マンションの大規模修繕とは?
マンション経営を始めたあとは、約15年に1回のペースで大規模修繕を行う必要があります。大規模修繕では、老朽化したマンションを補修・補強したりするため、安心して生活するためにも欠かせません。
大規模な修繕を行う以上、多額の費用が発生する可能性があります。必要な修繕を行うためにも、計画的に修繕費用を用意しましょう。
今回は、マンションの大規模修繕の具体的な内容や必要な費用などを解説します。
目次
マンションの大規模修繕とは何か
マンションの大規模修繕とは、マンションの建物や設備の経年劣化に対して行う大規模な修繕工事のことです。定期的なメンテナンスとは異なり、建物全体を対象とした大がかりな工事となります。
大規模な工事を行うため、工事期間は3〜6ヶ月程度となるのが一般的です。工事の内容によって差があるものの、一戸当たり100〜200万円程度の修繕費用が発生します。
なお、具体的に大規模修繕の対象となる箇所は以下のとおりです。
建物外部 |
・外壁の補修・塗装 ・防水工事(屋上・ベランダ) ・サッシ・手すりの補修・交換 |
建物内部 |
・給排水管の取り替え ・共用廊下・階段の補修 ・エレベーターの更新 |
修繕費用は高額になるため、計画的に資金を準備しなければなりません。適切な修繕積立金を設定したり、工事費用の試算を早めに行い、準備を進めましょう。
マンションの大規模修繕は約15年おきに行われる
一般的に、マンションの大規模修繕は約15年おきに行われます。建物の建築構造や劣化具合によって差があるものの、おおむね12年~18年に一度のペースで行うのが一般的です。
ただし、海沿いに建っているマンションの場合は塩害により10年程度で大規模修繕が必要になったり、逆に内陸部で耐久性が高いSRC造のマンションの場合は20年近く保ったりする場合もあります。
建築で使用している材料が高品質であれば寿命が延び、また丁寧な施工が行われていれば耐久性が向上します。その結果、大規模修繕のスパンが長くなるケースが考えられるでしょう。
さらに、定期的な点検を実施して修繕個所を早期に発見すれば、大規模修繕時期を延ばせる可能性があります。適切な補修を行えば大規模修繕を行う必要性が小さくなり、建物の保存状態を良好に保てます。
このように、立地条件や建物の材質をはじめとして、さまざまな要素により大規模修繕のタイミングは異なります。
マンションの大規模修繕を行う目的
マンションの大規模修繕を行う目的は、主に建物の補修や資産価値の保全です。いずれも賃貸物件のオーナーにメリットをもたらすため、大規模修繕の計画を入念に立てましょう。
建物の劣化した部分を補修・補強する
大規模修繕を行うことで、マンションの劣化した部分を補修・補強できます。外見を清潔に保つだけでなく、安心して生活できる居住環境を整備するために、大規模修繕を行う必要性は大きいといえるでしょう。
一般的に、建物の劣化が進むと以下のようにさまざまな問題が発生します。
外壁の劣化 |
・ひび割れから雨水が入り込み、内部の鉄筋が錆びる ・錆びた鉄筋が膨張し、コンクリートを押し広げる ・最終的に外壁が剥がれ落ち、歩行者へ危険が及ぶ |
配管の劣化 |
・水道管の内部が錆びて赤水が出るようになる ・配管の接続部分から水漏れが発生 ・最悪の場合、破裂して大規模な水漏れ事故につながる |
防水層の劣化 |
・屋上やベランダの防水性能が低下する ・雨漏りが発生し、室内の壁や天井を傷める ・カビの発生や電気設備への悪影響が起こる |
これらの劣化を放置すると、劣化の進行に伴って修繕の範囲が広がってしまいます。早めに対処しなければ、工事費用が当初の予想を大きく上回る事態になりかねません。
設備トラブルが起こったり、安心して生活できない環境になったりしてしまうと、入居者が退去してしまうでしょう。退去が発生すると家賃収入が途絶え、賃貸経営に悪影響が出てしまいます。
また、物件の評判が下がることにより新規入居者が減少したり、賃料の値下げを余儀なくされたりする悪循環に陥ってしまうでしょう。
しかし、大規模修繕を適切に行うことにより、建物のトラブルを未然に防げます。また、入居者の満足度や適正な賃料水準を保てることで、安定した家賃収入を得られるでしょう。
このように、大規模修繕は建物を守り、安定した経営を続けるための必要不可欠な投資といえます。早い段階で対応し、将来に起こりうる大きなリスクを回避するためにも、大規模修繕は欠かせません。
マンションの資産価値を保つ
マンションの大規模修繕を行うことで、資産価値を保ち、建物の長寿命化につながります。耐久性が向上することで、将来の建て替え時期も延期できるでしょう。
さらに、資産価値を保つことにより、家を探している人からの関心を得やすくなるでしょう。適切な修繕が行われているマンションは外観・内観ともに清潔感があり、内見する人に魅力を与えられます。
また、不動産仲介業者からの評価が高くなることで、積極的に紹介してもらえる可能性が高まります。これにより、空室率を低く抑えることができ、周辺相場並みの賃料を維持して安定的な家賃収入を得られるでしょう。
一方で、大規模修繕を怠ったマンションは物件価値が毎年下がり続けます。外観と内観の清潔感が損なわれてしまい、退去が発生しやすくなり、空室率の上昇につながるでしょう。
その結果、空室期間が長期化し賃貸経営にも影響が出てしまいます。毎年のように赤字が発生してしまい、売却しようにも買い手が見つからない、という事態になりかねません。
マンションの大規模修繕で必要な費用の目安
実際に行う修繕内容によって必要な費用は異なりますが、マンションの大規模修繕にかかる費用の目安を紹介します(30戸規模のマンションの場合)。
外部工事 |
・外壁塗装・修繕:約1,200万円程度 ・防水工事(屋上・ベランダ):約800万円程度 ・鉄部塗装:約400万円程度 |
内部工事 |
・給排水管の更新:約1,000万円程度 ・共用部分の内装改修:約600万円程度 ・エレベーター更新:約800万円程度 |
調査・設計費 |
・建物診断費:100万円~200万円 ・設計・監理費: 200万円~500万円 |
仮設工事 |
・足場設置:200万円~400万円 ・養生作業:100万円~200万円 |
全体 |
・総額:4,000万円~6,000万円程度 ・1戸あたり:130万円~200万円程度 |
費用に影響を与える要因として、建物の状況が挙げられます。築年数が長いほど費用が高くなりやすく、また日常的なメンテナンス状況が悪く、建物の規模が大きいほど修繕費用は高額になります。
また、人通りの多い場所にある建物は作業時間に制限がある関係で、人件費が高額になりやすい傾向にあります。昨今は建設資材の価格変動や人件費の上昇が起こっているため、コストが増加しやすい点を押さえておきましょう。
修繕費用を抑えるためには、予防保全の考え方を取り入れ、定期的に建物の状況を見直すと効果的です。複数業者から見積もりを取得し、計画的な準備と適切な工事内容の選定を意識するとよいでしょう。
2回目以上の大規模修繕は高額になりやすい
同じマンションで、複数回の大規模修繕を行うことがあります。一般的に、建物は築年数が経過するほど劣化が進み修繕箇所が増えるため、2回目以降の大規模修繕では費用が高額になりやすい傾向にあります。
築年数が経過すると、表面的な劣化だけでなく建物内部まで劣化が進行します。鉄筋の腐食や配管の老朽化など、構造に関わる修繕が必要になるため、修繕費用がかさみやすいのです。
また、修繕範囲が1回目より広範囲になり、給排水管をはじめとした設備の寿命が到来していることも修繕費用が高額になりやすい一因です。部品の製造終了による設備全体の交換や、新しい基準へ適合するための更新が必要になると、やはり費用がかかります。
あくまでもイメージになりますが、1回目の修繕と2回目の修繕を比較すると、以下のとおりです。
1回目 |
2回目 |
|
外壁工事 |
・主に塗装の塗り替えが中心 ・軽微なひび割れ補修程度 ・費用:1㎡あたり1万円程度 |
・コンクリートの中性化対策が必要 ・鉄筋の腐食補修も発生 ・費用:1㎡あたり1.5~2万円程度 |
給排水管工事 |
・部分的な補修や更生工事 ・費用:1戸あたり50万円程度 |
・配管の完全更新が必要 ・壁の解体・復旧も必要 ・費用:1戸あたり100万円以上 |
防水工事 |
・既存防水層の上からの補修 ・費用:1㎡あたり2万円程度 |
・既存防水層の撤去が必要 ・下地の補修も必要 ・費用:1㎡あたり3~4万円程度 |
このように、2回目以降の大規模修繕では経年劣化の進行や工事の複雑化により、費用が増加する傾向にあります。長期的な賃貸経営を考えている場合は、計画的に修繕費を用意しなければなりません。
修繕費用を用意するための方法
毎月得ている家賃収入から修繕積立金を積み立て、修繕費用を用意する方法があります。
ほかにも、さまざまな方法で修繕費用を用意できるため、具体的な方法を知っておくとよいでしょう。
家賃収入から計画的に積み立てる
修繕積立金を用意する代表的な方法が、家賃収入からの積み立てです。修繕費用を積み立てる専用の口座を開設し、着実に貯めていきましょう。
専用口座を用意することで、毎月の収入から定額を確保でき、将来の支出に計画的に備えられます。積立額の設定方法はマンションの状況によって異なりますが、家賃収入の15~20%程度を目安に積み立てるとよいでしょう。
マンションの立地に応じて、適宜積立率は調整して問題ありません。都心部のマンションであれば標準より5%程度上乗せしたり、築年数が経過してきたら5~10%程度上乗せしたりすると安心です。
修繕はいつ発生するかわからないため、修繕積立金が減ってきたら、積立率を引き上げるとよいでしょう。必要に応じて積立率を見直して、余裕を持った資金計画を立てましょう。
なお、修繕積立金は空室が発生すると積み立てがストップしてしまいます。そのため、空室率が発生しないような工夫が求められる点も押さえておきましょう。
融資を活用する
修繕積立金や自己資金だけで、マンションの大規模修繕費用を用意できるとは限りません。必要に応じて金融機関から融資を受けて、大規模修繕費用を工面するとよいでしょう。
融資を活用すると、まとまった資金を一度に確保できるメリットがあります。積立金が不足していても対応可能で、計画的に返済できる見込みがあれば、資金繰りを柔軟に調整することも可能です。
ただし、融資を受けると金利負担が発生します。不動産担保ローンであれば無担保のローンよりも低金利で借り入れができますが、返済期間中は収支が圧迫される点は否めません。
また、追加の担保設定が必要になったり、審査で条件が合わなかったりする事態が考えられます。融資を受ける際には、物件の担保評価額・既存借入金の残高・返済予定表の確認などを行いましょう。
金利や返済期間に基づく返済シミュレーションを行い、問題なく返済できるか確認することも欠かせません。審査に通過できる可能性を高めるためにも、具体的な修繕計画を示したり、空室対策を実施したりして「安心して融資できる」と思わせることが大切です。
補助金や助成金を活用する
マンションの大規模修繕をする際に、補助金・助成金を活用できる場合があります。補助金・助成金制度は国や地方自治体によって提供されており、マンションの修繕や改修・耐震補強・アスベスト対策などを行ったときに受給できる可能性があります。
いずれも一定の条件を満たせば支給され、原則として返済義務はありません。経済的なメリットとなるため、修繕をする際には、利用できる補助金や助成金制度がないか確認してみましょう。
例えば、東京都ではマンション改良工事助成や防音工事助成などを行っています。経済的な助成だけでなく、マンション管理士による相談やコンサルタントとの相談も可能なので、専門家から修繕に関するアドバイスを受けることも可能です。
補助金や助成金は「工事費用の〇%」「上限額は〇万円」のように決まっているため、事前に受けられる補助を確認しておきましょう。修繕費用の負担を軽減しつつ、専門家のアドバイスを受けられるため、賃貸オーナーにとって有用なサービスです。
なお、補助金や助成金を受給するには、要件が設けられているのが一般的です。事前に実施主体に相談したり、必要書類を準備したりしたうえで、活用できそうか検討してみてください。
大規模修繕の費用を抑える方法
マンションの大規模修繕は、マンションの構造や戸数などによっては多額の費用が必要になります。実際に大規模修繕をする際には、不要な工事を省いたり、信頼できる業者に頼んだりすることで費用を節約できます。
以下で、大規模修繕の費用を抑える方法を紹介するので、参考にしてみてください。
無足場工法を利用する
マンションの大規模修繕をする際に、無足場工法を利用すると工事費用を節約できます。無足場工法とは建物の外部に足場を組まずに行う工事方法で、ゴンドラや特殊機器を使用するため、高所での作業にも対応できます。
これにより、足場設置費用や工期短縮に伴って人件費を削減することが可能です。足場工法と比較して、総工事費で15~25%程度の費用を削減できる可能性があります。
比較的新しいマンションや外壁の損傷が軽微なマンション、シンプルな形状の建物であれば無足場工法で十分に対応できる可能性があります。実際に工事を依頼する業者と相談しながら、適切な工法を決めましょう。
なお、無足場工法では特殊機材のレンタル費や専門技術者の人件費の発生、天候の影響を受けやすいというデメリットもあります。コストを抑えた結果、修繕が不十分に終わってしまうのは本末転倒であるため、注意しましょう。
コスト面だけでなく、工事の品質確保や居住者への影響、工期の制約などを踏まえることが大切です。
相見積もりを取得する
マンションの大規模修繕を実施する前には、複数の業者から相見積もりを取得しましょう。相見積もりを取得し、比較検討することで、修繕費用を抑えられる業者を選別できるでしょう。
また、どのような材質を用いて工事をするのか、どの範囲を工事するのかによって無駄な作業を削減できます。各社の工法や使用する材料、工事の計画などを比較検討することで、質の高い工事をしてくれる業者を選別できるメリットもあります。
相見積もりを取得する際には、最低でも3社、できれば5社程度に依頼しましょう。施工実績や保証体制、アフターフォロー体制などを確認し、信頼できそうかどうかを検討することも大切です。
なお、見積書を比較する際には以下のポイントに注目するとよいでしょう。
- 材料費の妥当性
- 労務費の適正性
- 作業範囲の確認
- 工法の適切性
- 使用する材料の品質
- 安全対策
- 保証期間
- アフターサービス
- 工期設定
オーナーとしては「できれば修繕費を安く抑えたい」と考えるのが普通ですが、費用だけで判断するのは危険です。他社と比較して安価に見積もられていると、見積もり項目に漏れがあったり、あとになって追加工事が必要となったりする可能性があります。
また、工事の品質が悪く効果的な修繕ができないリスクも考えられるでしょう。見積もりの準備として、事前に診断を受けて工事範囲を明確化し、予算を設定することが大切です。
管理会社任せにしない
一般的に、マンションの管理は管理会社に一任します。しかし、マンションの修繕計画や日頃の管理を管理会社に任せっきりにするのではなく、オーナー自身も管理に関して意識を持つことが大切です。
大規模修繕工事の依頼先として、管理会社を選択するケースは多く見られます。しかし、修繕計画の立案を管理会社に任せきりにしてしまうと、以下のようなデメリットが起こり得ます。
- 管理会社が下請け業者に工事を依頼する場合、紹介料や手数料が発生し工事費用が割高になる
- 管理会社は管理組合の予算を把握しているため、不要な工事を含めた見積もりを出す可能性がある
- 管理会社と関連のある業者が工事を行う場合、工事がずさんになる可能性がある
管理会社に任せきりにすると、相見積もりが形式的になったり、不要な工事が追加されたりする可能性があります。管理会社が長期修繕計画を作成する場合でも、管理会社に任せっきりにせず、オーナー自身でしっかりと計画を把握することで適切な工事計画を立案できるでしょう。
とはいえ、日常の管理業務を担当している管理会社は修繕の必要箇所を把握しており、相談がしやすいのも事実です。信頼関係が構築できている場合は、管理会社の意見を軸に修繕計画を立て、セカンドオピニオン的に第三者の専門家と相談することを検討しましょう。
定期点検と早期の対策を行う
日頃からマンションの定期点検と早期の対策を行うことで、結果的に大規模修繕時の費用を抑えられます。問題を早期に発見し、適切に対処することで、重大化する事態を防げます。
小規模修繕で済ませれば、大規模な工事の時期を延期できたり、緊急修繕の機会を減少できたりして、結果的に修繕費用を抑えられるのです。さらに、定期点検を実施することにより建物の劣化が進行してしまうのを抑制し、建物の長寿命化につながります。
日常的な点検としては、3カ月に1回程度を目安に外壁のひび割れや給排水管の状態、共用部分の床や壁を確認するとよいでしょう。目視による確認や異常音の有無などを確認し、異常がないか把握しましょう。
年1回程度を目安に、専門家による点検を受けることもおすすめします。素人では判断できない建物の構造診断や設備の機能、防水性能などは、専門家でなければ正しく評価できません。
信頼できる点検業者と良好な関係を築いておき、修繕の必要性を正しく判断してもらうとよいでしょう。また、小規模修繕を実施する場合は点検日時や点検箇所、対応状況などを記録しましょう。
詳細な記録を残しておくことで、大規模修繕をするときに修繕の必要性を正しく判断でき、修繕費用の抑制や工事規模の最適化につながるでしょう。
大規模修繕を実施するときの流れ
マンションの大規模修繕を行うときの大まかな流れは、以下のとおりです。
- 管理組合内の体制づくり(修繕委員会を設置することもある)
- 建物診断の実施(劣化箇所や修繕が必要な箇所を調査する)
- 工事計画・予算の策定(診断結果を基に修繕内容や予算案を検討する)
- 管理組合の総会で工事計画について承認を得る
- 施工会社の選定と契約
- 確認申請(必要な場合)
- 工事説明会の実施(居住者に工事内容や注意点を説明する)
- 着工・工事監理(工事を開始し、進捗管理や品質確認を行う)
- 工事終了後、検査を経て引き渡す
時系列で、マンションの大規模修繕の準備から実施までの流れを整理してみましょう。
大規模修繕工事の1~2年前 |
・管理組合内の体制づくり ・現状調査 ・建物診断の実施 ・修繕履歴の確認 ・入居者からの要望収集 ・不具合箇所の特定 ・修繕積立金の確認 ・融資の検討 ・補助金の確認 ・予算案の作成 ・工事範囲の決定 ・概算費用の算出 ・工期の想定 |
大規模修繕工事の6ヶ月~1年前 |
・仕様書の作成 ・見積依頼先の選定 ・工事条件の整理 ・スケジュール作成 ・複数の業者へ見積もりを依頼 ・見積内容の比較検討 ・工法の確認 ・業者の施工実績の確認 ・保証内容の確認 ・契約条件の調整 ・工事監理者の選定 |
大規模修繕工事の2ヶ月~3ヶ月前 |
・入居者へ工事内容の説明 ・修繕スケジュールの共有 ・注意事項の周知 ・仮設計画の確認 ・施工体制の確認 ・安全対策の確認 ・行政へ必要な許可申請 ・騒音対策 |
工事期間中の対応 |
・定期的な現場確認 ・工程表との照合 ・品質チェック ・予算管理 ・入居者へ工事状況の報告 ・苦情対応(必要に応じて) ・生活影響への配慮 ・安全確保 ・追加工事の検討 ・予算変更の確認 ・工期調整 ・仕様変更の判断 |
工事完了時 |
・施工品質の確認 ・不具合箇所の確認 ・清掃状況の確認 ・書類の確認 ・完了書類の受領 ・保証書の受領 ・施工記録の保管 ・保証内容の確認 ・メンテナンス計画 ・定期点検の予定 ・緊急連絡先の確認 |
マンションの規模によって異なりますが、大規模修繕の準備期間として、修繕委員会の設立から工事着工まで2年程度の期間を見ておくとよいでしょう。
大規模修繕工事はさまざまな準備が必要となるうえで、足場の組み立てや騒音の発生など、居住者の日常生活に大きな影響を与えます。そのため、管理組合や工事を行う業者との調整だけで進めるのではなく、工事内容やスケジュールについて、入居者に対して事前にしっかりと説明を行うことが大切です。
塗料や防水材などを使用する作業では、特有のにおいが発生することがあります。においに敏感な居住者もいるため、換気を徹底したり洗濯物が汚れる可能性がある点を示唆したりして、注意喚起を行いましょう。
大規模修繕工事は、居住者の協力なしには円滑に進めることはできません。工事内容やスケジュールなどの連絡事項をきちんと住民へ周知し、住民の理解と協力を得ることが大切です。
計画的な大規模修繕を行った人の好事例
マンション経営を始めて十数年が経過すると、大規模修繕をしなければならない事態に直面します。
計画的に大規模修繕に備えている人の事例を参考にしながら、実務上のノウハウを学んでいきましょう。
計画的に修繕費用を積み立てたAさん
Aさんは10年前に3,000万円のマンションを購入し、賃貸経営を始めました。収入と支出の計画は、概ね以下のように推移しています。
- 家賃収入:月額12万円
- ローン返済:月額8万円
- 管理費・修繕積立金:月額2万円
- 保険・税金等:月額1万円
- 実質手取り:月額1万円
毎月の修繕積立金として2万円は必ず確保し、実質的な手取りである1万円も、余裕があるときに修繕積立金に回していました。また、相場に合わせて家賃収入を引き上げた際には増額分も積立に回し、着実に修繕積立金を積立貯蓄していました。
購入してから5年後に大規模修繕として外壁の補修と防水工事を行いましたが、費用の300万円は積立金ですべてカバーできたとのことです。10年後には給排水管の取り替えを行う予定で、予算として400万円を想定していますが、問題なく修繕積立金で賄える見込みです。
このように、計画的な修繕積立を実践することで物件の資産価値を維持できています。安全性と快適性を維持することで95%以上の入居率を維持しており、安定的に賃貸経営ができています。
また、Aさんは修繕工事の具体的な内容やスケジュールを記録として残し、次回の修繕時期や費用の予測に活用しています。これにより、正確な積立計画を立てることができているとのことです。
計画的に保全管理したBさん
Bさんは、マンションの計画的な保全管理を行い、大規模修繕費用を効果的に抑えることができました。Bさんが購入したのは築15年のマンションで、「予防保全」を行い、問題が大きくなる前に対処していたとのことです。
具体的には、毎月床や壁のヒビ割れチェックや水漏れ確認、排水管の清掃などを行いました。わずかな劣化を発見した場合、専門家の意見を聞きながら、必要に応じて部分補修を実施しています。
その結果、一般的な目安では築25年経過時点での大規模修繕費用として約800万円がかかるところ、Bさんの場合は約500万円に抑えられました。
問題を早期発見することで全面改修を回避したり、定期的なメンテナンスにより劣化進行を抑えたりすることで、長期的に修繕費用を抑えることができたのです。また、予防保全を安心して任せられる業者と信頼関係を構築していた点も、Bさんが修繕費を抑えられた大きな理由です。
継続して同じ業者に確認してもらうことで、建物の特徴や修繕履歴を理解してもらえます。その結果、本当に修繕が必要な個所と不要な個所を見極め、適切なアドバイスをもらうことができているようです。
予防保全を実践することで、建物の問題を早期発見でき、また早期対応ができます。日常的な管理と適切な時期の小規模修繕を組み合わせることで、大規模修繕の費用を効果的に抑えることができるのです。
まとめ
マンション経営を始めて年数が経過すると、大規模修繕を行う必要性が出てきます。マンションの築年数や規模によって異なるものの、一般的に数百万円の修繕費用が発生するでしょう。
大規模修繕費用を用意する方法として、家賃収入から計画的に積み立てたり、必要に応じて融資を活用したりすることが挙げられます。また、修繕費用を抑えるためには無足場工法を採用したり、複数の業者から相見積もりを取得したりすることが大切です。
長期的に修繕費を抑えるためには、予防保全の考え方を取り入れることも効果的です。早い段階で問題を発見し、対処することで修繕費用がかさむ事態を防げるでしょう。
賃貸経営には多岐にわたる情報収集や費用対効果を見越した対策の継続が成否を大きく左右します。既に経験された大家さんが集う、不動産賃貸経営を学べる塾やセミナーに参加し、継続的に良質な情報やノウハウを学ぶことをお勧めします。