不動産投資の出口戦略とは?物件別に最適な売却方法と時期を解説
- 不動産投資における投資戦略の意味を知りたい
- 具体的にどんな投資戦略があるの?
- 投資戦略で注意すべき事柄とは?
不動産投資を成功させる要因はいくつかありますが、その中でも非常に重要なポイントの1つになるのが、出口戦略です。
この記事では、そもそも出口戦略とはどのような考え方で、なぜ重要とされるのかや、代表的な出口戦略を解説します。
出口戦略として売却を検討すべきタイミングや、失敗しないためのポイントにも触れているので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 不動産投資における出口戦略の考え方
- 不動産投資における代表的な出口戦略
- 出口戦略に失敗しないためのポイント
不動産投資における出口戦略とは?
出口戦略はもともと軍事用語で、被害を最小限に留めながら撤退するための作戦を指す言葉です。
ですが現在では、経営や投資における大幅な収益源など、危機的状況からいかに損害を抑えながら脱出するか、という意味で用いられるようになりました。
不動産投資でも使われる機会が多く、投資を成功させるうえで無視できない、重要な要素の1つとされています。
まずは出口戦略とはどのような考え方なのか、なぜ重要視されているのかについて、確認していきましょう。
不動産投資は売却で終了するのが基本
何を持って不動産投資における成功とみなすのかには、投資をおこなう目的や戦略、考え方によって違いがあります。
ですが基本的には「最終的に利益を出したまま終えられたか」で判断するケースが多いのではないでしょうか。
どんなに利益率の高い優秀な投資物件でも、築年数が増すごとに建物は劣化し、資産価値も低下していきます。
それに応じて賃貸物件としての魅力も低下し、やがては空室を埋めるのが難しくなってしまうでしょう。
ですがそうなる前に物件を売却できれば、その物件から得られた利益をプラスに保ったまま、投資を終えられます。
つまり不動産投資における出口戦略とは、長年の運用を通じて積み重ねてきた収益を打ち消されてしまわないために、どのように投資を終えるかを考える戦略なのです。
不動産の売却益は非常に大きい
不動産投資で発生する利益は、インカムゲインとキャピタルゲインの2種類に分けられます。
インカムゲインとは、投資物件を保有している間、継続的に得られる利益です。
不動産投資では主に、家賃収入がインカムゲインにあたります。
一方のキャピタルゲインとは、投資物件の売却によって得られる利益を意味します。
購入するのに多額の費用がかかる不動産は、売却価格も大きくなりがちです。
売却に成功すれば大きな利益を生み出せますが、失敗した場合はそれまでに得たインカムゲインを遥かに超える、大きな損を生んでしまいかねません。
逆を言えば、運用中はうまく利益を出せなかったとしても、売却に成功すればトータルの利益をプラスにできる可能性があります。
その場合は、最終的には投資に成功した、と判断できるでしょう。
出口戦略は買う前に決める
投資物件の価値や売れやすさは、建物の構造や立地、周辺環境などの影響を大きく受けます。
ですがそれらの要因は多くの場合、物件購入後の意図的な変更が難しい要素でもあります。
したがって物件の売れやすさは、物件を購入した段階である程度決まっている、とも考えられるでしょう。
すでにお伝えした通り、不動産投資を売却で終える場合、いかに良い条件で物件を売却できるかは、投資の成否を分ける重要なポイントです。
物件選びの段階で、家賃収入がどれだけ見込め、売却時にはどの程度で売れるのかを予想できれば、不動産投資の成功率は大きく上昇するでしょう。
つまり不動産投資の出口戦略は、物件の売却を検討しはじめてから考えるのではなく、物件を購入する前に決めておくべきものなのです。
不動産投資における代表的な出口戦略
出口戦略は物件の種類や状態、投資戦略などを踏まえて適切に選択する必要がありますが、いくつか典型的なパターンも存在しています。
ここでは、代表的な4つのパターンを解説します。
収益物件として売却
運用している物件を、収益物件として売却する方法です。
高い収益性をアピールできる物件であれば、高値での売却が期待できます。
入居者がいる状態でもオーナーチェンジ物件として売却できるため、売却タイミングの自由度が高いです。
収益物件として売却する出口戦略を立てる場合は特に、運用中はできる限り資産価値を保って家賃の低下を防ぎつつ、高い入居率を維持するよう心がけましょう。
空室率が低い状態にある物件ほど収益性が高いと判断されるため、より有利に売却しやすくなります。
定期的なメンテナンスを実施して、内外装を綺麗な状態に保つのも大切です。
更地にして売却
一戸建てや一棟アパート、一棟マンションの場合に取り得る戦略です。
築年数が古く老朽化が進んでしまった場合や、傾きが見られるなどの問題がある場合、更地にした方がより高く売却しやすくなります。
解体前には、入居者全員に退去してもらうための交渉が必要です。
交渉に失敗してしまうとトラブルに発展する可能性があるので、注意してください。
あらかじめ解体するタイミングを決めている場合は、定期借家契約を活用するのも良いでしょう。
契約更新がないため、期間満了時に確実に退去してもらえます。
居住用物件として売却
マイホームの購入を希望している方に、居住用物件として売却するのも方法の1つです。
物件が購入希望者のニーズに合致している場合、収益物件としてよりも高値で売れるケースや、住み慣れた入居者が購入を希望するケースも見受けられます。
不動産投資のための物件を探している人は、周辺エリアの需要の高さや将来性などを重視しますが、居住のために物件を探している人は住みやすさを重視する傾向があります。
たとえば、これから子育てをする家族にとっては、学校や小児科、公園、図書館など、育児に必要な社会インフラがアクセスしやすい範囲に集まっていたほうが、より魅力を感じやすいでしょう。
出口戦略として売却を検討すべきタイミングはいつ?
出口戦略を成功させるには、売却時期の見極めも重要です。
とはいえ、具体的にどのようなタイミングで売却すべきなのか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
実は売却時期を検討するタイミングにも、いくつかのパターンが存在します。
ここからは、代表的な5つのタイミングを見ていきましょう。
長期譲渡所得に切り替わるタイミング
売却した物件を所有していた期間が5年を超えていた場合、下記の通り譲渡所得税の税率が約半分にまで低下します。
- 所有期間5年以下(短期譲渡所得):39.63%(譲渡所得税30.63%、住民税9%)
- 所有期間5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
物件の所有期間は、毎年の1月1日を基準に判断します。
たとえば2020年2月1日に物件を購入した場合、所有期間が5年を超えると判断されるのは、2026年1月1日以降です。
購入5年目になるのは2025年2月1日であり、2025年1月1日時点では4年超の状態だからです。
課税される税金が少なくなれば、その分だけ利益も大きくなります。
長期譲渡所得に切り替わるタイミングは、売却を検討するのに適しているといえるでしょう。
減価償却期間が終了するタイミング
減価償却とは、その物件の取得費用を一定期間にわたって分割して経費計上する仕組みです。
そのため減価償却期間中は、実際の経費よりも帳簿上の経費が増えるため、その分だけ所得税の負担を軽減できます。
減価償却は実際の支出をともなわずに節税できる手段であるため、キャッシュフローが増えるのも大きなメリットです。
一方で減価償却期間が終了してしまうと、それまでよりも税金を多く支払う必要が出てきます。
安定した家賃収入を得られていれば影響は少ないかもしれませんが、収益性の低下が目に見えるのであれば、売却を検討したほうが良いでしょう。
特に節税を目的としている場合は、あらかじめ減価償却終了のタイミングにあわせて出口戦略を練っておくのが効果的です。
デッドクロスが近づいたタイミング
デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回った状態を指します。
不動産投資ローンを利用して物件を購入した場合、元本に利息分を加えて毎月返済する必要があります。
このうち経費にできるのは利息の返済分のみで、元金返済分は経費にできません。
つまり実際に支払われた現金よりも、帳簿上の経費のほうが少なくなるわけです。
一方で、減価償却費は実際の現金支出を伴わず、帳簿上の経費だけを上乗せできるため、元金返済分を打ち消す効果が期待できます。
ですが時間の経過と共に減価償却費が少なくなると、このバランスが崩れ、帳簿上よりも実際の現金支出が多くなる一方で、帳簿上の経費が少なくなり、利益が増えてしまいます。
この状態が、デッドクロスです。
デッドクロスに陥ると節税効果が薄くなり、キャッシュフローも悪化しやすくなってしまいます。
デッドクロスになる前の段階で売却できれば、それらのリスクを安全に回避できるでしょう。
入居者が退去するタイミング
更地売却を検討している場合、入居者が退去したタイミングは、建物を解体するチャンスとなります。
また、居住物件としての売却を検討している場合は、入居者がいない状態でなければ売却できません。
交渉して退去を促した場合、立ち退き料を支払う必要も出てきてしまいます。
入居者が自主的に退去したタイミングは、絶好のタイミングといえるでしょう。
収益物件として売却を検討している方にとっても、売却先の間口が広がる良いタイミングといえます。
通常は投資家のみが販売対象となる収益物件ですが、入居者がいない状態であれば、居住用物件を探している方にも売却が可能となるためです。
大規模修繕工事前のタイミング
マンションやアパートなど、大規模修繕工事が必要な物件の場合は、工事前も売却を検討する良いタイミングです。
多額の費用が発生する大規模修繕工事は、オーナーにとっては非常に大きな支出です。
修繕積立金を用意しているケースも多いかと思いますが、建物の劣化が進んでいると、想定よりも大きな修繕費用が発生してしまうかもしれません。
その場合、一時金の徴収や修繕積立金の値上げがおこなわれる可能性も出てくるでしょう。
大規模修繕工事前に売却できれば、そういった支出の増加を確実に回避できます。
出口戦略に失敗しないために注意すべきポイント
いくら事前に出口戦略を考えていたとしても、実際に成功させられるとは限りません。
できるだけ成功率を上げるためにも、出口戦略に失敗しないためのポイントを確認しておきましょう。
買いやすく売れやすい物件を選ぶ
売却による出口戦略を検討する場合、物件の売れやすさがポイントになります。
売れにくい物件を売れやすい物件に変えるのは非常に難しいので、購入の段階でできるだけ売れやすい物件を選んでおきましょう。
具体的には、将来の賃貸需要や人口の変化、立地条件や周辺環境、間取りなどがポイントになります。
買い手の立場に立って、買いやすい物件を選ぶのも大切です。
たとえば金融機関からの評価が高い物件を選べば、融資を受けやすくなります。
融資を受けやすい物件は、より多くの投資家にとっても融資が受けやすく、買いやすい物件といえます。
よりスムーズに売却しやすくなるでしょう。
投資目的と出口戦略を一致させる
投資目的が異なれば、目指す成果も異なります。
出口戦略も同様に、投資目的に一致させるようにしましょう。
たとえば節税目的で不動産投資を始めたのであれば、投資によってどれだけ節税効果が得られたか、が成否を分ける基準となります。
出口戦略も節税効果を重視して、減価償却期間の終了に合わせて売却できれば、節税効果を保ったまま投資を終えられるでしょう。
可能な範囲で自己資金を入れておく
物件購入時に自己資金を多く入れておくほど、ローンの返済負担が軽くなり、売却タイミングをコントロールしやすくなります。
ローンが残っている状態で物件を売却するには、残債を一括返済する必要があります。
売却価格が残債を上回っていれば問題ありませんが、そうでなければ売却できません。
ローン残債が多いほど、売却価格で残債を支払いきれない可能性は高くなります。
できる限り思い通りのタイミングで売却できるよう、無理のない範囲で自己資金を入れておきましょう。
まとめ
不動産投資における投資戦略は、投資の成否を分ける大きなポイントです。
出口戦略には、収益物件として売却する方法や、居住用物件として売却する方法など、さまざまな方法がありますが、物件の特徴や投資目的に合わせて選ぶようにしましょう。
出口戦略として物件を売却するタイミングを検討する際も、目的に応じた考え方で決めるのが効果的です。
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