表されており、変動金利も上昇を否定できない状況です。

変動金利の利率が上昇すると、自動的にローンの返済額が増えます。

返済額が増えると家賃収入で返済しきれず、返済を自己負担する必要があるなどの影響が懸念されます。

不動産に対する金利の影響

金利上昇に伴ってローンの返済額が増えると、不動産投資において大きな影響を及ぼします。

不動産投資ローンにおける金利は、住宅ローンよりも高い傾向があります。

不動産投資では、必要経費を家賃収入で賄って収益を上げるのが一般的で、ローンの返済額は必要経費の一部です。

家賃収入よりも必要経費が多くなってしまうと、差額を埋めるために手出しが必要になるかもしれません。

また、賃貸物件の空室や家賃滞納、事件事故の増加などのリスクも高まります。

入居者を確保できない場合には、家賃を値下げしなければならない場合もあるでしょう。

さらに、金利上昇によりローンの返済額が増えるのに伴い、不動産の取得を考えている方が購入を見送る可能性が考えられます。

近年は低金利が続いてきた影響により不動産の購入意欲が高く、不動産価格は上昇傾向で推移してきました。

不動産の購入意欲が減少して物件が売れにくくなると、不動産価格が下落に転じてしまうでしょう。

こうして、やがて資産価値が下がるのも金利上昇がもたらす影響の1つです。

金利変動の見込み

米国では、新型コロナウイルスの感染拡大が影響して経済が低迷していましたが、回復が進み金利が大幅に上昇しています。

米国で金利上昇が起こると、日本でも金利が上昇するのが従来の流れです。

また、ウクライナにおける危機的な状況やイスラエル・パレスチナ問題などの世界情勢も日本の経済に影響を与えており、原油などの高騰に伴い物価が上昇しています。

日本銀行がマイナス金利政策を解除するのは、この点も大きく影響しているでしょう。

このように、不動産投資ローンにおける金利上昇の可能性は高まっている状況にあります。

金利上昇リスク発生後の対処法

不動産投資ローンの金利が上昇したときにリスクを軽減する方法があります。

ここでは4つの対処法を紹介するので、万が一の場合に備えて今のうちに把握しておきましょう。

借り換え

不動産投資ローンは金融機関ごとに金利が異なるので、現在のローンよりも金利が低いローンに借り換えると毎月の利息を抑えられます。

そのため、それぞれの金融機関における金利を事前に比較しておくと参考になるでしょう。

また、利用している不動産投資ローンに5年ルールや1.25倍ルールが設定されていない場合には、それらのルールが設定されているものに借り換えるのも1つの方法です。

5年ルールとは、返済額の見直しを5年ごとにおこなうもので、金利が変動しても5年間は返済額が変わりません。

1.25倍ルールは、5年ごとの見直しによって返済額が増える場合でも上限が1.25倍とルール化されていて、どちらのルールも債務者にとって有利なものです。

なお、借り換えには手数料がかかり、数十万円が必要になるケースもあります。

借り換える際は、利息の軽減効果と手数料とを比較したうえで慎重に判断してください。

繰り上げ償還

手元に残っている自己資金などを活用して繰り上げ償還により残債を減らすと、月々に支払う利息が減るのに伴い金利上昇によるダメージを軽減できます。

ただし、金利の上昇は空室や家賃の滞納など他のリスクも発生させかねません。

さまざまなリスクが発生するときに備えて、できるだけの手元資金を残しておく必要があるので、無理に繰り上げ償還しないよう注意しましょう。

固定金利への切り替え

不動産投資ローンを変動金利から固定金利に切り替えるのも1つの対処法です。

固定金利は金利が変動しないため金利上昇によるリスクを回避でき、精神的な不安から解放されます。

ただし、金利の動向を予想するのは難しく、さまざまな情報を分析するのが大切なポイントです。

この対処法は、変動金利が固定金利を上回ると確実に予想できた場合における1つの選択肢として考えておきましょう。

物件の売却

不動産を売却して、不動産投資ローンを完済する方法もあります。

不動産の価格は、金利上昇により即座に下落するのではなく徐々に下落に転じる傾向があるため、すぐに売却に取り組むと金利上昇の影響を軽減できます。

売却額が残債よりも多い場合には自己資金を使わずに済み、物価上昇の影響などにより不動産の評価が高まっていると思いがけない高値で売却できるかもしれません。

売却額と残債を比較したうえで、物件を引き続き所有するリスクや自己資金の状況などを考慮して判断しましょう。

なお、売却するときには譲渡所得税や登録免許税がかかる点にも注意してください。

不動産投資ローンの金利上昇リスクを軽減する事前対策

不動産投資でローンを組んでいる多くの方が変動金利を選択し、今日まで低金利の恩恵を享受してきました。

これから不動産投資を始める方は、金利上昇のリスクに備えてローンの返済計画などを十分に検討する必要があるでしょう。

ここでは、金利上昇リスクを軽減するため、不動産投資ローンを利用する際の基本的な対策を説明します。

自己資金の確保

不動産投資では物件を購入する際に多額の頭金を入れる方法もありますが、金利の上昇に備えて、ある程度の自己資金を手元に残すのも大切なポイントです。

変動金利を選択する以上、さまざまなリスクへ対応できるようにしておく必要があります。

急な利上げを受けても焦らずに対処でき、金利以外の突発的な問題が発生しても課題を解決できる状況を維持しておくと、金利上昇によるリスクを最小限に抑えられるでしょう。

不動産投資ローンの選択

月々の返済額を抑えるためには、低金利の不動産投資ローンを利用できる金融機関を選択するのが重要になります。

返済総額が100万円以上も変わるケースがあるほど、金利の違いは大きなポイントです。

審査の通りやすさも意識しなければならないので、複数の金融機関を比較してみましょう。

メガバンクのほか地方銀行や信用金庫、信用組合など多くの金融機関が不動産投資向けのローンを取り扱っています。

そのなかから、条件にあった金融機関を選択してください。

なお、住宅ローンについては全期間固定金利のフラット35などの商品もありますが、不動産投資ローンでは30年などの長期固定金利を用意している金融機関は少ないでしょう。

一方で、日本政策金融公庫は固定金利しかありませんが、低金利の融資承認が下りたときには返済計画が立てやすくなるので問い合わせてみるのもいいでしょう。

返済期間を長期化

不動産投資ローンを利用するときに返済期間を長く設定しておくと、月々の返済額が減るので資金繰りが楽になります。

ローンを組んでからでも返済期間を短くするのは可能ですが、長くするのは認められないのが一般的です。

このため、返済期間を長く設定しておいて、自己資金などに余裕が出てきたときに繰り上げ償還などにより返済期間を短くする選択肢を残しておくのが得策です。

ローンの完済を早期に終わらせたいと考える方もいるでしょう。

しかし、月々の返済額が日々の生活を圧迫しない程度にとどめておくと、金利上昇リスクの軽減に役立ちます。

まとめ

先行きに不安がある年金制度などの状況もあり、不動産投資が注目されています。

これまで不動産投資ローンを利用する場合には、金利が低い変動金利を選択するのが一般的でしたが、今後は固定金利よりも金利が高くなる可能性があります。

これから不動産投資を始める方は、金利上昇のリスクを最小限に抑えるためにこの記事で紹介した対策で備えましょう。

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