不動産投資にかかる税金とは?タイミング毎に発生する税金や税額の計算方法なども解説

最終更新日:2025年9月5日
  • 不動産投資を始めた場合、どんな税金がかかる?
  • 各税金の税率や計算方法を確認したい
  • 各税金の納税タイミングや支払い方法とは?

不動産投資を始めると、今までになかった税金を納める必要が出てきます。

不動産投資で発生する税金は経費の一部とも捉えられるため、発生するタイミングや金額を把握しておくのが好ましいです。

税金を正しく納めるだけでなく、不必要な税金の発生を抑えて効果的に節税するのにも役立ちますので、不動産投資にかかる税金についての基本的な知識を確認してみましょう。

この記事では、不動産投資にかかる税金を、物件購入、物件運用・所持、物件売却、相続のタイミングごとに解説します。

この記事でわかること

  • 物件の購入時や売却時に発生する税金
  • 物件の運用時に発生する税金
  • 物件を相続する際に発生する税金

不動産投資にかかる税金はさまざま

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税金といえば、所得に対して課せられる所得税や、購入した物の価格に対して課せられる消費税などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

不動産投資ではそれら以外にも、さまざまな場面でさまざまな税金が発生します。

たとえば物件購入時に作成する契約書には、収入印紙を購入して貼付する必要がありますが、その購入した収入印紙は印紙税と呼ばれる税金です。

不動産の購入価格には消費税がかかりますし、購入した物件の運用を続けていれば、毎年固定資産税の支払いが求められます。

以下は、不動産投資で発生する税金と発生タイミングをまとめた表ですが、多種多様な税金が発生しているのが見て取れるのではないでしょうか。

税金の種類

発生タイミング

購入時

運用時

売却時

相続時

不動産取得税

     

印紙税

 

 

登録免許税

 

 

固定資産税

 

   

都市計画税

 

   

所得税・住民税

 

   

譲渡所得税・住民税

   

 

個人事業税

 

   

消費税

   

相続税

     

どの時点で、どのような税金が、どの程度発生しているのかを正確に把握できなければ、税金を正しく納められなくなります。

不要な税金の発生を抑えるための節税対策も、効果的におこなうのが難しくなってしまうでしょう。

ぜひこの機会に、不動産投資で発生する税金への理解を深めてみてください。

物件の購入によって発生する税金

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まずは物件購入時に発生する税金から確認してみましょう。

購入時にかかる税金は、以下の通りです。

  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 消費税

それぞれ解説します。

不動産取得税

不動産取得税は、土地や建物などの不動産を購入、建築、または贈与などによって取得した人に対して課せられる税金です。

土地と建物、それぞれに課税される点に注意してください。
無償で譲り受けた場合も課税されますが、相続取得した場合は課税対象外となります。

税額の計算式は、以下の通りです。

不動産取得税額 = 不動産の固定資産税評価額 × 税率

納税額の基準となる不動産の固定資産税評価額は、購入価格とは異なるので注意してください。
固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の課税明細書などで確認できます。

税率は原則4%ですが、税率の特例措置により令和9(2027)年3月31日までに取得した土地と住宅に関しては、3%に軽減されています。
要件などは特になく、土地・住居であれば例外なく3%です。

納税は不動産の取得後、4ヶ月から1年半程度の間に自治体から送られてくる納税通知書が届いたタイミングとなります。
納税額と期限は通知書に記載されていますので、遅れないように支払いましょう。

印紙税

印紙税は、印紙税法で定められた課税対象の文書(課税文書に対して課される税金です。
投資物件を購入する場合は、不動産投資ローンの契約書にあたる金銭消費貸借契約や、物件の売買契約書が対象なります。

文書の作成者に納付義務がありますが、売買契約書の印紙税については、売主と買主で折半するのが一般的です。

税額は以下の通り、契約金額に応じて変化します。
なお売買契約書については軽減措置により、令和9(2027)年3月31日までに作成された場合、軽減税率が適用されます。

契約金額

本則税率

軽減税率

10万円超、50万円以下

400円

200円

50万円超、100万円以下

1,000円

500円

100万円超、500万円以下

2,000円

1,000円

500万円超、1,000万円以下

1万円

5,000円

1,000万円超、5,000万円以下

2万円

1万円

5,000万円超、1億円以下

6万円

3万円

1億円超、5億円以下

10万円

6万円

印紙税の納付は、対象の文書に納税額分の収入印紙を貼付する形でおこないます。
収入印紙は役所や法務局のほか、全国の郵便局で購入が可能です。
コンビニエンスストアでも購入できる場合がありますが、基本的に200円の印紙のみの取り扱いとなっているので注意してください。

登録免許税

登録免許税とは、購入した物件の登記申請をする際にかかる税金です。
投資物件を購入した場合は所有権移転登記の手続きが必要になるため、そのタイミングで買主が納付します。

以下は、税額の計算式です。

登録免許税額 = 不動産の固定資産税評価額 × 税率

税率は登記内容によって変化します。
以下は、主な登記内容ごとの税率です。
令和8(2026)年3月31日まで軽減税率が適用されます。

  • 土地の所有権移転登記:0.4%(軽減税率0.15%)
  • 住宅用家屋の所有権移転登記:2%(軽減税率0.3%)

登録免許税は、自分で納税額を計算する必要があります。

自信がない場合は、司法書士に登記手続きを依頼すれば納付までおこなってくれるので、検討してみましょう。

納付は原則現金で、金融機関や税務署で納付した後、領収書を法務局に提出して完了となります。
税額が3万円以下の場合は収入印紙での納付も、オンライン申請の場合はインターネットバンキングやATMからの納付も可能です。

消費税

物件を購入した場合、購入代金や仲介手数料の10%が消費税となります。
登記を司法書士に依頼した場合、依頼料にも消費税がかかります。

なお土地の売買は非課税取引とされているため、土地の購入代金にはかかりません。

物件の運用や所持によって発生する税金

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続いて、物件の運用や所持によって発生する税金を解説します。
運用時に発生する税金は、以下の通りです。

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 所得税・住民税
  • 個人事業税
  • 消費税

それぞれ解説します。

固定資産税

固定資産税は、所有している不動産に対して発生する税金です。
毎年1月1日時点で所有していた不動産に対して課せられます。
土地と建物を所有していた場合、それぞれ個別に課税されるので注意してください。

税額は、以下の計算式で求められます。

固定資産税額 = 不動産の固定資産税評価額 × 税金

税金は原則1.4%ですが、地方税であるため自治体によって異なる場合があります。

住宅用地(住居として利用されている土地)の場合は特例措置が適用され、以下の通り算出時の固定資産税評価額(課税標準額)が軽減されます。

  • 小規模住宅用地(敷地の200㎡以下の部分):課税標準額の6分の1
  • 一般住宅用地(敷地の200㎡を超える部分):課税標準額の3分の1

納付については、1年分を一括で納めるのも可能ですが、4回に分けて納めるのが一般的です。
納税通知書に各回の納付期限が記載されていますので、忘れないようにしましょう。

納付方法は口座振替以外にも、クレジットカードや決済アプリ、eLTAX(電子納税)などがあり、コンビニエンスストアでの支払いも可能です。

都市計画税

都市計画税は、市街化区域内の不動産に対して課せられる税金です。
市街化区域外であれば、課税されません。

税額の計算式は、以下の通りです。

都市計画税額 = 固定資産税評価額 × 税率

税率は最大で0.3%と定められていますが、固定資産税と同じく地方税であるため、具体的な税率は自治体によって異なります。

都市計画税が課税されている場合は、固定資産税の納付書とひとまとめになっています。
したがって固定資産税を納めれば、都市計画税も納められます。

所得税・住民税

所得税と住民税は、前年度の不動産所得(不動産投資で得た収入)に対して課せられる税金です。
給与所得など他の所得がある場合は、すべての所得を合算した金額(課税所得金額)にかかります。

以下は、おおよその所得税額の計算方法です。
実際の税額は、確定申告の内容を基に算出されます。

所得税額 = 課税所得金額 × 税率 – 課税控除額

所得税では累進課税制度が採用されているため、以下の通り所得が多くなればなるほど、税率も高くなります。

課税所得額

税率

課税控除額

1,000円~194万9,000円まで

5%

0円

195万円~329万9,000円まで

10%

9万7,500円

330万円~694万9,000円まで

20%

42万7,500円

695万円~899万9,000円まで

23%

63万6,000円

900万円~1799万9,000円まで

33%

153万6,000円

1800万円~3999万9,000円まで

40%

279万6,000円

4000万円以上

45%

479万6,000円

住民税も所得税と同じく、前年の課税所得金額に対して課せられます。
なお住民税の税率は課税所得金額に関わらず、一律10%です。

個人事業税

個人事業税は運用している不動産の規模が一定以上で、一定以上の家賃収入を得ている場合に課せられる税金です。

税額は、以下の計算式で求められます。

個人事業税額 = 課税所得金額 × 税率

税率は、業種の区分によって異なります。
家賃収入を得ている場合の税率は、5%(不動産貸付業、第1種事業)です。

消費税

賃貸住宅の家賃については非課税となっているため、アパートやマンションなどの住宅だけを運用している場合は、消費税かかりません。

オフィスや倉庫など、事業用物件の家賃については課税されるので、運用している場合は注意してください。
年間1,000万円以上の売上を持つ課税事業者だった場合は、消費税の納付義務が発生します。

物件の売却によって発生する税金

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次に、物件の売却によって発生する税金を解説します。
売却時に発生する税金は、以下の通りです。

  • 譲渡所得税・住民税
  • 印紙税
  • 登録免許税

それぞれ解説します。

譲渡所得税・住民税

譲渡所得税とは、不動産の売却によって得られた所得(譲渡所得)に対して課税される税金です。
譲渡所得に対しては、住民税も課せられます。

運用時には、不動産所得を始めとする課税所得金額に対して所得税・住民税が課税されていました。
しかし売却時の所得である譲渡所得は、他の所得との合算ができないため、個別に所得税と住民税が課せられます。
このように他の所得との合算せず、分離して課税する仕組みを分離課税といいます。

以下は、譲渡所得税の計算式です。

譲渡所得税額 = 譲渡所得金額 × 税率

譲渡所得金額は、以下の式で求められます。

譲渡所得金額 =売却代金 -(売却した物件の取得費用 + 売却時の費用)

税率は以下の通り、売却した物件の所有期間によって変化します。

  • 所有期間5年以下(短期譲渡所得):39.63%(譲渡所得税30.63%、住民税9%)
  • 所有期間5年超(長期譲渡所得):20.315%(譲渡所得15.315%、住民税5%)

なおいずれの場合も令和19(2037)年までに限り、復興特別所得税として2.1%が上乗せとなります。

印紙税

物件を売却する場合の課税文書は、売買契約書です。
売買契約書の印紙税は、売主と買主で折半して支払うケースが多いです。

登録免許税

抵当権が設定されていた物件を売却した場合、抵当権抹消登記が必要になります。
その際の登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。
一般的には売主が納めます。

相続や贈与によって発生する税金

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最後に、物件の相続や贈与をするときにかかる税金を解説します。
相続時に発生する税金は、相続税です。

相続税の税額を求める場合、まずは課税対象となる遺産の総額を求める必要があります。

課税遺産総額 = 課税財産 - 基礎控除額
基礎控除額 = 3000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

続いて、課税遺産総額を法定相続人同士で分け合ったとき、自分が受け取る金額(取得金額)を求めてください。
相続税の税率は以下の通り、取得金額に応じて変化します。

取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

0円

1,000万円超、3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超、5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超、1億円以下

30%

700万円

1億円超、2億円以下

40%

1,700万円

最終的に相続人に課税される税額は、以下の計算式の通りです。

相続税額 = 取得金額 × 税率 - 控除額

不動産投資にかかる税金を抑える方法

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上記で見てきたように、不動産投資を行うと3つのタイミングごとに税金が課せれます。そのため、「こんなに税金がかかるなら、節税対策にはならない。不動産投資はやめておこう」と考える方もおられるかもしれません。

そこで、ここからは課税されるタイミングごとの税金対策について解説します。

購入時にかかる税金対策

購入時にかかる税金の対策としては、軽減税率を利用することです。例えば、不動産取得税に対しては、土地および家屋を取得した場合、本来であれば4%の税率であるところ、軽減税率が適用されることで3%になります。

また、宅地を取得する場合には課税標準額が2分の1になる軽減措置が適用されます。この特例を利用する際には申告が必要となるため注意が必要です。

中古のアパートやマンションなどを投資用物件として購入する場合には、軽減措置が受けられるのは「土地のみ」となるので注意してください。

運用時にかかる税金対策

運用時にかかる税金対策として重要なのが「損益通算」です。損益通算は、不動産投資で得た所得と、その他の所得を合算することで所得税・住民税の軽減を図る節税方法です。

なぜ、所得を合算することで節税につながるのでしょうか。それは、多くの場合、不動産投資を開始した直後は、不動産所得が赤字になる可能性が高いからです。

不動産所得を計算する際、不動産投資によって発生した経費を計上することで所得額が減少します。経費を漏れなく計上することで、不動産所得額を低く抑えることが可能です。特に、不動産投資を始めたばかりの頃は、減価償却費など大きな額を経費として計上することができることから赤字になりやすいといわれています。そのため、他の所得と合算した際に、課税所得が減少し、所得税・住民税が抑えられるのです。

不動産投資を本業としている方の場合、その他の所得と合算することができませんので、損益通算を利用した節税方法は利用できなくなるため、注意してください。

経費については、以下の記事も参照ください。
不動産投資は経費を上手に使うのがコツ!認められる経費・認められない経費や経費計上計画のポイントまで解説します!

売却時にかかる税金対策

投資用物件を売却する際に節税するためには、物件を5年以上所有するようにしましょう。売却時にかかる所得税・住民税の税率が低くなります。

投資用物件を売却時の1月1日時点で5年以上の長期にわたって所有していた場合、長期譲渡所得となります。長期譲渡所得の税率は、所得税が15.315%、住民税が5%です。売却益にはおよそ20%の税率が課せられます。

一方、5年以下で売却した場合はどうでしょうか。この場合は、短期譲渡所得となり、所得税が30.63%、住民税が9%となり、およそ40%の税率が課せられます。

このように、長期譲渡所得と短期譲渡所得には、2倍近い差が出ます。不動産投資で物件売却を考える際には、5年を目安にすると税金を抑えることが可能です。

まとめ

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不動産投資では、物件の購入、運用・所持、物件の売却、物件の相続のタイミングごとに、さまざまな税金が発生します。

課税タイミングや納税タイミング、税率、納税方法は税金ごとにさまざまで、課税額を求める基準もそれぞれ異なるため、注意してください。

また、不動産投資は物件を買って貸すだけと思われがちですが、実際には融資や税金、空室対策など、幅広い知識と判断が求められます。
塾や会などに参加する事で、基礎から実践的な内容まで体系的に学べるほか、講師や仲間との交流を通じて、リアルな事例や経験談を吸収することができます。
また、一人では気づけないリスクや改善点も、客観的なアドバイスによって早期に気づけるのも大きなメリットです。
安心して第一歩を踏み出すためにも、塾への参加はとても有効な選択だと思います。

本記事が、不動産投資で発生する税金への理解を深める一助となれば幸いです。

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