不動産投資にかかる税金とは?タイミング別にかかる税金の種類やその際の税金対策をやさしく解説します!
不動産投資を始めると、給与所得などとは別に家賃収入などの不動産所得が入るようになります。給与所得であれば、税金は毎月、給与から天引きされますが、不動産所得は自ら税金を計算し納付しなくてはいけません。
その他にも、不動産投資を始めると、さまざまな場面で税金が発生します。もし、これらを知らずに納付を忘れていると最悪の場合、追徴課税などのペナルティが科されてしまうかもしれません。
本記事では、そのような事態を回避するため、不動産投資にかかる税金について解説します。
目次
不動産投資にかかる税金はさまざま
不動産投資を始めると、多くの場面で税金が発生します。まず、投資用物件購入時に発生するのが印紙税です。不動産投資においてはさまざまな契約書に収入印紙を貼付する必要があります。
また、不動産を取得した場合に発生する不動産取得税や不動産の登記の際に納める登録免許税も、不動産投資にかかる税金です。
見過ごしがちですが、土地や建物の価格や不動産の仲介手数料にかかる消費税も、不動産投資にかかる税金といえるでしょう。
不動産投資を始めると、このようにさまざまな税金が課せられます。この他にも、不動産投資では、タイミングごとに税金が発生します。そのため、どの時点で、どのような税金が発生するかを把握し、正確に計算して納付しなくてはいけません。
タイミング別・不動産投資にかかる税金
不動産投資では、大きく分けて3つのタイミングで税金が発生します。その3つのタイミングとは、投資用物件の「購入時」「運用時」「売却時」です。
以下では、この3つのタイミングで発生する税金について解説します。
購入時にかかる税金
まずは、不動産購入時にかかる税金を見てみましょう。不動産購入時にかかる税金は、大まかに「不動産取得税」「印紙税」「登録免許税」の3つです。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物などの不動産を購入したり、贈与を受けたり、家屋を建築したことにより取得した場合に、取得者に課せられる税金です。相続による取得の場合には課せられません。
不動産投資のために物件を購入した場合、4ヶ月から1年半程度の間に、行政から納税通知書が送付されます。納税通知書に記載された納税額を参照し、金融機関で納付しましょう。
印紙税
印紙税は、印紙税法で定められた課税文書に対して課される税金です。そのため、すべての文書に対して課税されるわけではありません。
不動産投資では、「売買契約書」や「建築請負契約書」、金融機関でローンを組む際に作成される「金銭消費貸借書」が主な印紙税の対象になります。この他にも、仮契約書なども対象です。
印紙税は、契約書等の文書に貼付し、割印を付与して納付します。
登録免許税
購入した物件の登記申請をする際にかかるのが登録免許税です。購入した物件については所有権を登記する必要があるため、必ず納付しなくてはいけません。
納付は、登記を受けるまでに現金または収入印紙で行います。現金で納付する場合は、銀行等の金融機関で支払い、領収書を法務局に提出し、収入印紙の場合は、金融機関や法務局で印紙を購入する方法で納付します。オンライン申請を利用する際には電子納付が可能です。
登録免許税は、自分で算出する必要があります。自信がない場合は、専門家である司法書士に任せることも可能です。
運用時にかかる税金
続いて、運用時にかかる税金について見ていきます。運用時にかかる税金には、「固定資産税・都市計画税」や「所得税・住民税」、「個人事業税」、「消費税」があります。
固定資産税・都市計画税
投資物件など、不動産を所有している場合にかかる税金が固定資産税・都市計画税です。固定資産税・都市計画税は、不動産を「所有している」ことに対して課税されます。
毎年1月1日の時点で不動産を所有している人に対して課せられるのが、固定資産税です。もし、年の途中で不動産を売却した場合であっても、その年の固定資産税は売主に全額課税されます。
売却した不動産の税金を納めるのは、売主に不公平感を与えてしまうため、一般的に不動産引き渡し以降の固定資産税は買主が負担します。
土地には、市街化区域と市街化調整区域がありますが、市街化区域にある不動産を所有している人に対して課されるのが都市計画税です。
マンションやアパートなどが建っているのは市街化区域なので、不動産投資用の物件を所有した場合には、都市計画税が課税されると考えておきましょう。
所得税・住民税
不動産投資を始めると家賃収入を得られます。この家賃収入が不動産所得となるため、税金が課せられます。
固定資産税・都市計画税と異なるのは、固定資産税などが、所有している不動産の価値に課税しているのに対し、所得税・住民税は不動産投資によって得られた利益に課税している点です。
所得税は、得られる収入が多くなればなるほど税率が変動する累進課税制を採用しています。そのため、不動産投資を本業としている投資家の場合、家賃収入が多ければ多いほど、税率が高くなり、所得税を多く支払うことになります。
一方で、副業として不動産投資を行っている場合は、本業の所得と副業の所得を合算した金額が所得額です。後ほど詳しく書きますが、不動産投資が赤字となっている場合は、合算すると所得が減るため、税率が低くなることが期待できます。
住民税も、所得税同様に前年の所得額に応じて課される税金です。住民税を算出する際の課税所得は、基礎控除や社会保険控除、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除などさまざまな控除を、条件に応じて差し引くことで算出されます。
住民税は所得税と異なり、算出された課税所得に一律の税率(10%)が課せられます。
個人事業税
個人事業主が、一定規模以上の家賃収入を得られるようになると課せられるのが個人事業税です。不動産投資を行っている、すべての人に課せられるわけではありません。
個人事業税については、課せられる事業が法律によって定められており、「不動産貸付業」だけでなく「駐車場業」などが含まれています。
小規模な投資ではなく、一定以上の事業規模になった場合に、個人事業税の課税対象となりますが、その規模の基準は「マンション・アパートなどで10室以上、貸家などでは5棟以上」です。
消費税
アパートやマンションの家賃については消費税が非課税となっているため、不動産投資を行っている物件が居住用の建物の場合、消費税はかかりません。
問題となるのは、オフィスや倉庫などの事業用の建物を投資用物件として所有している場合です。もし、不動産投資によって、年間1000万円以上の売上があると「課税事業者」となるため、消費税の納付義務があります。
基本的には、所有している物件が居住用で、家賃収入のみである場合と、年間の売上が1000万円以下の場合には、消費税はかからないと考えておきましょう。
消費税については、事業用物件に投資をしている場合、インボイス制度の影響を受けることがありますので注意が必要です。
売却時にかかる税金
最後に所有する物件を売却するときにかかる税金を見て見ましょう。この場合、「売却益」に対して所得税・住民税がかかります。
運用時にも不動産所得に対して所得税・住民税が課税されていましたが、売却時に課される所得税・住民税との違いはあるのでしょうか。
運用時の所得税・住民税は、その他の所得と合算して課税所得を算出することができました。その一方、売却時にかかる所得税・住民税は、その他の所得と合算することができません(分離課税)。
また、売却する物件を所有していた年数によって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられます。その際に、税率が変動するので注意が必要です。
不動産投資にかかる税金を抑える方法
上記で見てきたように、不動産投資を行うと3つのタイミングごとに税金が課せれます。そのため、「こんなに税金がかかるなら、節税対策にはならない。不動産投資はやめておこう」と考える方もおられるかもしれません。
そこで、ここからは課税されるタイミングごとの税金対策について解説します。
購入時にかかる税金対策
購入時にかかる税金の対策としては、軽減税率を利用することです。例えば、不動産取得税に対しては、土地および家屋を取得した場合、本来であれば4%の税率であるところ、軽減税率が適用されることで3%になります。
また、宅地を取得する場合には課税標準額が2分の1になる軽減措置が適用されます。この特例を利用する際には申告が必要となるため注意が必要です。
中古のアパートやマンションなどを投資用物件として購入する場合には、軽減措置が受けられるのは「土地のみ」となるので注意してください。
運用時にかかる税金対策
運用時にかかる税金対策として重要なのが「損益通算」です。損益通算は、不動産投資で得た所得と、その他の所得を合算することで所得税・住民税の軽減を図る節税方法です。
なぜ、所得を合算することで節税につながるのでしょうか。それは、多くの場合、不動産投資を開始した直後は、不動産所得が赤字になる可能性が高いからです。
不動産所得を計算する際、不動産投資によって発生した経費を計上することで所得額が減少します。経費を漏れなく計上することで、不動産所得額を低く抑えることが可能です。特に、不動産投資を始めたばかりの頃は、減価償却費など大きな額を経費として計上することができることから赤字になりやすいといわれています。そのため、他の所得と合算した際に、課税所得が減少し、所得税・住民税が抑えられるのです。
不動産投資を本業としている方の場合、その他の所得と合算することができませんので、損益通算を利用した節税方法は利用できなくなるため、注意してください。
経費については、以下の記事も参照ください。
https://kamiooyasan.jp/2024/02/09/expense_accounting_plan/
売却時にかかる税金対策
投資用物件を売却する際に節税するためには、物件を5年以上所有するようにしましょう。売却時にかかる所得税・住民税の税率が低くなります。
投資用物件を売却時の1月1日時点で5年以上の長期にわたって所有していた場合、長期譲渡所得となります。長期譲渡所得の税率は、所得税が15.315%、住民税が5%です。売却益にはおよそ20%の税率が課せられます。
一方、5年以下で売却した場合はどうでしょうか。この場合は、短期譲渡所得となり、所得税が30.63%、住民税が9%となり、およそ40%の税率が課せられます。
このように、長期譲渡所得と短期譲渡所得には、2倍近い差が出ます。不動産投資で物件売却を考える際には、5年を目安にすると税金を抑えることが可能です。
まとめ
不動産投資を始めると、大きく分けて「購入時」「運用時」「売却時」の3つのタイミングで、さまざまな税金が発生します。そのため、「税金の支払いが多いのであれば不動産投資はやめておこう」と考える方もおられるかもしれません。
しかし、不動産投資で発生する税金は、節税対策を行うことも可能であるため、実際にはそれほど大きな負担となることはないと言えるでしょう。
本記事が、不動産投資にかかる税金をしっかりと把握し、「納税を忘れていたために追徴課税になった」という事態を回避する参考になれば幸いです。