不動産ファンドの仕組みや特徴は?メリットや向いている人の特徴も解説

最終更新日:2024年8月4日

不動産投資を検討しているものの、「なかなか現物の不動産を購入するのはハードルが高いな」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういった方は、不動産ファンドを活用するのも一つの手です。

 

不動産ファンドとは、投資家から集めた資金をまとめて不動産で運用し、得られた収益を出資額に応じて配分する仕組みです。

 

こちらの記事では、不動産ファンドの仕組みや特徴、メリット・デメリットなどを解説します。

 

不動産ファンドとは

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不動産ファンドとは、運用会社が多くの投資家からお金を集め、そのお金を使って不動産を購入・運用する仕組みです。個人の投資額は少額でも、多くの投資家が出資することで多くの不動産へ投資できます。

 

運用会社が、投資家に代わって不動産の購入や運用、売却などを行ってくれる点が特徴です。得られた収益(家賃収入や売却益)は投資家に分配され、個人投資家の負担を軽減できるメリットがあります。

 

つまり、不動産ファンドは個人が直接不動産を購入するよりも、手軽に不動産投資を始められる方法です。また、1つのファンドで複数の物件に投資できるため、リスクを分散させることも可能です。

 

不動産ファンドの種類

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不動産ファンドには、大きく3種類があります。それぞれどのような特徴があるのか理解し、自分にとって有用な存在か確認してみてください。

 

以下で、それぞれ特徴を解説します。

 

REIT

 

REITとは不動産投資信託のことです。資産運用会社が投資家から資金を集めて不動産を購入し、賃貸収益や売却益を得る仕組みです。

 

REITではオフィスビルや商業施設、住宅などさまざまな種類の不動産に投資します。得られた収益から維持管理費や運用費を差し引き、投資家に分配する流れとなっています。

 

証券取引所に上場しているため、株式と同様に売買することが可能です。実物不動産よりも流動性が高いため、必要に応じて資金を引き出せる柔軟性を求める方に向いているでしょう。

 

私募ファンド

 

私募ファンドでも、運用会社が投資家から集めた資金を使って不動産を取得し、実際に運用します。また、投資対象がオフィスビルや商業施設、住宅など多岐にわたる点もREITと共通しています。

 

REITとの違いは証券取引所に上場しておらず、誰でも手軽に購入できない点です。限られた人しか購入できないため「プライベートファンド」と呼ばれることもあります。

 

さらに、運用期間が通常3〜10年程度に設定されているケースが一般的です。最低投資額も1000万円〜1億円以上と高額になりやすいため、購入できる人が限られることが分かるでしょう。

 

流動性の低さが気にならず、高額な投資額を出せる方であれば、購入を検討する価値があります。

 

逆に、資金需要に対応できるようにしたい、少額から不動産投資を始めたい、と考えている方にとっては、リスクが大きく必ずしもおすすめできる方法とはいえません。

 

不動産特定共同事業

 

不動産特定共同事業も、多くの投資家から集めた資金で不動産投資を行い、家賃収入や売却益を投資家で分ける仕組みです。

 

不動産を小口化して販売しているケースがあり、所有権の一部を有することがあります。なお、不動産特定共同事業の不動産ファンドには「任意組合型」「賃貸型」「匿名組合型」の3種類があります。

 

任意組合型

不動産を投資家で共同所有する(不動産の現物出資)

賃貸型

出資後に運用会社と賃貸借契約を締結する(不動産の現物出資)

匿名組合型

事業者と匿名契約を締結する(金銭出資)

 

任意組合型は、投資対象の不動産を投資家で共同所有する仕組みです。実際の運用は運用会社に委任するため、投資家が投資判断を下す必要はありません。

 

「1口100万円」のように口数から購入できるケースが一般的なので、高額物件を少額から購入することが可能です。

 

賃貸型は、不動産の所有権の一部を保有した後に、運用会社と賃貸借契約を締結して運用や管理を任せる方法です。

 

匿名組合型とは、運用会社に金銭を出資して不動産の運用と管理を任せる方法です。REITや私募ファンドと同じような流れといえるでしょう。

 

不動産ファンドで投資するメリット

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不動産ファンドを活用すれば、少額の資金から不動産投資を始められます。実物不動産を購入する資金がなくても、数万円程度の資金から不動産投資が可能です。

 

以下で、不動産ファンドで投資する具体的なメリットを解説します。

 

少額から不動産投資を始められる

 

不動産ファンドは多くの投資家がお金を出し合って不動産投資を行うため、少額から始められます。多数の投資家から資金を集めることで、運用会社は大規模な不動産投資を行えるためです。

 

ファンドによっては数万円程度の少額から投資できるため、まだ若く収入が低い若年層や資産形成を始めたばかりの投資家に向いているでしょう。

 

実物不動産を購入する場合、高額な資金が必要です。物件によっては数億円の費用が必要となるため、不動産投資に興味があっても始められない、という方もいるかもしれません。

 

しかし、不動産ファンドを活用すれば気軽に複数の不動産へ投資できます。少額から始めて、徐々に投資額を増やして資産形成のスピードを早めることもできるでしょう。

 

分散投資を行いやすい

 

不動産ファンドを活用すれば、手軽に分散投資を行えます。ファンドはもともと複数の不動産をパッケージ化しているため、1つのファンドを購入すれば、自然と複数の不動産へ投資していることになります。

 

現物の不動産投資をする際に分散投資をしようとすると多額の資金が必要になりますが、ファンドを用いれば少額で分散投資が可能です。

 

オフィスや商業施設などさまざまなセクターの不動産に投資できるだけでなく、複数の国や地域の物件に投資できるため、地理的な分散も可能です。専門家が分析を行った上で効果的な分散投資を行ってくれるため、不動産投資初心者でも安心できるでしょう。

 

分散投資を行えば、特定の物件や地域のリスクを分散させ、全体的な収益の安定性を高められます。また、セクターごとに経済サイクルに対して異なる反応をするため、好況時でも不況時でも安定した収益を得られるでしょう。

 

不動産管理の手間がかからない

 

不動産ファンドを活用すれば、不動産管理の手間(設備の点検や修繕対応など)がかかりません。専門家が運用し、物件そのものの管理は管理会社が行ってくれるため、投資家が個人で物件管理を行う必要がありません。

 

実物の不動産を購入して賃貸経営を行うと、自分で管理するか賃貸管理会社を選定する手間が発生します。しかし、不動産ファンドであれば、投資家は単にファンドの持分を購入するだけで済むため負担を軽減できるでしょう。

 

さらに、実際に物件を購入する前の物件調査も省略できます。物件の状態や周辺環境、将来性の調査は手間がかかりますが、ファンドを用いれば難しい判断を省略できます。

 

物件管理や賃貸業務に時間を取られずに済む点は、投資家にとってメリットといえます。物件管理のノウハウや法律に関する専門知識がなくても問題ないため、不動産投資に多くの労力や時間を割けない人に向いています。

 

換金性が高い

 

不動産ファンドは、換金性が高いメリットがあります。特にREITは証券取引所に上場しているため、好きなタイミングで希望の価格で売買できます。

 

換金性が高いことで、何らかの事情でお金が必要になったとき、ファンドを売却して現金化することが可能です。柔軟にお金を活用できるため、お金が必要な場面に迫られても安心できるでしょう。

 

現物の不動産は一般的に数千万円~数億円程度の価格になるため、スムーズに買主が見つかるとは限りません。つまり、好きなタイミングで希望の価格で売却できるとは限りません。

 

急な資金需要に備えたいと考えている方や、市場動向を見ながら機動的に売買したいと考えている投資家に向いているでしょう。

 

不動産ファンドで投資するデメリット

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不動産ファンドで投資するメリットがある一方で、気を付けるべきデメリットも存在します。

 

以下で、実際に投資家が注意すべき不動産ファンドのデメリットを解説します。

 

運用方針を自分で決められない

 

不動産ファンドは投資対象の不動産がパッケージ化されているため、自分で運用方針を決められません。「このエリアの、この不動産に投資したい」という細かいニーズに対応できない点は、不動産ファンドのデメリットといえるでしょう。

 

不動産ファンドは多くの投資家から資金を集めて運用している特性上、個別の要望に応じられません。不動産の運用は運用会社に任せるしかなく、投資家個人で運用方針の意志決定ができない点に注意しましょう。

 

このように、市場の変化や個人の要望に答えられない点をネックに感じる場合、不動産ファンドの購入は向かない可能性があります。また、運用会社の能力や判断に依存することに抵抗を感じる方も、不向きといえるでしょう。

 

投資対象となる不動産を自分で選定し、柔軟に意志決定をしたいと考えている方は、実物不動産への投資を検討してみてください。

 

分配金が少額になる恐れがある

 

不動産ファンドで不動産投資をすると、現物不動産投資と比較して分配金が少額になりやすいデメリットがあります。得られた利益を投資家全員で分配する上に、運用会社への手数料を支払う必要があるため、利益が目減りしてしまうのです。

 

また、リスク分散の観点から分散投資しているため、投資対象の不動産には高収益物件と低収益物件が混在します。もし低収益物件が含まれるとリターンを損なう要因となるため、「個人で現物不動産投資をしたほうがよかった」と感じる可能性もあるでしょう。

 

現物不動産に投資すれば、得られる家賃収入や売却益は個人に帰属します。賃貸管理会社へ支払う手数料や税金は発生しますが、不動産ファンドと比較すると多くの利益を手元に残せる可能性を見込めます。

 

運用会社が倒産するリスクがある

 

不動産ファンドは運用会社に不動産投資を任せる方法ですが、肝心の運用会社が倒産するリスクがあります。投資収益が悪化すると運用元が倒産し、投資資金が全額戻ってこないリスクがある点はデメリットといえるでしょう。

 

不動産市況が急激に悪化し、運用会社の収益が大幅に減少する可能性はゼロではありません。運用会社の経営基盤が不安定だと、不動産投資を継続する余力がなくなり、倒産してしまう恐れがあります。

 

運用会社が倒産するリスクは小さいとはいえ、投資資金が戻ってこない可能性がある点は、投資家にとってリスクに他なりません。「自分の責任において不動産投資を行いたい」と考えている方は、実物不動産のほうが向いている可能性が高いでしょう。

 

金融機関から融資を受けられない

 

不動産ファンドで不動産投資をする際には、金融機関から融資を受けられません。自己資金を用いて投資する必要があるため、レバレッジを生かした不動産投資を行えないデメリットがあります。

 

現物不動産投資であれば、金融機関から融資を受けて購入価格の一部を用意できます。場合によっては、購入価格の全額をローンでまかなう「フルローン」も可能です。

 

これは、不動産を担保に設定して金融機関の回収不能リスクを軽減しているためです。万が一返済不能の状況に陥っても、金融機関としては担保物権を売却して換金すれば、融資したお金を回収できます。

 

しかし、不動産ファンドでは不動産を担保として設定することはできません。その結果、融資を受けられず投資資金を自分で用意する必要があります。

 

借入金を活用して不動産投資を徐々に拡大したいと考えている方や、レバレッジを生かして効率よく利益を得たいと考えている方は、不動産ファンドよりも現物不動産への投資のほうが向いているでしょう。

 

信頼できる不動産ファンドを見分ける方法

 

安心して投資できる不動産ファンドを見分ける際には、運用会社の信頼性やこれまでの実を確認しましょう。例えば、長年にわたってファンドを運用していれば、安心して資産を預けられるでしょう。

 

また、これまでの運用実績が良好であれば、不動産投資のノウハウを豊富に有していると考えられます。長年にわたって安定した分配金を維持できているか、不況時でも堅実な運用実績を残せているか確認しましょう。

 

運用手数料が適切な水準に設定されているかどうかも確認しましょう。ファンドを利用する際には運用をプロに任せるため手数料が発生しますが、投資家側としては手数料が安いほうがコスト負担を軽減できます。

 

不動産ファンドを活用した投資が向いている人の特徴

 

不動産ファンドを活用した投資が向いている人の特徴を紹介します。

 

少額から不動産投資を行いたい人

 

少額から不動産投資を始めようと考えている人は、不動産ファンドを利用した投資が向いています。ファンドによっては数万円から投資できるため、実物不動産の購入に比べてはるかに少額で始めることが可能です。

 

必要となる投資額が少額で済むため、心理的ハードルが低いメリットがあります。「いきなり大金を不動産投資に回すのは怖い」という方でも、心理的な負担を抑えて始められるでしょう。

 

分散投資を行いたい人

 

分散投資を行いたい人にとって、不動産ファンドは有用な存在になり得ます。なお、分散投資には株式や債券をはじめとした「資産の分散」だけでなく、不動産の中での分散を含みます。

 

株式や債券、不動産はそれぞれ異なる値動きをします。異なる値動きをする資産を保有することで、分散投資の効果を得られます。

 

分散投資を実践すれば安定したリターンを得られる可能性が高まるため、すでに株式や債券に投資しており、リターンを安定させるための分散投資を検討している方は不動産ファンドを活用するとよいでしょう。

 

一つのファンドを購入すれば複数の不動産に投資できるため、不動産の中でも分散投資を行えます。単一物件に投資するよりもリスクを軽減できるため、値動きの振れ幅を抑えられるでしょう。

 

ファンドによっては、異なる地域や都市の不動産に投資することが可能です。日本だけでなくグローバルに不動産投資を行えば、日本国内における経済変動の影響を緩和でき、安定したリターンにつながるでしょう。

 

住宅・オフィス・商業施設・物流施設など、さまざまな種類の不動産に分散投資できる点もメリットです。景気に敏感なセクターや常に安定した需要があるセクターにバランスよく投資することで、ポートフォリオ全体の分散を図れます。

 

運用の手間を省きたい人

 

不動産投資に関する運用の手間を省きたい人は、不動産ファンドの活用が向いています。ファンドでは、ファンドマネージャーと呼ばれるプロが物件の選定や購入を行うため、不動産投資の判断を任せられるためです。

 

また、物件の管理は管理会社が行うため、投資家が直接管理する必要がありません。テナントの募集や契約、クレーム対応など一連の事務作業を一任できるため、手間をかけずに不動産投資を行えるメリットがあります。

 

実物不動産投資を行うと、建物の修繕や設備の更新など、物件の維持管理に関する作業を行う必要があります。実際の管理は管理会社が行うにしても、オーナーとして何らかの対応をしなければなりません。

 

ファンドでは煩雑な作業を行うことなく不動産投資の果実を得られるため、運用の手間を省きたい方に向いています。

 

流動性を重視する人

 

流動性を重視する人も、不動産ファンドは向いています。ファンドは実物不動産と比べて少額での取引が可能なので、スムーズに買い手が見つかる特徴があるためです。

 

特に、REITは証券取引所に上場しているため、多くの投資家が売買しています。市場参加者が多く売買しやすいため、「売りたいときに売れない」というリスクを抑えられるメリットがあります。

 

さらに、ファンドであれば投資額の一部売却が可能です。「運用資産の一部だけ売却したい」というときでも柔軟な引き出しが可能なので、細かい資金ニーズにも対応できるでしょう。

 

REITの場合は市場価格がリアルタイムで分かるため、現在の資産価値を把握しやすいメリットがあります。「今売却すれば〇円資金化できる」という見通しをつけやすく、実物不動産よりも迅速に資金化できるでしょう。

 

このように、ファンドであれば不動産市場の変動に応じてタイミングよく売買することが可能です。

 

不動産投資の知識や経験が乏しい人

 

不動産投資の知識や経験が乏しい人も、不動産ファンドを利用した投資が向いています。運用をすべてプロに任せられるため、投資家自身が不動産市場や物件管理について詳しい知識を持っている必要がありません。

 

実物不動産を購入する際には、物件の魅力や周辺環境、将来性などさまざまな面を考えなければなりません。初めて不動産行う方にとってハードルが高く、気持ちがくじけてしまうこともあるでしょう。

 

しかし、ファンドを利用すれば良質な物件の見極めや立地の評価など、専門的な判断をファンドマネージャーに任せられます。物件管理をはじめとした複雑な業務も任せられるため、「オーナーとしてやるべきことが分からない」という方でも安心して始められるでしょう。

 

不動産投資に割ける時間に制約がある人

 

不動産投資に割ける時間が限られている人は、手間がかからない不動産ファンドが向いています。

 

不動産の購入や売却に関する投資判断を下すときには、慎重に考えなければなりません。忙しい日々を過ごしている方にとって、じっくりと投資判断を下すための時間を確保できないこともあるでしょう。

 

しかし、ファンドを活用すれば不動産投資のプロが効率よく不動産を運用してくれます。投資家自身は「口数を購入するだけ(お金を出すだけ)」で済むため、負担が非常に軽いメリットがあります。

 

忙しくて不動産投資に関する学習時間を確保できない方や、不動産を実際に見に行く時間を確保できない方は、効率よく投資できるファンドが向いているでしょう。

 

不動産ファンドを活用した投資が向いていない人の特徴

 

続いて、不動産ファンドを活用した投資が向いていない人の特徴を紹介します。

 

以下に該当する方は、ファンドではなく実物不動産の購入を検討するとよいでしょう。

 

自分で物件を選びたい人

 

「自分で物件を選びたい」と考えている人は、不動産ファンドの活用が向いていません。ファンドでは、投資家個人の好みや判断で物件を選べないためです。

 

「古いアパートを購入してリノベーションした上で再販売したい」「この立地は将来性が高そうだから投資したい」と考えていても、ファンドの運用には反映されません。あくまでも運用はファンドマネージャーが行うため、投資家個人のリクエストには応えられないのです。

 

昨今は古い戸建てをリフォーム・リノベーションした上で売り出す「ボロ戸建て投資」が注目を集めています。ファンドでは自分好みのリフォームやリノベーションを行えないため、自分がイメージしている不動産投資を行えません。

 

さらに、ファンドでは市況を見て自分のタイミングで物件を購入したり売却したりすることもできません。賃料設定や入居者選定など、細かな運用戦略を自分で決定することもできないため、自分で投資方法や投資方針を決めたいと考えている方には向かないでしょう。

 

資産を大きく築きたい人

資産運用によって資産を大きく築きたい人は不動産ファンドでは不向きと言えます。ファンドでは金融機関から融資を受けた上で投資できないため、レバレッジを利かせられないためです。

 

融資を受けて不動産投資を行えば、自己資金で投資したとき以上の利回りを得られます。例えば、フルローンで投資を行えば自己負担を用意することなく不動産投資の果実を得ることが可能です。

 

さらに、ファンドを購入すると運用手数料がかかります。運用をプロに任せるため仕方ないとはいえ、手数料が利回りを押し下げる要因となるのは事実です。

 

ファンドは複数の物件に投資してリスクを軽減していますが、集中投資よりも期待リターンが小さくなってしまいます。特定の物件に集中投資して高いリターンを狙っている方にとって、低利回り物件が混在する可能性があるファンドは向かないでしょう。

 

このように、資産を大きく築きたい人の場合は、ファンドより実物不動産投資のほうが適しています。不動産投資に必要な知識、ノウハウを習得し、自ら投資判断を下したほうが良い成績を実現できる可能性が高いと言えます。

自由に投資判断を下したい人

 

「自分で自由に不動産投資に関する判断を下したい」と考えている人も、不動産ファンドの活用は向いていません。ファンドでは、個人の判断で自由に不動産を売買するタイミングを決められないためです。

 

例えば「景気の底を見計らって物件を購入し、ピーク時に売却する」という投資戦略を立てていても、ファンドでは投資家個人の意思は反映されません。そのため、自分で自由に投資判断を下したい場合は、実物不動産を購入する必要があります。

 

ファンドでは特定の物件や地域を自由に選べないため、好みの物件に投資できるとは限りません。運用はファンドの方針に沿って行われるため、自分で自由に投資判断を下せないデメリットがあります。

 

つまり、投資家は実質的に「ファンドを購入するか、売却するか」という判断しかできません。この投資家が自分で判断できる裁量が狭い、というデメリットについては、慎重に考える必要があります。資産運用を他人に委ねてしまう状態のため、自分自身で自分の資産をコントロールすることができず、利益を得る機会損失になってしまう可能性がある点に注意しましょう。

 

相続対策を考えている人

 

不動産投資を通じた相続対策を考えている人も、不動産ファンドは向いていません。実物不動産投資の場合は、相続税評価額を計算する際に建物や土地に対して減額が行われますが、ファンドには減額措置がないためです。

 

例えば、賃貸物件が立っている土地は「貸家建付地」として評価され、本来の評価よりも20%程度低い金額で計算します。例えば、1億円のファンドを持っていると相続が発生したときに1億円として評価されますが、貸家建付地の場合は約8,000万円で評価できるのです。

 

建物に関しても、マンションやアパートとして貸している建物に関しては「貸家」として扱われ、固定資産税評価額(相続税を計算するときの基準)から30%低い金額で計算します。

 

相続対策を進めたいと考えている方は、ファンドではなく実物不動産投資のほうが、ニーズを満たせる可能性が高いでしょう。

 

不動産投資ファンドで投資する際に知っておくべき注意点

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不動産投資ファンドは手軽に分散投資できるメリットがあるとはいえ、リスクがまったくないわけではありません。不動産投資全般で生じるリスクはもちろん、不動産ファンド特有のデメリットや注意点がある点に留意しましょう。

 

リスクの種類

リスクの内容

具体例

市場リスク

不動産市場全体の変動によるリスク

経済不況による不動産価格の下落

特定エリアの人口減少による需要低下

空室リスク

空室が生じて家賃収入を得られないリスク

賃借人の退去

空室期間の長期化

物件の価値減少リスク

特定の不動産物件に関連するリスク

建物の老朽化による修繕費用の増加

周辺環境の悪化

テナントリスク

賃借人に関連するリスク

主要テナントの退去による空室率の急増

テナントの倒産による賃料未払い

流動性リスク

不動産の売却が困難になるリスク

不動産市場の低迷

金利リスク

金利が上昇して不動産投資の収益に悪影響を与えるリスク

金利上昇による借入コストの増加

金利上昇による不動産価格の下落

運用会社リスク

運用会社が倒産するリスク

管理会社の倒産や杜撰な管理による物件の質の低下

為替リスク(海外不動産投資の場合)

為替レートの変動によるリスク

円高に為替が動いて資産価値が目減りするリスク

 

不動産ファンドを用いて不動産投資を行う際には、投資家はリスクを理解しなければなりません。また、自身のリスク許容度に合わせて投資判断を行い、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも検討すべきでしょう。

 

少額から投資を始めたい場合やリスクを抑えながら不動産投資の経験を積みたい場合は、不動産ファンドは一つの手段です。

 

しかし、自分の判断で運用ができる現物の不動産投資のほうが、手元に残せる利益を増やせるメリットが期待できます。自分自身で不動産の価値を見極める判断力も鍛えられるため、興味がある方は現物の不動産投資をおすすめします。

 

まとめ

 

不動産投資ファンドは少額からスタートし、運用をプロの方に任せることが可能です。不動産投資をこれから始めたいといった初心者の方には、不動産投資に取り組む一つの方法として挙げられます。

 

一方で、元本割れするリスクや利益が小さいといったデメリットもあります。また、自分自身で運用方針をコントロールできないといったリスクも無視すべきではありません。

 

不動産投資で大きく成功することを目指すのであれば、不動産投資のプロの方からノウハウを習得し、自分自身で現物の不動産を運用することをおすすめします。

 

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