不動産投資に宅建の資格は必要か?不動産投資と宅建資格の関係性や資格を持つメリットを解説!
不動産業界において、最もメジャーな資格として知られているのが宅地建物取引士(宅建)です。不動産に関する専門的な知識が得られるため、不動産投資を始めるにあたり、資格取得を目指している方もいるのではないでしょうか。
しかし、宅建資格は本当に不動産投資に役立つのでしょうか。本記事では、不動産投資における宅建資格取得の実情や資格が必要になるケース、取得するメリットなどを解説します。
不動産投資を始める前に、資格を取得するべきかどうか迷っている方は参考にしてください。
目次
宅地建物取引士(宅建)とは
宅地建物取引士(宅建)とは、簡単に説明すると「不動産取引の専門家」となります。宅地や建物などの取引をスムーズに進めるための資格制度です。不動産取引におけるトラブルは、全国各地で発生しているため、宅建士は不動産取引に必要不可欠な存在となっています。
また、宅建士にしか行うことができない独占業務(重要事項の説明、35条書面への記名、37条書面への記名)があるため、不動産業界では非常に重宝される資格です。
宅建の資格を取得し、宅建士になるためには試験に合格するだけではなく、資格を取得した上で登録申請を行い、宅建士証明の交付を受ける必要があるので注意してください。
不動産投資に宅建の資格は必要か
不動産業界において重要な役割を果たす宅建資格ですので、不動産投資にも役立つと考えて資格取得を目指そうと考える方が多い傾向にあります。
不動産取引に関する専門的な知識が身に付くため、不動産投資を始める際に有用に思われます。実際、宅建資格は不動産投資を始める際に必要なのでしょうか。
通常の不動産投資には宅建資格は必要がない
結論から申し上げると、基本的に不動産投資に宅建資格は必要ありません。
不動産取引の実務を行う際には、宅建は重要な資格です。しかし、家賃収入を得ることを目的とする不動産投資の場合、直接的な関わりがないのが実情です。
宅建資格は、宅地や建物の売買、賃貸物件や売買物件の仲介・代理など、不動産取引についての知識を得ることができます。その一方、不動産投資に必要な経営や資金繰りなどの知識について、詳細に学べるわけではありません。
後で詳しく解説しますが、宅建資格を取得しようとした場合、時間とコストがかかることになります。また、資格勉強中は優良物件を購入する機会を失う可能性があることも考慮しなくてはいけません。優良物件購入の機会を逃してしまうのは、損失と言っても過言ではないため、注意が必要です。
不動産投資において宅建資格が必要になるケース
不動産投資は、基本的に宅建資格は必要ありません。しかし、例外として宅建資格が必要になるケースがあります。
免許のない者が宅地建物取引業を営むことは、宅地建物取引業法で禁止されています。つまり、不動産投資において、宅地建物取引業に当たる行為を行う際には宅建資格が必要です。
以下で、どのようなケースが宅地建物取引業に該当するか解説します。
反復継続性がある取引行為
宅地建物取引業に該当するかどうかの要素として、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運営の考え方」において、「反復継続性のある取引」が挙げられています。
短期間で何度も購入と売却を繰り返し行なっていると、取引に反復継続性があると判断される可能性が高いと言えるでしょう。また、複数の人に対して販売することを目的とする行為(土地を区画に分けて売却するなど)も反復継続性があると判断される可能性が高まります。
家賃収入を目的とした不動産投資では、宅建資格は必要ありませんが、短期間で売買を繰り返して利益を得ようとする場合は、宅建資格が必要です。
事業性が高いと考えられる取引
国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運営の考え方」では、反復継続性だけでなく、事業性が高いと考えられる場合も宅地建物取引業に該当するかどうかを判断する要素としています。
例えば、「転売するために取得した物件の取引」や「自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするもの」が、事業性が高いと判断されます。
以上のように、反復継続性だけでなく、物件の取引経緯や取引容態によって、事業性が高いと判断される取引を行うケースは宅建資格が必要です。
不動産投資で宅建を取得するメリット4選
宅地建物取引業に該当するような不動産投資を行う場合、宅建資格の取得は絶対条件です。
先ほどは、宅建資格は経営や管理の知識を詳細に学べないと述べました。しかし、一般的な不動産投資の場合にも、宅建資格を取得するメリットはあります。
以下では、一般的な不動産投資で宅建資格を取得するメリットを4つ厳選し、解説します。
専門的な知識を得られるため物件選びの判断力がつく
宅建資格を取得することで、宅建業法だけでなく、土地及び建物についての各種法令上の制限、民法、借地借家法などの法知識を得ることができます。
収益物件の販売図面を見て、建築の制限や土地利用の規制を把握し、物件の価値を推測して選定する際の判断基準とすることも可能です。
また、不動産投資の世界では、パンフレットに専門用語が記載されていることや専門用語で話が進められるケースが多くあります。そのようなとき、宅建資格を取得していれば専門用語が出てきても戸惑うことがなくなるでしょう。さらに、デメリットも理解することができるため、物件の良し悪しが判断できるようになると考えられます。
ときには、一度話を聞いた不動産投資の営業マンから、昼夜を問わない勧誘があることも考えられます。宅建資格を保有していることを伝え、宅建業法違反であることを申し添えることで、対処が可能です。
重要事項説明書の内容を理解することができる
宅建資格を取得することで、物件に関する法令上の制限などだけでなく、売買契約や賃貸借契約の内容などの知識を身に付けることが可能です。
不動産を購入する場合、重要事項説明を必ず行わなければならないことが決められています。その際には、重要事項説明書が発行されますが、宅建資格を取得しておけば、その内容をより深く理解することが可能です。
もし、宅建資格を取得していない場合、理解できないところは聞き流してしまうことや、不利な項目が設定されていたとしても気付かないかもしれません。重要事項説明書に関して、しっかりとした知識を持っていれば、トラブル回避にもつながります。
重要事項説明書には、建ぺい率や抵当権などが記載されていることがあります。その他、権利関係についての記載や法令上の制限が記載されていることもあるので、宅建資格を取得していれば、これらの知識をいかして契約にのぞめるでしょう。
取引相手や金融機関の信用度がアップする
不動産取引を個人で行う場合、信用度の面においては法人と比較すると、どうしても劣ってしまいます。
そこで、宅建資格を取得することで取引相手の信用度を向上させる効果が期待できます。宅建資格を取得することで、不動産投資に真剣に取り組もうとしていることが伝わるため、取引相手の信頼を勝ち取ることができるでしょう。また、専門的な知識を収めた証明にもなるため、交渉時の発言に重みが出て、信用度の向上が見込めます。
金融機関で資金を調達する際にも、宅建資格が役立つことが考えられます。宅建資格は、土地や建物に関する法令上の規制や権利関係、契約関係の知識があることの証明にもなるため、金融機関の信用度を向上させることができるでしょう。融資の際には、これらの知識を収めていることが属性評価の対象となり、融資の審査において有利に働く可能性があります。
不動産業者への転職や独立ができる
宅建資格は、不動産売買はもちろん賃貸でも欠かせないため、不動産業界への転職の際には大きなメリットになります。不動産業界で働きながら、現場に出て不動産投資の知識を見に付けることもできますし、不動産の最新情報を蓄積し、副業として不動産投資に取り組むなど、さまざまな選択肢を取ることが可能です。
また、宅建資格を取得することで、宅地建物取引業者として独立することもできます。副業として行なっていた不動産投資の規模が大きくなった場合、事業性の高い取引を行っていると判断される可能性もあります。その際に、宅建資格を取得しておけば、法律に抵触することなく不動産投資を行うことが可能です。
さらに、宅地建物取引業者として独立することで、他の収益物件を紹介して仲介手数料を受け取れるなど、収入を得る選択肢の幅も広がります。
不動産投資において宅建を取得する際のデメリット(注意点)
宅建資格を取得するメリットは、上述のとおりさまざまです。その一方でデメリットや注意点があります。
以下では、不動産投資において宅建資格を取得する際のデメリットや注意点を解説します。
時間の確保が難しい
宅建資格を取得するまでには、勉強のために時間を確保しなければいけません。
一般的に宅建資格を取得するために必要な勉強時間は、200時間〜300時間とされています。独学や資格スクールに通う、通信教育など、勉強方法はさまざまですが、仕事をしながら勉強時間を確保することは簡単ではありません。副業として不動産投資を行なっている方の場合、投資自体の勉強も同時進行で行う必要があります。
宅建資格を取得しようと考えた場合、時間が確保できるかどうかを確認しておきましょう。
お金がかかる
先ほど述べたように、宅建資格取得のためのメジャーな勉強方法は、独学、資格スクール、通信教育です。どの勉強方法を選ぶにしても、ある程度の費用が必要になります。
独学の場合、参考書や問題集などを購入する必要がありますし、合格率を高めようと考えた場合、複数の参考書が必要になることもあるでしょう。
資格スクールや通信教育の場合、会社によって異なりますが一定のまとまった費用が必要です。講師による質疑応答や模擬試験の添削など、合格へのサービスが手厚ければ手厚いほど、費用は高くなる傾向にあります。
事前に費用を把握しておき、不動産投資への先行投資として支出できる範囲の費用かを検討してください。
合格率が低い
宅建資格は、毎年20万人前後が受験する人気の国家資格です。合格点は一律に設定されておらず、50点満点中、34点〜38点が合格の目安となっています。
受験科目は「宅建業法」「権利関係(民法など)」「法令上の制限」「税・その他」の4科目です。これらの科目をしっかり勉強した場合でも、例年の合格率は15%〜18%を推移しており、必ず合格できるとは限りません。
本業が忙しい方や、不動産投資規模の拡大をあまり考えていない方にとっては、資格を取得する重要度が低い場合もあるので、しっかりと検討しましょう。
まとめ
基本的に、不動産投資を行う場合、宅建資格を取得する必要はありません。しかし、不動産投資で売却益を目的として継続性のある取引を行う方や、規模を拡大して事業性の高い取引を行おうと考えている方は、資格を取得する必要があります。
宅建資格は、不動産投資に直接的な関係はありませんが、取得しておくことでさまざまなメリットを得ることが可能です。そのため、取得しておいて損はないと言えるでしょう。
ただし、時間の確保が難しかったり、費用がかかったり、合格率が低いなど、デメリットや注意点もあります。
宅建資格取得を考えている方は、自分自身の不動産投資の目的や本業の状況を見極めながら検討することをおすすめします。