不動産投資におけるキャッシュフローの意味とは?悪化する要因も解説
- 不動産投資でよく聞くキャッシュフローとはどういう意味?
- なぜキャッシュフローが重要視されているの?
- キャッシュフローを安定させるにはどうすればいいの?
不動産投資では様々な用語が用いられますが、その代表的なものの1つに「キャッシュフロー」があります。
この記事では、不動産投資のキャッシュフローの意味や、キャッシュフローを増やすメリット、計算方法などを解説します。
不動産投資に興味がある方や、キャッシュフローの基本を学びたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- キャッシュフローの不動産投資での役割
- キャッシュフローを増やすメリット
- キャッシュフローを安定させるためのポイント
目次
キャッシュフローとは?不動産投資での役割
そもそもキャッシュフローとは、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか?
まずはキャッシュフローの意味や、似た言葉や数字との違いから確認してみましょう。
キャッシュフローの意味
キャッシュフローとは、「お金が出入りする流れ」を指す言葉です。
一般的には、企業の資金繰りや経営状況を判断するための指標の1つとして用いられます。
不動産投資では、その物件から得られる家賃収入から、その物件を運用するのにかかった費用(ローンの支払いや経費など)を差し引いた金額(手元に残るお金)を指すケースが多いです。
このように不動産投資の場合、一般的なキャッシュフローが指す「お金の流れ」とは異なり、実際に手元に残る現金そのものを表している点に注意してください。
帳簿上の利益とキャッシュフローの違い
帳簿上の利益とは、財務諸表などに記載される会計上の利益を指します。
取引の成立時点を基準にして、一定のルールに則って収入や費用を計算したものです。
一方のキャッシュフローは、お伝えしたとおり実際に手元に残っている利益として得られた現金そのものや、その金額を指します。
帳簿上の利益を求める際のルールは適用されないため、この2つの金額は同じにはなりません。
帳簿上とキャッシュフローに違いが出る代表的な要因は2つあります。
1つ目は、建物の減価償却費です。
減価償却費とは、経年劣化による建物の価値低下を経費として計上するための仕組みを指します。
具体的には、建物の購入費用を建物の耐用年数で割った金額を、1年毎の減価償却費として処理します。
たとえば、購入費用3,000万円、耐用年数10年の物件の場合、毎年の減価償却費は300万円です。
この300万円は実際には発生していない支出であるため、キャッシュフローを求める際は考慮しません。
そのため、帳簿上とキャッシュフローにずれが発生します。
もう1つの違いが出る要因は、ローンの返済額です。
毎月支払うローンの返済は、元本分に利息分をあわせて支払う必要があります。
このうち元本は、建物を購入する費用として使用した金額であるため、帳簿上は購入したタイミングで計上されます。
一方の利息は、返済時のローン残高に応じて発生する費用です。
そのため帳簿上は、利息に関してのみ支払時の経費として処理する必要があります。
このように、帳簿上の利益と手元に残る現金には違いが出てきます。
帳簿では十分な利益が出ているからと油断していると、思っていたよりもキャッシュフローが少なくなっているなどの事態も起こりえます。
不動産投資では、突発的な修繕などの急な支出が発生する場合があるので、十分なキャッシュフローを保てるよう注意してください。
利回りとキャッシュフローの違い
利回りとは、物件の購入価格に対する年間家賃収入の割合です。
物件の収益性を表すため、不動産投資では物件選びの重要な指標の1つとして重要視されています。
手元に残ったキャッシュフローも、物件の収益性を表している要素の1つです。
物件の運営状況によって左右される数字であるため、物件運用に関する判断材料の1つとして活用される場合があります。
この2つは一見すると、同じような意味合いの指標に見えるかもしれません。
しかし、利回りは「投資に使った金額は、どのくらいで回収できるのか」を表す数字です。
あくまでも、その物件の収益性を予測するための指標である点に注意してください。
一方のキャッシュフローは、実際に物件を運用した結果として手元に残った金額そのものです。
キャッシュフローに余裕があれば、今後も安定して物件の運用ができ、逆にキャッシュフローが乏しい場合は、何らかの対策が必要になるでしょう。
つまり、運用中の物件の現状を表しているのだと考えてください。
不動産投資でキャッシュフローを増やすメリット
不動産投資家のなかには、キャッシュフローの良し悪しを重要視している方も少なくありません。
なぜキャッシュフローが多いほうが良いとされているのでしょうか?
ここでは、キャッシュフローを増やす代表的な3つのメリットを解説します。
安定して運用しやすくなる
今までお伝えしてきたとおり、キャッシュフローとは物件を運用して得られた利益のうち、実際に手元に残った現金です。
手元の資金が多くなれば、急な支出が発生しても問題なく対応しやすくなります。
一方で、どんなに利益が発生していても手元に残る金額が少なければ、突発的な修繕などに費用を捻出できず、物件の運用に支障をきたしてしまうかもしれません。
日頃からキャッシュフローを重視しておけば、物件を安定して運用するために十分な資金を確保しやすくなるでしょう。
様々なリスクに対応しやすくなる
不動産投資で注意すべきリスクは、修繕リスクだけではありません。
空室リスクや家賃滞納リスク、金利上昇リスク、災害リスクなど、様々なリスクに対応する必要があります。
これらのリスクはいずれも、突発的に起こりうるのが特徴です。
ある程度の対策は事前にできますが、確実に発生を防げるものではありません。
基本的にはそれら対策とあわせて、一定の資金を用意して備えておく必要があります。
キャッシュフローに余裕があれば、これらリスクに備えるための資金を確保しやすくなるでしょう。
逆に、キャッシュフローが少ない場合や赤字の場合は、十分な資金を確保するのが難しくなります。
最悪は預貯金などの自己資金での負担も考慮しておく必要が出てくるでしょう。
物件の評価が高まり売却しやすくなる
キャッシュフローが多くなるほど、利益が支出を上回っている(利回りが高い)と判断できます。
そのため物件自体の評価も高くなりやすく、より有利な条件で売却しやすくなるでしょう。
収益性の高い物件を所有していれば、金融機関からの評価も高くなり、より有利な条件の融資も受けやすくなります。
新たな物件の購入資金を得るため、出口戦略として物件を売却するのも活用方法の1つです。
キャッシュフロー計算方法と注意点
すでに保有している物件や、購入を検討している物件の収益性を判断する際は、キャッシュフローを計算してシミュレーションをおこなうのが効果的です。
空室リスクや価格下落リスクの対策を考えるうえでも、大いに役立つでしょう。
ここからはキャッシュフローの計算方法と、計算時に注意すべき減価償却費の扱いについて解説します。
キャッシュフローの計算方法
キャッシュフローの計算方法は、「収入 - 支出」です。
たとえば、ある月の家賃収入が100万円で、支出が70万円だった場合、その月のキャッシュフローは30万円となります。
支出は基本的に家賃収入ですが、付属の駐車場などから収入を得ている場合は、その分も含みます。
以下は、代表的な支出です。
- 物件の購入額
- 仲介手数料
- 司法書士や税理士に支払う報酬
- 火災保険料と地震保険料
- ローンの元本と利息の支払い
- 各種税金(固定資産税、不動産取得税、所得税など)
- 物件の管理委託費
- 修繕費用
- 修繕積立金
- 入居者募集の広告費用
支出には物件の維持費だけでなく、修繕費やローン返済額、税金など複数あるので注意してください。
減価償却やローン返済額の扱いに注意
キャッシュフローを求める際、減価償却費は考慮しません。
またローン返済額については、元本分や利息分の区別なく、支払った分だけ費用として計算する点に注意してください。
またこれらに関係する要素として、デッドクロスの発生にも注意が必要です。
デッドクロスとは、帳簿上では経費にできないローン元本分の支払いが、帳簿上では経費として扱える減価償却費を上回ってしまった状態を指します。
この状態になると帳簿上の収益がキャッシュフローを上回るため、帳簿上の収益を元に算出される所得税などの負担が増加します。
一方で、実際に手元に残る金額は帳簿上の収益を下回ってしまい、キャッシュフローが圧迫されるので注意してください。
なお、減価償却期間が終了した場合、必ずデッドクロス状態に陥ります。
その場合は、物件を売却するなどの対応が必要になります。
そのため早い段階で、物件の売却タイミング(出口戦略)を検討しておくのが好ましいです。
不動産投資でのキャッシュフローの目安はどれくらい?
物件を運用するうえでは、ある程度のキャッシュフローを確保するのが望ましいですが、具体的にどの程度を目安にすべきかについては、一概には言い切れないのが実情です。
キャッシュフローが大きいほど手元の資金が増えますが、キャッシュフローがマイナスだからNGとも限りません。
なぜなら、キャッシュフローはあくまでもその時点で手元に残る金額を示しているに過ぎず、投資全体の良し悪しを表しているわけではないためです。
たとえば、ローンの返済が進んで一時的にデッドクロス状態に陥った場合も、完済によってキャッシュフローがプラスになるのであれば、全体として問題がないと判断できます。
同様に、現時点でのキャッシュフローがマイナスだったとしても、物件を売却した時点で総合的なキャッシュフローがプラスになるのであれば、やはりトータルとしては問題ありません。
このようにキャッシュフローの良し悪しを考える際は、現時点だけの数字に囚われず、先々も見越して検討するのが大切です。
不動産投資でキャッシュフローを圧迫するおもな要因・悪化するケース
ここからは、不動産投資でキャッシュフローが圧迫されてしまう要因や、悪化してしまうケースを解説します。
物件選びに失敗
物件選びに失敗してしまい、思うように収益が得られないとキャッシュフローが悪化してしまいます。
すでにお伝えしたとおり、実際に得た収益から実際に支払った支出を引いて求められる金額がキャッシュフローです。
想定どおりの支出が発生している状態で、想定よりも収益が少なくなれば、その分だけキャッシュフローは圧迫されてしまいます。
このような事態を避ける対策としては、物件を購入する前にしっかりと収益シミュレーションをおこなうなどして、適切な物件を選ぶのが効果的です。
ローンの返済負担が大きすぎる
毎月のローン返済額が大きくなるほど、キャッシュフローをプラスにするのが難しくなります。
たとえば、満室状態で月に100万円の収入がある物件を購入するために、毎月の支払いが80万円になるローンを組んでしまったら、ほんの少し空室が発生しただけでキャッシュフローがマイナスになってしまうでしょう。
ローンの返済負担を少なくするほど、キャッシュフローに余裕をもたせやすくなります。ローンを組む際には頭金を多めに用意する、返済期間を長くするなど、月々の返済額が少なくなるよう意識するのがお勧めです。
空室が多い
不動産投資の基本的な収入は、毎月の家賃です。
空室が多くなってしまえば、その分だけ収入が少なくなり、キャッシュフローも相応に圧迫されてしまいます。
入居者募集に力を入れる、物件の魅力を増すために修繕やリフォームを実施する、など空室対策は様々です。
どのような物件を運用するにしても避けられないリスクでもあるため、あらかじめ対策方法などをしっかり学び、検討しておきましょう。
突発的な修繕
不動産投資の代表的なリスクの1つに、修繕リスクがあります。
建物の修繕には少なくない費用がかかるため、修繕が多くなるほど単純にキャッシュフローが圧迫されてしまいます。
普段からこまめな修繕を心がける、修繕積立金を用意しておく、修繕の保証をしてくれる管理会社を利用する、などが代表的な対策です。
ただし、台風や地震などの災害による突発的な修繕や、退去にともなう原状回復など、避けられない修繕もある点に注意してください。
金利上昇による返済負担の増加
ローン金利の上昇によるローン返済額の増加も、キャッシュフローを悪化させる要因の1つです。
ローン金利は利用する金融機関や、利用するローン商品の違いなどによって多少の違いがありますが、その時々の物価や経済状況によって引き上げや引き下げがおこなわれます。
金利が下がった場合は返済額が減りますが、金利が上がってしまえば返済額が増加し、その分だけキャッシュフローが圧迫されてしまいます。
具体的な対策としては、固定金利のローンを利用する、繰り上げ返済を積極的におこなう、不必要に返済期間を長くしない、などが代表的です。
キャッシュフロー向上のための賢い物件選び
キャッシュフローは、家賃収入から支出を引いて利益を算出する、計算の流れを示したものです。
このキャッシュフローをプラスにするのが、不動産投資の最初の目標です。
不動産投資で利益を出すには、利益が出やすい物件を選ぶ必要があります。
ここでは、賢い物件の選び方を紹介するので、参考にしてください。
物件の選び方
鉄骨造や鉄筋コンクリート造の区分マンションの場合は1部屋単位での投資となり、利益は大きくなりにくい傾向です。
一方で木造アパートは、アパート全体が投資対象となり、利益が大きくなりやすいメリットがあります。
よりキャッシュフローを向上させるには、木造アパートがお勧めです。
また、新築物件よりも中古物件のほうが、購入価格が安くなります。
支出を抑えてキャッシュフローを向上するなら、中古アパートがお勧めです。
新築物件はしばらくの間は大規模の修繕が発生するリスクは少ないといったメリットがあるため、よく考えて選びましょう。
アパートの戸数が多いほど、収益が多くなります。
ただし、戸数が多いと維持管理費用も多く、リスクが大きくなります。
支出を抑えたい場合は、戸数が少ないアパートがお勧めです。
エリアの選び方
不動産投資をする際は、エリアも選ばなければいけません。
日本には、首都圏のような流入が多いエリアから、人が少なく入居が望めないエリアまであるからです。
当然ながら、人の流入が多いエリアが、投資対象としてお勧めです。
ただし、東京都内への投資はお勧めしません。
都心は流入人口が多く、空室リスクが少なく、土地の価値は下がりにくく資産性が高いとの安心感をメリットと考えられる方もいらっしゃるでしょう。
しかしながら、物件価格が郊外と比べて高く、利回り(投資金額に対する利益の割合)が少ないため、キャッシュフローがほとんど出ず、投資効率が悪くなります。
一方で、郊外の物件は価格が安く入手できる可能性が高く、利回りが大きくなるため、投資効率が良いメリットがあります。
ただし、空室リスクが都心と比べて高いデメリットがあるため、しっかりと空室対策をおこない安定した収益が得られるよう努力する必要があります。
キャッシュフローを最大限活用する方法
不動産投資では、キャッシュフローによって利益がどの程度出たのかを知るのが重要です。
ただし、利益を知るだけでは、キャッシュフローを活用しているとはいえません。
最後に、キャッシュフローを活用する方法を紹介するので、参考にしてください。
利益を把握して次の戦略を考える
キャッシュフローによって、利益の金額が把握できれば戦略が立てやすくなります。
たとえば、その利益をためたときに、資金がどの程度になるのかも把握できます。
資金状況に余裕があれば、設備投資で入居率を高めたり、事業拡大で利益を上げたりするのもよいでしょう。
反対に、キャッシュフローによって利益が低いとわかれば、ローンを見直して支出を減らしたり家賃を見直したりできます。
出口戦略を有利にする
出口戦略とは、投資していた不動産を売却して、その物件での不動産投資を終える戦略です。
物件は、買い手がつかなければ売却できないため、購入者にとって投資面での安心感を与えなければいけません。
そこで、キャッシュフローを活用しましょう。
キャッシュフローがプラスになり続けているところを見せれば、購入者にとっては利益を出せる優良物件です。
優良な物件は買い手がつきやすく、売却活動もスムーズです。
また、キャッシュフローの成績が良好だと、査定した際にもプラスに働き、売却額も上がります。
生活を圧迫しないかシミュレーションする
会社員と不動産投資を兼ねている場合は、キャッシュフローが回らず給与でローンを返済しなければならないときに、生活を圧迫しないかシミュレーションしましょう。
不動産投資のキャッシュフローで得た利益でローンを支払い、給与収入で生活費を賄っているケースが考えられます。
そうなると、空室リスクによってキャッシュフローがマイナスになったときに、給与収入からローンを支払わなければならず、生活を圧迫します。
ローンを返済してどれくらい利益が残るのかを、キャッシュフローによってシミュレーションするのがお勧めです。
もし利益があまり残らないようなら、ローンの見直しをしたり、物件自体を変えたりする必要があります。
まとめ
キャッシュフローとは、実際に得られた家賃収入から実際に支払った支出を差し引いた、手元に残るお金です。
キャッシュフローのマイナスは赤字を意味するため、基本的にはある程度のプラスを保つ必要があります。
様々なリスク要因が存在しているので、適切に対処できるようあらかじめ準備しておきましょう。
弊社では初心者の方でも成功できる投資のフォローだけでなく、物件選びのテクニックや運用方法、出口戦略の考え方などもレクチャ―しております。
これから不動産投資を始めたい方は、ぜひ一度ご相談ください。






















































